肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
19 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 森次 保雄, 田中 智之, 志方 俊夫
    1978 年 19 巻 3 号 p. 237-245
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    日本に於けるA型肝炎流行の実態を明らかにする為に,非B型急性肝炎の散発例及び流行例でA型肝炎の血清学的な調査を行った.又東京近郊の一般健康人から1971年に得られた血清につき抗A型肝炎ウイルス抗体(HA抗体)を測定した.又1975年から1976年に日本で作られた市販のγ-グロブリンにつきHA抗体を測定し,A型肝炎の予防の可能性を検討した.
    その結果11例の散発例,及び35例の流行例がA型肝炎と確認されたが,13例の輸血後の非B型肝炎の全部を含む多くの散発例はA型肝炎ではなかった.一般健康人でのHA抗体陽性率ははっきり年齢に関係した.20歳以下の年齢層の抗体陽性率は2.5%にすぎなかつた.この陽性率は20歳代,30歳代で急激に上昇し,40歳以上では70~75%に達した.γ-グロブリン製剤は充分な量のHA抗体を持っていた.この結果は日本ではA型及びB型肝炎ウイルスのみならず非A非B型肝炎ウイルスの存在すること,又過去20年間にA型肝炎の流行はあまりおこっていない事を意味している.
  • 中島 正男, 伊藤 喜一, 熊田 博光, 吉場 朗
    1978 年 19 巻 3 号 p. 246-249
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    最近の約一年間に経験した急性B型肝炎のうち,早期よりB型肝炎ウイルス情報を検索することの出来た12例につき,主としてHBe抗原の出現様式と臨床経過との関係につき検討した.6例は医療従事者で血中でのHBs抗原陽転を機会に経過観察を始めたものである.このうち4例にHBe抗原の一過性出現をみた.出現の時期は血中HBs抗原のPeak時で,そのtiterは210以上のものであり,非出現例に比し,血中HBs抗原の持続期間が長く,臨床所見も重いものが多かった.他の6例は急性肝炎症状を発症した後,来院したもので,このうち初診時の血中HBs抗原のtiterが210であった輸血後肝炎の一例にHBe抗原が一過性に認められたのみであった.これら12例の急性B型肝炎はHBe抗原の出現の有無に関係なく全例順調な経過で治癒した.以上の結果より,急性B型肝炎に出現するHBe抗原は必ずしも予後判定の指標とはなり得ないと考えられた.
  • 子供から親への感染と子供の感染経路としての医療の重要性について
    小島 峯雄, 福田 信臣, 川井 夫規子, 広瀬 洋, 大島 健次郎, 小林 成禎, 高橋 善弥太, 足立 信幸, 眞弓 忠
    1978 年 19 巻 3 号 p. 250-255
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2010/01/19
    ジャーナル フリー
    昭和50年7月より昭和52年7月までに岐阜県立岐阜病院第2内科に入院したB型急性肝炎の独身を除く16同居家族の調査を施行した.家族構成は夫婦のみ1組,子供のある夫婦15組であった.夫婦のB型急性肝炎5組が発見され,いずれも約4ケ月の間隔で発症し,夫婦間感染が推定された.発端者の入院1週以内の調査により,子供を有する15家族のうち12家族(80%)に子供のHBs抗原陽性者が28例中14例に認められ,その1例を除く全例がHBc抗体高力価陽性で,HBウイルス持続感染者と考えられた.その年齢は1歳3ケ月から6歳であったが,3歳以下の乳幼児15人中12人(80%)がHBs抗原陽性であった.HBs抗原陽性の子供を持つ親の急性肝炎の初発は妻9例に対し夫3例で,この結果HBウイルス持続感染の子供から親特に母親にHBウイルス感染がおこり,急性肝炎が発症すると推定した.HBウイルス持続感染の子供,B型急性肝炎の一部の感染源として,医療との関係を考慮する必要があるものが存在した.
