肝臓
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30 巻, 10 号
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  • 松本 昌之
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1457-1464
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    インターフェロン(IFN)治療を施行したB型慢性肝炎17例を対象に,IFNの肝内HBV DNAの増殖形態に及ぼす効果とその後の肝炎の経過に与える影響を検討した.治療前に肝内HBV DNAが陽性であった15例のうち4例で消失,11例で減少した.11例のうち2例でSCのみが残存した.治療後1年以上経過観察しえた6例のうち,治療終了後も肝内HBV DNAの全増殖形態が残存した3例ではALTの異常が持続した.1例では治療後SCを除く全増殖形態が消失し,他の2例では全増殖形態が消失しALTも正常化した.しかし,後者の2例ではその後の経過中に血中HBV DNAの再陽性化とともにALTも再上昇した.以上の結果よりIFN治療により全例で肝内HBV DNAの消失または減少がみられたがSCは残存しやすい傾向がみられた.またIFN治療による良好な治療効果を得るためには肝内HBV DNAの各増殖形態が消失することが必要であり,治療後の長期予後の指標にはpre-S2抗原が有用であった.
  • 山内 眞義, 木村 和夫, 高原 仁, 平川 淳一, 大畑 充, 中原 正雄, 中山 一, 中島 尚登, 北原 敏久, 小倉 和雄, 藤沢 ...
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1465-1469
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    非A非B型(NANB)慢性肝炎患者にB型肝炎ウイルス(HBV)の重複感染を認めた症例では,高率にHBVのキャリアー化が認められることが明らかにされている.この原因としては,ウイルスの干渉作用の他にNANB肝炎ウイルスには免疫低下状態を惹起させる可能性のあることも考えられる.そこで我々はNANB慢性肝炎患者に沈降不活化B型肝炎(HB)ワクチンを投与し,HBs抗体の反応性を検討した.NANB慢性肝炎患者のHBワクチン投与の反応性は,28週後6/14 (42.9%)でHBs抗体が陽転化し,対照例の18/22 (81.8%)と比べて有意に低く,しかもHBs抗体価(Cut off index)は,NBNB慢性肝炎患者24.0±33.6であり,対照例79.3±50.2と比較して有意に低値を示した.また反応例の方が有意にリンパ球数が多く,OKT4/OKT8比は低かった.このようなNANB慢性肝炎患者のHBワクチンに対する反応性の低下が,HBVの重複感染を認めた場合高率にHBVキャリアーヘ移行しやすい要因の一つに考えられた.
  • 小池 かおり, 吉田 正則, 上野 逸夫, 松田 忍
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1470-1476
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルス表面抗原(HBs抗原)とα-フェトプロテイン(AFP)を産生しつつ増殖するヒト原発性肝癌由来のPLC/PRF/5細胞を使用して,国内で市販されている4種類のヒトインターフェロン(IFN)製剤,組換え型IFN-α2a 1,800万国際単位(International Unit, IU),リンパ芽球産生型IFN-α 600万IU,線維芽細胞産生型IFN-β 300万IU,組換え型IFN-α2 b 1,000万IU,のHBs抗原産生抑制作用をin vitroで比較検討した.
    いずれのIFN製剤も,細胞本来の遺伝子の作用で生じるAFP産生はほとんど抑制しなかったが,細胞内に存在するB型肝炎ウイルス遺伝子の作用で生じるHBs抗原産生を明らかに抑制した.各IFN製剤の添加濃度と細胞当りのHBs抗原産生低下との相関曲線はよく類似した.しかし,製剤間には若干の効力差が認められた.
  • 関谷 千尋, 並木 正義, 田中 浩
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1477-1480
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    各種肝疾患患者の血清アリールエステラーゼ(ArE)活性を新しく合成した特異的基質No. 4505を用いた測定法により検討した.血清ArE活性は健常対象群の5.96±0.77U/mlに対し,急性肝炎が4.25±0.45,慢性活動性肝炎が4.65±0.90,代償性肝硬変が4.34±0.99,非代償性肝硬変が3.50±1.02と有意に低値を示し,ChEやAlbとよい相関を示した.血清ArEは肝の障害程度を知るうえでよい指標になるものと思われた.
  • コラーゲン合成及び肝非実質細胞との関連
    高井 茂治, 中村 敏一, 嵩原 裕夫, 古味 信彦, 市原 明
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1481-1490
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝再生調節機構を解明するため,ヒト初代培養肝細胞のDNA合成を指標に検討した.肝細胞は小肝組織片から灌流と振盪の2段階法によって分離した.肝実質細胞は血清無添加培養液中で3週間単層を維持した.肝実質細胞はインスリンと表皮増殖因子(EGF)に応答して増殖した.L-プロリンはこれらの2つのホルモンによって促進される肝細胞のDNA合成に不可欠であった.コラーゲン合成の特異的な阻害剤であるシスーヒドロキシプロリンはDNA合成を強く抑制した.このことから,肝細胞の増殖には内因性のコラーゲン合成が必要であることが示唆された.肝実質細胞と肝非実質細胞をco-cultureすると,L-プロリン,インスリン及びEGFは肝非実質細胞の増殖を促進せずむしろ抑制する傾向が見られた.即ち,これらの2つのタイプの細胞の増殖の間には相反的な関係があることが示唆された.これらの結果は,肝再生機構や肝線維化の機序を解明するのに有用であると考えられた.
