肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
33 巻, 11 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 灘野 成人
    1992 年 33 巻 11 号 p. 817-824
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    ウイルス肝炎における肝組織内抗ウイルス状態を知る目的で,肝細胞内2', 5'-oligoadenylate (2-5A)を酵素抗体法を用いて染色し,その局在を解析した.肝細胞内2-5Aは,ウイルス肝炎患者46例中42例の肝細胞の細胞質に観察され,陽性肝細胞は肝小葉内に散在性,あるいは一部集簇して分布していた.電顕的には,肝細胞内2-5Aは,主として細胞質のサイトゾールに一致して観察された.B型慢性肝炎では,血中DNA-polymerase活性の上昇期には,極期あるいは下降期に比較して肝細胞内2-5Aは強く染色された(p<0.05). 2-5Aの強く染色される肝細胞では,HBe抗原が同時に存在することは有意に少なく(p<0.001),ウイルスの増殖が抑制されていることを示唆する結果を得た.肝細胞内2-5Aは,インターフェロン投与により11例中7例で増強し,増強した7例中3例に血中HBe抗原の陰性化が観察された.以上より,ウイルス肝炎において,2-5Aは肝細胞内に存在し,ウイルス増殖を抑制していることが示唆された.
  • 新井 賢
    1992 年 33 巻 11 号 p. 825-832
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    インターフェロン(IFN)治療時の抗IFN抗体を,今回開発したWestern blot法により測定し,その性状と臨床的意義を検討した.対象はB型およびC型慢性肝炎58例である.抗IFN抗体の測定はIFN投与中経時的に行い,検体総数は183本であった.IFNは,HLBI,rIFN-α2a, rIFN-α2b,およびHuIFN-βを100万~1,000万IU/dで4~16週間,間歇あるいは連日投与を行った.183本の検体中7本(3.8%)が抗IFN抗体陽性であり,rIFN-α2a投与例の2例のみに抗IFN抗体が出現した.天然型IFNや,rIFN-α2b投与例での抗IFN抗体の出現は認められなかった.出現した抗IFN抗体はすべて中和抗体であり,治療効果に影響を及ぼし,IFN投与中止後も持続陽性であった.また,1例ではIFN投与約1ヵ月後に抗IFN抗体が出現した.慢性肝炎での抗IFN抗体の出現とその動態は,悪性腫瘍の場合とは異なる可能性があり,その解析にWestern blot法は有用な方法と考えられた.
  • 大羽 健一, 溝上 雅史, 伊奈 康夫, 鈴木 馨, 大野 智義, 水野 真, 呉 笑山, 折戸 悦朗, 山本 正彦, 五條堀 孝
    1992 年 33 巻 11 号 p. 833-838
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルス(HBV)遺伝子のS geneにcodeされているHBs抗原は,従来血清学的に主に4つのsubtypeに分類されてきた.今回,我々はこのHBs抗原のsubtypeをcodeしているとされるS gene部位の塩基配列を用いて分子系統樹を作成し,分子進化学的にHBs抗原の分類を試みた.そして,その分類と血清学的subtype分類と比較することで,HBs抗原のsubtype分類について検討した.その結果,分子進化学的分類は従来のsubtype分類とは,必ずしも一致しない4つのgenetical subgroupに分類された.特にsubtype adwは,遺伝子レベルではさらに3群に分けられた.この結果,同じsubtype同士であっても遺伝子レベルでは必ずしも近縁であるとは限らないと思われた.
  • 犬塚 貞孝, 上野 隆登, 鳥村 拓司, 胡 鵬飛, 坂田 隆一郎, 坂本 雅晴, 大平 弘正, 玉城 清酬, 木村 喜男, 佐田 通夫, ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 839-848
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    ラットの火傷肝損傷域におけるtransforming growth factor β1 (TGF-β)の果たす役割に関して検討した.障害1時間後(1H):損傷域に,TGF-βとFNを認めた.6H:主に壊死部に炎症細胞を認め,血小板によるTGF-βの産生や,多核白血球,単球系細胞によるTGF-βやfibronectin (FN)の産生を認めた.12H:炎症細胞の局在は,壊死部辺縁へ移行する傾向を認めた.24H以降:壊死部辺縁では,まず,TGF-βの,その後FNやtype III collagen (col.)を認め,類洞内皮細胞,肝細胞,Ito細胞などによるTGF-β, FN, type III col.の産生を認めた.plasma FN値は1Hで87±4μg/mlと低下したが,24Hで167±25μg/mlの値を示した.以上より,急性肝障害の極く初期では,損傷域の炎症細胞により産生されたTGF-βは,同領域でのFNの局在の増強と,それに伴う細胞浸潤に関与し,その後,肝の細胞でも産生され,FNやtype III col.の局在の増強に関与していることが示唆された.
