ラット分離肝細胞において,タウロケノデオキシコール酸(TCDCA)による細胞内遊離Ca
2+(〔Ca
2+〕
c)上昇の機序について検討した.浮遊肝細胞においてTCDCA (0.1~1mM)刺激により濃度依存性に〔Ca
2+〕
cが上昇し,イノシトール三リン酸(InsP
3)も濃度依存性,一過性に産生された.単一肝細胞レベルにおける〔Ca
2+〕
cの変化はホルモン刺激による周期的なCa
2+-oscillationとは異なり,TCDCA添加では単一のスパイクを示した.この反応はTCDCAの濃度に影響されず,濃度依存性に反応する細胞数が増加した.透過性肝細胞においてもTCDCA添加によりCa
2+の放出がみられ,飽和濃度のTCDCA (1mM)の反応後にIns (1, 4, 5) P
3を添加しても反応が得られず,TCDCAによるCa
2+放出はInsP
3感受性Ca
2+貯蔵部位に由来するものと考えられた.肝細胞におけるTCDCAによる〔〔Ca
2+〕
c上昇の機序はPLC活性化によるものと直接細胞内Ca
2+貯蔵部位に作用するものと,少なくとも2つの経路が存在することが明らかとなった.
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