  • 入江 宏, 蓮村 靖, 武内 重五郎, 十字 猛夫
    1978 年 19 巻 3 号 p. 256-260
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    慢性活動性肝炎23例および,正常者139人のHLA typingを行ない,慢性活動性肝炎とHLAとの間に相関(association)があるか否かを検討した.さらに肝炎群をHBs陽性群(7例)と陰性群(16例)に分けて検討した.その結果,HB感染の有無にかかわらず,肝炎群では正常者との間にHLA抗原頻度に有意な差をみなかった.しかし慢性活動性肝炎のうち,橋本病合併(1例),Sjogren症候群合併(3例)と抗核抗体やLE細胞が陽性(4例)のいわゆる自己免疫性肝炎ではHLA-A9, BW35ハプロタイプの増加の傾向が示唆された.以上より自己免疫性肝炎とHLA抗原との間の相関性が示唆された.
  • 中尾 昌弘, 小林 雄一, 黒木 哲夫, 針原 重義, 川合 弘毅, 門奈 丈之, 山本 祐夫, 森沢 成司
    1978 年 19 巻 3 号 p. 261-269
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    慢性肝炎,肝硬変計105例につき,HBs抗原,HBs抗体,各種自己抗体,さらに抗肝細胞膜抗体を検索した.とくに性差による検出頻度を比較し,慢性活動性肝炎のluPoid type (Sherlock)の免疫学的特徴性を性差の面から考察した.各種自己抗体の出現頻度はHBs抗原の有無とはとくに関係はみられなかった.抗肝細胞膜抗体は各種自己抗体陽性例に高率に認められた(P<0.01).
    慢性活動性肝炎ではHBs抗原は男性に(P<0.05),一方,HBs抗体は女性に高率に認められた.抗核抗体,抗平滑筋抗体(p<0.05),抗肝細胞膜抗体などの自己抗体はいずれも女性に陽性率が高かった.この自己抗体の男女差は,小葉改策傾向を伴う慢性活動性肝炎において最も著明であった.
    すなわち,慢性活動性肝炎では性差により体液性免疫応答に差がみられ,慢性活動性肝炎のSherlock分類のlupoid typeの免疫学的特徴も性差を考えることにより理解しやすいと考えられる.
  • とくに膵障害の関与について
    加藤 活大, 中村 昌男, 武井 毅, 奥村 信義, 榊原 啓, 武市 政之, 鈴木 敏行, 早川 哲夫, 山崎 嘉弘
    1978 年 19 巻 3 号 p. 270-278
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    慢性肝疾患にみられる耐糖能異常の機序を追求する一環として合併する膵内外分泌機能障害の実態を明らかにし,耐糖能との関連性を検討した.慢性肝疾患101例にPancreozymin secretin試験とブドウ糖負荷試験を行い,大多数の例で糖負荷後の血中インスリン反応を,一部の例ではアルギニン静注負荷後の血中インスリン,グルカゴン動態も検討した.膵外分泌機能障害を呈した例は非硬変群の40%,肝硬変群の55%に達したが,その大多数は軽度障害であり,この段階では耐糖能や内分泌機能に対する影響は認められなかった.中等度以上の外分泌機能障害は非硬変の大酒家で多くみられ,耐糖能異常やインスリン低反応,グルカゴン低反応を伴う例が多かった.慢性肝疾患全体としては膵障害は耐糖能異常の発現に著しく関与しているとは言えないが,大酒歴を有する非硬変例で耐糖能低下がみられる時には膵障害の合併も考えて,その検索をすることが大切である.
  • II. 病期別にみた出現状態
    中沼 安二, 太田 五六
    1978 年 19 巻 3 号 p. 279-285
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    顆粒状オルセイン陽性物質の出現状態を,26例のPBCを材料として,PBCの病期別に検討した.これらの物質は初期では明瞭な局在を示さないが,中期以降では肝小葉ならびに再生結節の辺縁部肝細胞に限局していた.また,辺縁部における本物質の分布程度や,肝細胞内における本物質の量は,病期の進行に従って増加する傾向がみられた.これらの事実から,本物質の出現状態はPBCの病期の進行に,ある程度支配されていることが示唆された.
