本研究ではウイルス性慢性肝炎144例(HCV 88例,HBV 56例),薬剤性肝障害35例,急性肝炎30例,対象31例の肝内好酸球浸潤について,生検肝を病理組織学的に検討した.肝内好酸球浸潤は,主として門脈域に起こる事より,好酸球浸潤率〔Eosinophilic infiltration ratio(EIR)=全門脈域内の好酸球数/全門脈域数〕を設定し,統計学的に解析した.その結果ウイルス性慢性肝炎全体およびHCV, HBVの各々においても,門脈域内好酸球浸潤は,薬剤性肝障害,急性肝炎,対照に比べて有意に多く,またC型肝炎では,piecemeal necrosisや門脈域内の炎症が強くなるに従い,門脈域内好酸球が増加していた.ウイルス性慢性肝炎では,肝内への好酸球浸潤は肝線維化に関係しない知見も得られた.薬剤性肝障害と対照との間では,門脈域内好酸球浸潤に差がない結果が得られ,肝内への好酸球浸潤は,薬剤性肝障害の病理組織学的診断の指標とならない事が示唆された.
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