肝臓
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31 巻, 10 号
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  • 片山 和宏, 林 紀夫, 竹原 徹郎, 砥綿 崇博, 結城 暢一, 春名 能通, 萩原 秀紀, 佐々木 裕, 笠原 彰紀, 房本 英之, 佐 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1139-1142
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    B型肝炎において,肝細胞表面のHLA class I抗原表出と肝細胞障害の関係を検討したところ,HLA陽性例での血清GPT値は陰性例に比し有意に(p<0.01)高値を示した.末梢血単核球のレクチン刺激下でのγ-interferon産生能は,健常者とHBVキャリアーとの間やHBVキャリアーの病態による差は見られなかったが,α-interferon同時添加によりγ-interferon産生能は,血清GPT高値の症例で著明に賦活化され,血清GPT低値例では賦活されなかった.以上より,HBV感染症における肝細胞障害は,α-interferonに反応して末梢単核球により産生されたγ-interferonが,肝細胞膜上にHLA抗原を誘導する事によりHLA拘束性細胞性免疫が賦活されておこるものと考えられる.
  • 佐多 斉, 銭谷 幹男, 坂口 正巳, 奥山 早苗, 河辺 朋信, 根岸 正史, 宮崎 寛, 出浦 正倫, 大越 裕文, 安藤 秀樹, 清水 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1143-1151
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    B型慢性肝炎患者より得た生検肝組織を用い,肝組織内HBs抗原,HBc抗原の陽性細胞率(HBs抗原,HBc抗原陽性細胞数の肝小葉内に占める割合)と肝門脈域Leu3A (CD4)/T8(CD8)細胞比(Po-L3/T8),肝実質域T8(CD8)/T1(CD5)細胞比(Pa-T8/T1)と肝細胞障害との関連を検討し,Po-L3/T8, Pa-T8/T1の間に有意な関連性を認めた.Po-L3/T8, Pa-T8/T1が共に高値を示す症例ではHBc抗原陽性細胞率が高く,かつ肝実質域に強い炎症所見を認め,ALT値も高い傾向にあった.Po-L3/T8が高い症例では低い症例に比し,HBc抗原陽性細胞率が高い傾向にあった.一方Pa-T8/T1が高い症例では低い症例に比し,肝実質域に変性や壊死を伴う著明なリンパ球浸潤を認め,ALTも高値を呈した.以上よりHBV感染肝細胞障害においてPo-L3/T8が肝細胞内HBc抗原に反応すると同時にPa-T8/T1の変動に関与し,一方Pa-T8/T1はHBV感染肝細胞に対する肝細胞障害の過程に関与していることが示された.
  • 白澤 宏幸
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1152-1158
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    ラットCCl4肝線維症モデル作成後,D-Galactosamine(D-Gal)を投与し,ラットAcute on chronic (AOC)モデルを作成した.このモデルで血液生化学的,組織学的検討ならびにlabelling index(LI),肝ミクロゾーム分画EGF receptor,肝組織中EGF濃度を測定し,ラットD-Gal急性肝障害モデル(コントロール)と比較検討した.AOCではコントロールに比し速やかにGPTが上昇した.組織学的にはAOCでD-Gal投与48時間後に偽胆管形成が増加し,72時間後には残存肝細胞が島嶼状にみられた.LIはD-Gal投与48時間後コントロールに比しAOCで有意に低かった.EGF receptorはD-Gal投与24時間後コントロールに比しAOCで有意に低かった.肝組織中EGF濃度はD-Gal投与48時間後コントロールに比しAOCで有意に低かった.AOCは肝再生遅延ないしは再生不全状態にあり,その一因として肝臓内EGF receptor数の減少によるEGF取り込み障害が関与していることが推察された.