  • 尾崎 史郎, 田城 明子, 牧野 勲, 中川 昌一, 吉沢 逸雄
    1978 年 19 巻 3 号 p. 286-291
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    微量な血中胆汁酸を測定するために充分な精度と感度を有する簡便な胆汁酸酵素免疫測定法をursodeoxycholic acidをモデルとして開発確立した.トレーサーとしてのursodeoxycholic acid-alkaline Phosphatase (calf intestine) conjugateは水溶性のcarbodiimideを使用して作製し,抗体はursodeoxycholic acid-bovine serum albumin conjugateをウサギに感作免疫して得た抗血清を使用した.血清検体はあらかじめ60℃1時間加温し検体中のalkaline phosphatase活性を除いたものをassayに供し,遊離型・結合型の分離は2抗体法を用い,結合型alkaline phosphatase活性はKing-King法で測定した.本assay系では, ursodeoxycholic acid (UDCA) 20p moles~900p molesの範囲で測定することが可能で,先に私達が発表したradioimmunoassay (RIA)と比肩できる感度を有し,健康者空腹時血清でも検体0.1mlでursodeoxycholic acid濃度を十分測定し得た.従来のgaschromatography(GLC), radioimmunoassay,それに本enzyme immunoassay(EIA)による測定値の間には極めて高い相関をみとめた(EIA vs. GLC r=0.92,EIA vs. RIA r=0.94).正常人空腹時血清を本assayで分析した結果ursodeoxycholic acidの平均濃度は0.274±0.116n moles/mlであった.胆汁酸enzyme immunoassayは簡便性と安全性においてradioimmunoassayにまさり今後一般臨床検査室でのルーチンな胆汁酸測定に応用することができると考える.
  • 前山 豊明, 案納 弘子, 安倍 弘彦, 池尻 直幹, 谷川 久一
    1978 年 19 巻 3 号 p. 292-298
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    ウィスター系雌性ラットにethynyl estradiolを0.5mg/100g体重,7日間投与すると胆汁量はコントロールに比して27%減じ,胆汁中への胆汁酸排泄量は24%減少した.ethynyl estradiolの投与量を増加させると胆汁量,胆汁中胆汁酸量はさらに減少し,ethynyl estradiol投与量と胆汁量,胆汁中胆汁酸量の間には逆相関がみられた.タウロリトコール酸溶液をラット股静脈より0.6μM/100g体重/分持続注入すると胆汁うっ滞が生じたが,0.083μM/100g体重/分の持続注入では胆汁量はむしろ増加した.ethynyl estradiolを0.5mg/100g体重,7日間投与したのち,タウロリトロール酸溶液を0.083μM/100g体重/分持続注入すると胆汁量はethynyl estradiol非投与ラットの胆汁量に比べ52%少なく軽度の血清ビリルビンの上昇も認めた.ethynyl estradiol の投与により胆汁分泌に抑制を生じ,さらに胆汁うっ滞を起こしやすい性質をもつタウロリトコール酸が負荷されたため胆汁うっ滞が惹起されたものと思われる.
  • 草野 正一, 小林 剛, 松林 隆, 石井 公道, 柴田 久雄, 木戸 義行, 大宮 東生, 中 英男, 佐々木 憲一, 奥平 雅彦
    1978 年 19 巻 3 号 p. 299-312
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    Computed Tomographyが肝疾患の新たな放射線学的検査法として登場し,その臨床応用の成果が注目されている.北里大学病院でも昭和51年9月から全身用CTの臨床応用を開始した.そこで,肝のCT診断を進める上で不可欠な肝横断正常解剖についてX線解剖学的検討を試み,肝門に連続する左矢状裂,右前裂および右後裂の特徴的構造が,肝腫瘤性病変の区域診断の指標として役立つ事を確認した.この事は,実際の肝切除例でも確認でき,新たな検査法として登場したCTが果した画期的成果と言える.次にCTによる肝悪性腫瘍診断の有用性について検討した結果,我々の使用装置,ACTA 0100,は,肝癌のスクリーニング検査法としては,RI肝スキャンより劣っていた.この原因は,装置の解像力が低かった事も原因の1つであるが,肝細胞癌の診断が困難であったためであった.この肝細胞癌の中で,形態学的に描出可能と考えられるものが,造影スキャンでも描出できなかった理由として,肝が血行動態的に肝動脈と門脈の2重支配を受け,かつ,肝細胞癌が肝動脈のみによって栄養されるhypervascular tumorである事に基因する事を推論した.
  • 1978 年 19 巻 3 号 p. 313-324
    発行日: 1978/03/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
feedback
Top