31例に,肝切除術前検査として血清ヒアルロン酸濃度を測定し,肝線維化の程度,門脈圧,術後の残肝再生との関係をICG 15分血中停滞率と比較検討した.組織学的肝線維化の程度(z0, 1, 2)と血清ヒアルロン酸濃度は,z0で77.0±51.7ng/ml, z1で100.4±34.8ng/ml,z2で226.7±113.2ng/mlでz0とz2群間(p<0.0005), z1とz2群間(p<0.005)に有意差をみとめた.門脈圧と血清ヒアルロン酸濃度との関係は,有意の正の相関(r=0.739, p<0.005)が認められた.一方,術後第4週目での残肝増大率は,血清ヒアルロン酸濃度と有意の負の相関(r=-0.638, p<0.01)を認め,特に,血清ヒアルロン酸濃度が200ng/ml以上の症例では,200ng/ml未満の症例と比較して,残肝増大率は有意に低値であった(p<0.05).以上より,術前血清ヒアルロン酸濃度測定は肝切除術前の肝予備能力評価の指標として有用であり,肝切除後の肝再生を予測し得る指標の一つと考えられた.
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