  • BrdU Labeling Indexによる検討
    大川 伸一, 多羅尾 和郎, 清水 昭男, 原田 昌興, 玉井 拙夫, 伊藤 義彦, 久邇 之房, 長岡 正
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1159-1163
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝硬変(LC)の肝細胞のDNA合成能に男女差が存在するか否かを,Bromodeoxyuridine (BrdU)によるLabeling Index(L.I.)から検討した.腹腔鏡下肝生検にて採取した組織を,0.1%BrdU RPMI1640溶液中で45分間振盪培養し,免疫染色にてBrdUのL.I.を算出した.男性LCのL.I.は2.2±0.3%と高値であったのに対し,女性LCのL.I.は1.1±0.3%と低く,2%の危険率をもって男性が有意の高値を示した.血液肝機能検査で,男女間に有意差は無かった.慢性活動性肝炎(CAH)についても同様に検討し,男性CAHのL.I.が1.2±0.2%であったのに対し,女性CAHのL.I.は0.9±0.2%であり,両群間に有意差は無かった.肝硬変症例のうち,2年以上の経過観察を行った男性14例から6例のHCC発生を認めたが,女性7例からはHCCの発生は無かった.HCCの発生率における男女差に,LC組織におけるDNA合成能の男女差が関与しているものと推察された.
  • 渡邊 清治
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1164-1175
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    38例の肝硬変症,5例の肝線維症および14例の正常対照病理剖検肝のリンパ管内に,バリウム加5%ゼラチン混合液を直接穿刺注入し,肝硬変における肝リンパ管構築の改変像を検索した.(1)肝被膜の偽小葉結節隆起面では,肝毛細リンパ管網および肝リンパ管は著明に減少し,(2)偽小葉結節をとり囲む間質結合織には,著明に迂曲蛇行した肝毛細リンパ管の集合管および肝リンパ管が密に集簇し,間質結合織の疎な領域では,肝毛総リンパ管がさらに増加していた.既存のGlisson鞘を除くと偽小葉結節内にはリンパ管を認めなかった.(3)肝リンパ本幹は,肝容積の減少に伴い蛇行と念珠状化が目立った.以上の改変像は,肝内に於けるリンパ流出障害を示唆する所見と考えた.(4)リンパ小水泡の一部に微細なリンパ管の存在を認め得た.リンパ小水泡の発生や,腹水との関連について若干の考察を加えた.(5)18例に肝細胞癌の合併をみたが,癌結節内にはリンパ管を認めなかった.
  • 柴田 実, 上野 幸久, 住野 泰清, 吉田 直哉, 定本 貴明, 山室 渡, 岡田 正, 佐藤 源一郎, 小野塚 靖, 寺内 一三
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1176-1180
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    内科的に治療した肝硬変225例を対象とし,Pugh score, Child-Turcotte分類(CTC),アミノ酸フィッシャー比(MR)の変動を比較し,それらの予後判定における有用性を検討した.CTCは死亡1年前に39%がChild Cを呈するものの,Child Cのまま長期間生存するものもみられた.MRは死亡の3.5年前までは漸減傾向を示すものの,それ以降は低値のまま不変であり,これらによって的確な予後判定を行なうことは困難であった.Pugh scoreは死亡1年前までは長期間に渡り5~6点と低値を持続し,死亡1年前より有意に上昇した.Pugh scoreが9以上に上昇した場合の予後はきわめて悪く,約90%が1年以内に死亡し,肝硬変の予後判定にはPugh scoreが最も有用と考えられた.また本法は簡便性,経済性の面でもCTC同様に優れており,欧米において数あるCTC変法の中で現在最も普及している事実を考えると,我が国においても肝硬変の予後判定に積極的に用いられてよい方法である.
  • 石井 邦英, 佐田 通夫, 神代 龍吉, 井出 達也, 中野 均, 田中 信平, 古寺 重喜, 田中 正俊, 真島 康雄, 平井 賢治, 安 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1181-1185
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    アルコール性肝硬変における肝細胞癌の合併にC型肝炎ウイルス(HCV)の感染が影響しているか否かを明らかにするため,血中の抗HCV抗体(カイロン抗体)を測定し臨床経過と対比した.対象とした肝癌合併の大酒家肝硬変18例中14例(77.8%)が抗HCV抗体陽性であった.抗体陰性の4例中3例(75%)は肝癌診断時まで飲酒を続けていたが,抗体陽性の14例中9例(63.4%)は断酒後1~10年の間に肝癌の発生がみられた.肝癌診断時まで飲酒を続けた例(以下,飲酒例)において平均年齢を比較すると,抗体陽性例が陰性例に比べ約3歳若かった.抗体陽性例において飲酒例と断酒後3~10年の間に肝癌を発生した例を比較すると,平均年齢は飲酒例が約6歳若く,積算飲酒量も飲酒例に多い傾向が認められた.以上の事より,HCV感染は大酒家にみられる肝硬変における肝癌発生の原因として重要と考えられた.