  • 神山 俊哉, 内野 純一, 宇根 良衛, 石津 寛之, 中島 保明, 佐藤 直樹, 松岡 伸一, 三沢 一仁, 嶋村 剛, 川向 裕司
    1992 年 33 巻 11 号 p. 849-854
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌肝切除例203例のうち81例についてFlow Cytometryにより腫瘍核DNA ploidy patternを検索した.diploidとaneuploidに分け,再発時期,再発様式,再発後治療,生存率などとの関係を検討した.再発率はdiploid 60.5%, aneuploid 65.1%であった.両群とも残肝再発が最も多く,再発までの期間はdiploidが平均24.2ヵ月,aneuploidが14.4ヵ月でありdiploidは晩期に孤立性に再発する傾向がみられた.2年以内に再発したものはaneuploidが多かった.再発例の初回手術からの予後,再発後生存率ともdiploidが良好であった.再発後の治療法では再切除可能であったものがTAE,動注よりも良好な予後を示し,TAE,動注例ではdiploidの中に長期に再発腫瘍の進展が抑制されたものがみられた.再発例においてもDNAploidy patternは悪性度を規定する有力な一因子であり,その解析は臨床上有意義と考えられた.
  • 城 知宏, 関 寿人, 中川 泰一, 田川 善啓, 福井 康, 内藤 雄二, 久保田 佳嗣, 藤並 滋, 塩崎 安子, 井上 恭一, 坂井 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 855-862
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたマウス単クローン抗体:Ber-EP4は,肝細胞,胃壁細胞,扁平上皮表層を除くすべてのヒト上皮細胞を認識する抗体と考えられている.今回著者らは肝細胞癌83例,転移性肝癌12例の他,胃癌9例,大腸癌6例,胆嚢,胆管癌13例,膵癌3例,甲状腺癌5例,肺癌8例,乳癌8例,卵巣癌11例,腎癌6例の計164例を対象に,肝腫瘍診断における本抗体の有用性をパラフィン切片を用い免疫組織学的に検討した.肝組織ではすべての胆管上皮に染色され,多くの正常肝細胞では陰性であった.肝細胞癌では分化度,組織型にかかわらず全例で陰性であった.一方転移性肝癌では全例が陽性であり,さらにhepatoid differentiationを示すAFP産生腺癌でも,本抗体は陽性を示した.また他臓器の悪性腫瘍65例の陽性率は84.06%,弱陽性率15.94%で,陰性例は認められなかった.以上より本抗体は肝細胞癌,肝内胆管癌,転移性肝癌の鑑別さらには胆管病変の検索に有用と考えられる.
  • 森田 翼, 伊藤 哲史, 綾田 喜一郎, 佐藤 員久, 西岡 幹夫
    1992 年 33 巻 11 号 p. 863-871
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者において,インターロイキン1β(IL-1β),インターロイキン6(IL-6)および腫瘍壊死因子(TNF-α)の血中濃度およびPHA刺激による末梢血単核球(PBMC)のこれら炎症性サイトカイン産生能を測定した上で,生検肝からRT-PCR法によりこれらの遺伝子(mRNA)を検出した.炎症性サイトカインの血中濃度はPBC群と健常対照群との間に有意差はなかった.PBMCのIL-6, TNF-α産生能はPBC群において有意に(p<0.01)亢進していた.PBC群の肝臓における炎症性サイトカインの遺伝子は,健常対照群に比べて高率に検出可能であり,その発現量も多かった.IL-6遺伝子発現量は血清IgM値と正の相関,血清アルブミン値と負の相関を認め,さらにIL-1βとTNF-αはScheuer分類のIII,IV期ならびに症候性PBCで強い発現を認めた.PBCでは,炎症性サイトカインの肝臓におけるupregulationが示唆された.
  • 鍛治 恭介, 西村 浩一, 坂本 徹, 竹内 正勇, 寺崎 修一, 下田 敦, 卜部 健, 松下 栄紀, 金子 周一, 鵜浦 雅志, 小林 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 872-876
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性で1991年3月検診時にGOT 329, GPT 306とトランスアミナーゼの上昇を指摘され精査加療目的にて当科入院.検査成績では血沈65mm/hrと亢進,γ-glb 3.5g/dl,IgG 5.5g/dlと上昇,抗核抗体が160倍と陽性,また抗C100-3抗体,PCR法にてHCV RNAが陽性であり,自己免疫型の病型を示すC型慢性肝炎と診断した.プレドニゾロン(PSL) 40mgより加療するも改善は認めず,PSL漸減後α-インターフェロン(α-IFN)投与を開始した.α-IFN投与後GPT値は速やかに正常化し,また,γ-glb値は2.1g/dlまで減少した.一方,抗核抗体は持続陽性であったが,抗体価の上昇は認めなかった.なおIFN投与後22日目の時点で測定したHCV抗体,HCV RNAはいずれも陽性であった.C型慢性肝炎の一部に自己免疫型の病型を示す症例が存在し,また,IFNが有効な症例が存在することを示す貴重な症例と思われ報告した.