  • 吉田 直哉, 佐伯 日出貴, 杉本 元信, 伊藤 金次
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1491-1498
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    正常肝と悪性腫瘍患者の肝におけるglutathione S-transferase (GST)のアイソザイムパターンを比較し,さらに塩基性アイソザイムの免疫組織化学的検討を行った.アイソザイムの同定はchromatofocusingで溶出される等電点に基づき,免疫組織化学は酵素抗体法によった.正常肝(11例)ではアイソザイムC1, C2, N1の出現率が高く,A1は認められなかったが,悪性腫瘍患者のうち消化管癌肝転移例(8例)ではC2, N1の出現率は低く,A1が高率に認められた.肝由来のアイソザイムA1と胎盤由来のGSTはchromatofocusingによる等電点,電気泳動による分子量ともに相違し,互いに異なる分子種であることが明らかにされた.アイソザイムC1, C2, A1のいずれとも交差性を示す抗C2特異抗体を用いた免疫組織化学では,原発性肝癌(3例)および転移性肝癌(7例中6例)の肝腫瘍部にはGSTは陰性で,非腫瘍部の陽性所見には個体差がみられた.
  • 加納 隆, 高橋 健, 杉原 潤一, 清島 満, 冨田 栄一, 木村 健, 武藤 泰敏
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1499-1507
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    急性肝不全(AHF)における血清γ-glutamyl transpeptidase (GGT)の臨床的意義を検討した.劇症肝炎(FH)及び亜急性肝炎の入院時における血清GGTは急性肝炎に比し有意な低値を示した(ともにp<0.001).血清GGTの予後別にみた経時的変動からは,FH生存例では病状の改善に並行して著増が認められたのに対し,死亡例では低値を持続させた.なお,生存例の半数は入院早期に血清AFP値の上昇に引き続いて単独上昇し,他の半数例では入院後やや遅れてピークを示しAl-P, LAPの上昇を伴った.isoenzymeの検索からは,FH生存例における高GGT血症の発生機序として肝再生および肝内胆汁うっ滞の関与が示唆された.基礎実験からは,D-ガラクトサミン障害肝のDNA合成期及び再生肝の分化誘導期と思われる時期に一致して肝組織内GGT活性の増加が認められた.以上より,血清GGTはAHFの肝壊死の程度,再生過程,予後を良好に反映する1指標になり得ると考えられた.
  • 川崎 俊彦, 森安 史典, 木村 達, 山下 幸孝, 染田 仁, 玉田 尚, 小野 成樹, 梶村 幸三, 内野 治人
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1508-1515
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    Dobutamineやdopamineなどのcatecholamineを肝不全の予防に使用する試みが行なわれているが,catecholamine投与による門脈血行動態の変化には,未だに不明な点が多い.本研究では,dobutamineを末梢静脈より0, 2, 3, 5μg/kg/minの速度で点滴静注し,肝硬変患者・慢性肝炎患者・健常人における門脈血行動態の変化を超音波ドプラ法を用いて検討した.
    慢性肝炎患者及び健常人ではdobutamineの投与により,門脈・脾静脈・上腸間膜静脈の血流量が明らかに増加したが,肝硬変症患者ではこれらの血流量に有意な変化を認めなかった.また,健常人では,dobutamine投与により平均血圧の上昇をきたしたが,脈拍数の増加は僅かであった.一方,肝硬変症患者では,脈拍数の増加が大きく,血圧の上昇は認めなかった.これらの相違の原因として,肝硬変患者における肝外短絡路やhyperdynamic stateの存在が考えられる.
  • 矢倉 道泰, 福田 彰, 上司 裕史, 原田 英治, 大林 明
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1516-1519
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の男性.発熱と全身倦怠感を主訴として来院し,著明なtransaminase,筋由来のCPKおよび血清アミラーゼの上昇や蛋白尿,血尿を認め,さらに心電図で心筋炎が疑われた.IgMHA抗体の検索より急性A型肝炎と診断した.経過中,免疫複合体の上昇,血清補体価の低下がみられた.A型肝炎の肝外合併症として本例のように多彩な臓器,組織障害をきたした例は稀である.
  • 島崎 信, 杉原 潤一, 村上 啓雄, 久保井 広志, 今峰 徹, 大西 弘生, 斉藤 公志郎, 森脇 久隆, 冨田 栄一, 武藤 泰敏, ...