  • Coxの比例ハザードモデルによる検討
    上野 敬司, 中尾 宣夫, 大西 光典, 三浦 行矣, 三浦 貴士
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1186-1190
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    1984~1989年の間に肝動脈塞栓術(Transcatheter Arterial Embolization以下TAE)を行った124例の原発性肝細胞癌症例を,ゼルフォームスポンジ(GS)単独TAE群49例とリピオドール(LP)併用TAE群75例との2群に分け,TAEの予後に影響する因子とリピオドールの有用性とをretrospctiveにCoxの重回帰型生命表を用いて統計学的に求めた.その結果,腫瘍形態,門脈因子,LP併用の有無が予後規定因子として重要であることが判明した.Coxの比例ハザードモデルを作成し求めた補正生存率は,GS単独TAE群では1年59.1%, 2年25.1%で,LP併用TAE群では1年80.8%, 2年61.1%, 3年17.5%であり,LPの併用が予後に対して有用である結果が得られた.LP併用の有無によるリスク比は1.624であった.
  • 金子 晃, 林 紀夫, 田中 由宇志, 古澤 俊一, 黒沢 和平, 伊藤 敏文, 佐々木 裕, 笠原 彰紀, 房本 英之, 佐藤 信紘, 鎌 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1191-1196
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝細胞における細胞内カルシウム動態の意義を明らかにするため,初代培養肝細胞を用いてホルモン刺激後のカルシウム動態を経時的に測定した.培養早期の肝細胞ではvasopressinおよびphenylephrineに対して細胞内カルシウムの著明な上昇を示したが,培養時間の経過にともなって反応性は低下,遅延し,12~24時間後には反応は消失した.これは肝細胞が増殖に向かうにつれ,これらのホルモンのreceptorが減少することによりphosphatidylinositol代謝系を介したカルシウムのシグナルが減衰したものと考えられ,このシグナルの変化が肝細胞の増殖分化と関連していることが示唆された.
  • Direct bolus imaging法による測定
    本間 久登, 斉藤 忠範, 新谷 直昭, 川西 譲児, 辻 靖, 渡辺 直樹, 高後 裕, 新津 洋司郎
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1197-1203
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    Magnetic resonance imaging (MRI)を用いた血流測定法の一つであるdirect bolus imaging (DBI)法により,血流速度の基礎的検討をした.さらに,健康成人と慢性肝疾患の門脈血流速度および血流量の比較検討を行ない,本法の有効性について検討した.
    Phantom実験では,injectorによる流速の実測値とDBI法による流速値との間で,上方流がr=0.997,下方流がr=0.986と高い一次相関を得た.DBI法による門脈血流速度は,健康成人,慢性肝炎,肝硬変症の順に有意に減少した.また,門脈一次分岐部に近い程流速の低下傾向を示した.一方,門脈血流量は肝繊維化が増す病態程低下する傾向を示した.これより,門脈血流速度の測定は,慢性肝疾患の病態を把握する上で有用な検査法と考えられた.