  • 唐沢 達信, 加藤 慎一, 野沢 博, 相沢 良夫, 銭谷 幹男, 戸田 剛太郎, 浜田 篤郎
    1992 年 33 巻 11 号 p. 877-881
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    HTLV-1ウイルスキャリアーに胃および胆道系と交通するアメーバ性肝膿瘍が発症した1症例を経験した.症例は48歳,男性.発熱・心窩部痛を主訴に来院した.入院時貧血や顕性黄疸は見られなかったが,著明な肝腫大と同部の圧痛を認めた,腹部Echo, CTにて肝左葉S4に7cm大の占拠性病変を認め,血清ゲル内沈降反応で抗アメーバ抗体陽性であることより,アメーバ性肝膿瘍と診断し,経皮経肝ドレナージとメトロニダゾール内服を開始した.ドレナージ造影では膿瘍の穿破によると思われる,胃・胆道系との交通が認められたが,治療後の経過は良好で膿瘍の消失と症状の改善を認めた.
  • 佐藤 丈顕, 永瀬 章二, 杉村 隆史, 福富 崇能, 佐藤 正明, 辻 裕二, 増本 陽秀, 酒井 浩徳, 坂本 茂, 名和田 新
    1992 年 33 巻 11 号 p. 882-885
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,男性.平成元年11月当科入院し,多発性筋炎,びまん性汎細気管支炎及びHBVキャリアーと診断した.多発性筋炎に対しプレドニン20mgで維持中の平成3年4月,トランスアミラーゼとDNA-Pの上昇を認め,HBVの活性化による肝機能の増悪と考えられた.組織学的には慢性活動性肝炎で,ICG 24.8%と悪化したためプレドニン20mg投与のままIFNα 600万単位投与を行った.IFNα投与開始後,トランスアミラーゼとDNA-Pは正常化し,多発性筋炎及びびまん性汎細気管支炎の悪化も認められなかった.その後もトランスアミラーゼ正常で経過している.IFN療法はステロイド投与に伴うHBVキャリアーの肝機能増悪に対し有効であった.また,我々の検索した限り多発性筋炎患者でのIFN療法の報告例はなく,多発性筋炎の悪化をきたすことなくIFN療法を行い得た本症例は貴重な経験と考えられる.
  • 五十嵐 省吾, 船木 直也, 竹内 康史, 田中 幸房, Shigerou MORI
    1992 年 33 巻 11 号 p. 886-890
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の肝硬変の男性.長年にわたりアルコールを大量に摂取しており,またHCV陽性であった.画像診断上肝癌は認められず,腹水も全く認められなかった.1989年11月突然に胸痛と呼吸困難出現.大量の右胸水を確認し,繰り返し排液を施行.画像診断上腹水はなく,腹水検査で炎症も悪性所見も認められなかった.12回の排液後胸水は右下肺野に限局して持続した.生理食塩水に溶解した111In 1mcを腹腔内に注入し,経時的にその放射能をシンチグラムにより追跡したところ,3時間後には大部分の放射活性は右胸腔内に移動しており,右横隔膜に欠損部のあることが想像された.約2年後再び急激かつ大量の胸水貯溜が始まり呼吸不全で死亡した.剖検で右横隔膜に直径約5mmの欠損部を確認し,これが胸水貯溜の原因と思われた.肝性胸水の診断にはシンチグラムが有用である.
  • 三木 幸一郎, 高橋 和弘, 中村 稔, 平田 泰彦, 工藤 二郎, 石橋 大海, 橋本 洋
    1992 年 33 巻 11 号 p. 891-895
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤内への肝細胞癌の浸潤を認めた症例を報告する.症例は66歳,男性.腹部膨満感と全身倦怠感を主訴として入院.腹部超音波,CTにて肝右葉に大きな腫瘤を認め,門脈本幹内に腫瘍塞栓の形成がみられた.内視鏡で数条の食道静脈瘤が認められた.腹腔動脈造影で動脈門脈シャントの存在により門脈が逆行性に描出され,ついで食道静脈瘤が描出されたが,腫瘍塞栓は明らかでなかった.剖検にて肝右葉に塊状の肝細胞癌と多数の娘結節を確認した.肉眼的に門脈本幹と脾静脈内に腫瘍塞栓を認めた.顕微鏡的に食道静脈瘤内に腫瘍塞栓,肺に転移巣が認められ,肺転移の経路として肝静脈-大静脈-右房-右室-肺を介する経路と共に門脈-食道静脈瘤を介する可能性が考えられた.食道静脈瘤内への肝細胞癌の浸潤は臨床的には報告例は稀であるが,詳細な病理学的検索により,頻度は増すものと考えられた.
  • 関 寿人, 城 知宏, 中川 泰一, 若林 正之, 松下 匡孝, 田川 善啓, 国枝 恒治, 中谷 正, 福井 康, 奥野 裕康, 内藤 雄 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 896-897
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 森山 光彦, 小峰 文彦, 藤村 敬三, 森山 淳子, 本橋 隆, 鈴木 壱知, 天木 秀一, 田中 直英, 大久保 仁, 石塚 英夫, 荒 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 898-899
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
  • 宮川 浩, 賀古 眞, 永井 孝三, 山崎 康朗, 杉本 元信, 関 健, 清沢 研道, 宮地 清光
    1992 年 33 巻 11 号 p. 900
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/07/09
    ジャーナル フリー
feedback
Top