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1520-1525
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    アセトアミノフェンの大量服用により重篤な肝障害が惹起されることはよく知られている.著者らは最近3例のアセトアミノフェン急性中毒を経験したので報告した.このうち2例(27歳男性,36歳女性)は,アセトアミノフェン服用量は各々6.4g, 3.2gであり,極期昏睡IV度以上の急性肝不全に陥り,DIC・消化管出血・急性腎不全の合併がみられた.しかしながら血漿交換療法をはじめとする特殊療法,及び全身管理・合併症対策を行ない救命しえた.他の1例は21歳女性で,アセトアミノフェン服用量は14.4gであったが,服用早期に発見されたため,胃洗浄・N-アセチルシステイン大量経口投与を施行したところ重篤な肝障害の発症は予防しえた.本剤による急性肝不全は他の成因によるものに比し比較的その予後は良好とされており,積極的な治療を行なうことが重要と思われた.
  • 病理組織学的・免疫組織化学的検討と本邦報告例の集計
    中田 雅敏, 落合 聖二, 安田 是和, 柏井 昭良, 金澤 暁太郎, 広田 紀男, 斉藤 建
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1526-1532
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    54歳女性に発生した肝嚢胞腺腫の1切除例を病理組織学的・免疫組織化学的に検索した.本例は単胞性だったが,組織学的に粘液を産生する上皮層,卵巣間質に似た緻密な細胞性間質及び最外層の厚い膠原線維層の3層から成りEdmondsonのoriginal criteriaを満たした.免疫組織化学的には,CEA, CA19-9が上皮細胞のapical membraneに陽性で,細胞性間質は,卵巣間質と同様にVimentinが陽性であった.組織学的に肝嚢胞腺腫に類似している卵巣粘液嚢胞腺腫と子宮内膜嚢胞の上皮はCA19-9陰性であり,本例の上皮と異なった形質を示した.これまでの本邦報告例8例のうち,特徴的細胞性間質の記載があったのは3例で,全て女性であった.また男性例には径10cmを越える例がなかった.本邦の男性肝嚢胞腺腫報告例は再検討が必要かもしれない.
  • その超音波断層像と直接的病理組織学的分析
    井上 泰, 志賀 淳治, 町並 陸生
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1533-1536
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変症例の剖検時偶然に発見した肝pseudolipomaのホルマリン固定後超音波断層像とその直接的病理組織学的対応を行なった.Lateral shadowを伴った高エコー結節として描出された.組織学的には,厚い繊維性被膜に覆われた変性,壊死に陥った脂肪性腫瘍で,散在性に石灰化が認められた.組織構築像をよく反映した超音波断層像であり,超音波断層法による質的診断が可能な高エコー肝結節として新たなに位置づけられるべきものと考えられる.
  • 八幡 勝也, 奥野 府夫, 平野 芳昭, 筋田 和文, 稲本 善人, 江藤 澄哉, 中田 肇
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1537-1542
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性.全身倦怠感・体重減少を主訴として昭和62年9月近医を受診.好酸球69%(白血球数16,300/mm3)と好酸球増多があり,腹部エコーにて肝内に微小結節を多数認めたため,精査目的にて本院に入院.入院時には肝を1横指触知し,検査では白血球12,300/mm3・好酸球55%,エコー・CTにて径約1cmの多数の肝内結節を認め,DSAの実質相で肝内に径1cmの濃染像を多数証明できた.便中に虫卵は認めなかったが,血清学的寄生虫検査で猫回虫に対する抗体が強陽性であったため,猫回虫幼虫移行症を強く疑い,diethylcarbamazine 150mgを3週間投与したところ,治療後には画像上肝内結節は消失し,好酸球も12%(白血球6,200/mm3)と減少し,猫回虫に対する血清反応も低下した.以上より,本症例は猫回虫内臓幼虫移行症と診断した.本症例の肝内結節は当初画像診断上悪性疾患との鑑別が困難であったが,結果的には猫回虫内臓幼虫移行症として興味ある所見を示していたと思われるので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 清水 昭男, 原田 昌興, 多羅尾 和郎, 岡本 直幸, 杉政 征夫, 武宮 省治, 有村 明彦, 井上 達, 蟹沢 成好
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1543-1544
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 田中 文華, 横須賀 収, 小俣 政男, 大藤 正雄, 塚田 悦男
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1545-1546
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 一幸, 盛合 理, 猪股 正秋, 植田 修, 三浦 義明, 加藤 章信, 班目 健夫, 吉田 俊巳, 柏原 紀文, 佐藤 俊一
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1547-1548
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 安井 英明, 樋野 興夫, 北川 知行
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1549-1550
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 茶山 一彰, 松本 豊海, 森永 傅, 斉藤 聡, 荒瀬 康司, 池田 健次, 小林 万利子, 熊田 博光
    1989 年 30 巻 10 号 p. 1551
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
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