  • 舛田 一成, 渡辺 恭行, 中西 敏夫, 池本 吉博, 小松 晃一, 伊藤 博之, 北本 幹也, 高野 弘嗣, 天野 始, 田村 徹, 中村 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1204-1209
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    A/J系マウスのガラクトサミン肝障害における新生期胸腺摘出の影響を検討するため,正常マウス,生後2~3日に胸腺摘出したマウス,生後5日に胸腺摘出したマウスの3群において,肝組織像,血清抗LSP分画抗体価を経時的に観察した.正常マウス,生後2~3日に胸腺摘出したマウス共に急性期は広範肝壊死を生じたものの,正常マウスでは,Galactosamine (Gal-N)投与後1週で肝炎は治癒し,抗LSP分画抗体価は全て陰性であった.しかし生後2~3日に胸腺摘出した群では,Gal-N投与後3ヵ月でも,門脈域に高度の単核細胞浸潤を高率に認め,抗LSP分画抗体価も高値陽性が持続していた.一方生後5日に胸腺摘出した群では正常マウスと同様であった.以上よう,生後2~3日の新生期胸腺摘出により,ガラクトサミン肝障害の治癒の遷延化を認め,その原因はLSP分画に感作されるためであることが示唆された.
  • 畑 耕治郎
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1210-1217
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌21例を対象として,超微形態学的ならびに第VIII因子関連抗原,OKM5,IV型コラーゲン,ラミニンに対する抗体を用いた免疫組織化学的観察を行い,肝細胞癌血洞壁の特徴および特異性を検討した.血洞内皮細胞は胞体のfenestraeの形成は乏しく細胞間はtight junctionにて接合し,Weibel-Palade体が認められ,内皮細胞下のDisse腔様腔には基底膜構造が認められた.血洞内皮細胞の第VIII因子関連抗原陽性例では,OKM5は陰性であり,また腫瘍径の大きい例に多く,血洞壁にはラミニンの沈着や基底膜様構造の出現が有意に高く,ラミニンの細胞内産生像や細胞外への放出像が認められた.一方,血洞内皮細胞がOKM5陽性を示す例は比較的腫瘍径の小さい例に多い傾向にあった.早期の肝細胞癌では血洞壁は既存の類洞内皮細胞により被覆されているが,肝細胞癌の発育過程で血洞壁は毛細血管としての特徴を有し,これには基底膜形成も関与していると示唆された.
  • 鬼束 惇義, 尾関 豊, 日野 晃紹, 渡辺 敬, 千賀 省始, 阪本 研一, 林 勝知, 広瀬 一, 香田 弘司, 足立 定司, 武藤 泰 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1218-1222
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性で,24歳時に肝炎の既往があり,7年前から肝機能検査の異常を指摘され,US, CTにて肝右葉の腫瘤を認められ入院した.血清総ビリルビン2.3mg/dl,間接型ビリルビン1.6mg/dlで間接型優位の軽度高ビリルビン血症と,GOT, GPTの軽度上昇を示した.Child分類ではAであったが繰り返し施行したICGの15分停滞率はそれぞれ82%, 76%,血中消失率は0.017, 0.016であり,BSPの45分停滞率は40%と著しい高値を示した.肝硬変合併肝癌と診断されたが,血清ビリルビン,ICG, BSPの異常は他の肝機能検査所見と著しく解離しており,これらは色素排泄異常によるものと考え,S8の部分切除を施行した.BSPおよびICGが高度の異常を示した高間接型ビリルビン血症の報告は少なく,肝癌を合併したものは本報告例のみである.これに対して肝切除を施行し良好な結果が得られたので,文献的考察を加え報告した.
  • 井尻 正廣, 杉原 茂孝, 中島 収, 清松 和光, 枝光 理, 神代 正道, 才津 秀樹, 牟田 幹久, 馬田 裕二, 奥田 康司, 中山 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1223-1227
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    三層構造よりなるNodule in nodule像を呈した肝細胞癌の一手術例を報告する.55歳,男性.近医にて慢性肝炎フォロー中,腹部超音波検査(US)で肝腫瘤を指摘され入院.US上,周囲にhaloを伴い三層構造をとる腫瘤で肝癌と診断され摘出された.肉眼的には大きさ2.7×2.2cmの単結節型で,組織学的には最内層は索状型の中分化肝細胞癌,中間層は脂肪化の著しい高分化肝細胞癌,最外層は脂肪化のない細索状構造を示す高分化肝細胞癌であった.本例は三層の組織像の異なる癌組織よりなる肝細胞癌で,各層は超音波像をよく反映していた.一般に,Nodule in nodule像を呈する肝癌では,結節内の結節はより低分化な癌組織よりなり,その周囲により高分化な癌組織が位置することが多いが,本症例では最初に中間層にみられる脂肪化を伴う高分化癌が発生し,後に結節内部及び外側により低分化な組織像の異なる癌組織が増殖してきたため三層構造をとるようになったと推察される.
  • 岡田 周市, 林 学, 松嵜 理, 若月 進, 炭田 正俊
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1228-1234
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    画像所見により生前に診断された肝細胞癌・胆管細胞癌の混合型肝癌(重複癌)の1例について報告する.症例は79歳,男性.心窩部腫瘤の精査のため当センターに入院.血液検査では肝機能の異常と腫瘍マーカー(AFP, CEA, CA19-9, PIVKA-II)の上昇を認めた.超音波では肝右葉前上区域に辺縁低エコー帯を伴う最大径6cmの等エコーの腫瘤,および肝左葉外側区域に末梢胆管の拡張を伴う境界不鮮明な混合エコー域を認めた.X線CTでは右葉の腫瘤は造影剤の急速注入によって早期(注入開始後20~40秒程度)に濃染した.PTCでは拡張した外側区域胆管の中枢側はほぼ完全に閉塞していた.以上のような臨床検査成績から右葉の腫瘤は肝細胞癌,左葉の腫瘤は胆管細胞癌と診断した.化学療法を行うが,診断後8ヵ月にて癌死した.剖検を行い,免疫組織化学的検索を含む腫瘤の病理学的所見から混合型肝癌(重複癌)であることを確認した.混合型肝癌,特に重複癌では画像所見の詳細な検討によりその臨床診断が可能と考える.
  • 佐々木 素子, 寺田 忠史, 中沼 安二, 若林 時夫, 杉岡 五郎, 渡辺 騏七郎
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1235-1239
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    線毛性前腸性肝嚢胞(Ciliated hepatic foregut cyst)の1例を報告する.症例は72歳の女性.慢性肝炎として経過観察中,超音波検査上にてSOLを指摘され精査目的で入院.画像診断では,径約3cm大の単発性肝癌結節と,それとは別に径約2cmの肝嚢胞を認め,外科的に切除された.肝癌結節はEdmondson III型の肝細胞癌であった.一方,嚢胞は,肝前下部の被膜直下に存在し,内腔に粘液が貯溜しており,組織学的に嚢胞は線毛を有する,呼吸上皮類似の円柱上皮に被覆され,壁には平滑筋層を認める特徴的な像を示し,線毛性前腸性肝嚢胞と診断された.本肝嚢胞は,世界的にも,わが国でもほとんど報告されていないが,注意深い観察により,意外に多い疾患である可能性を指摘した.
  • 田中 貢, 石川 智久, 藤田 由美子
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1240-1241
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 中野 善之, 今井 康晴, 袖山 健, 古田 清, 田中 栄司, 清沢 研道, 古田 精市
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1242-1243
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 橋本 直明, 渡辺 毅, 戸田 剛太郎, 池田 有成, 山田 春木, 吉川 雄二, 光井 洋, 丸山 稔之, 黒川 清
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1244-1245
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 奥山 卓正, 益 沢学, 加藤 道夫, 山本 佳司, 三善 英知, 堀本 雅祥, 宮崎 悦子, 寺田 昭, 田村 和也, 船橋 修之
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1246
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 黒木 哲失, 西口 修平, 植田 正, 武田 正, 福田 勝彦, 仲島 信也, 塩見 進, 関守 一, 小林 絢三, 矢野 郁也, 門奈 丈 ...
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1247
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 松本 豊海, 茶山 一彰, 斎藤 聡, 荒瀬 康司, 池田 健次, 熊田 博光, 酒井 洋子, 小林 万利子, 森永 傳
    1990 年 31 巻 10 号 p. 1248
    発行日: 1990/10/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
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