87歳,女性.1985年2月黄疸,皮膚掻痒感が出現し町立大森病院入院.臨床経過,胆汁うっ滞性の肝機能異常パターン,AMA 320×以上よりPBCが強く疑われた.1994年9月より上下肢の浮腫,10月より異常行動がみられ10月20日再入院.入院時の検査成績では胆汁うっ滞性の肝機能異常パターン(T.B. 2.8mg/dl, ALP 368IU/l, γ-GTP 46IU/l, GOT 103IU/l, GPT 38IU/l)とともに,NH
3は162μg/dlと高値であった.また,IgG 3,080mg/dl, IgM 382mg/dl, AMA 80×, HBsAg (-), HBcAb (-), HBV DNA (-), HCVAb (-), HCVRNA (-), AFP 366ng/ml, PIVKA-II 80.0AU/ml以上であった.CT, CSでは肝右葉に8.5×8.8cmの腫瘍性病変を認めた.肝組織像で非腫瘍部分は,PBC stage IVに矛盾しない所見と考えられ,腫瘍部分は低分化型肝細胞癌,明調細胞型と診断された.以上よりHBV, HCVの感染を伴わない,PBC (stage IV)に合併したHCCと診断した.肝炎virus markerがHBsAg (-), HBcAb (-), HCVAb (-), HCV RNA (-)でHBV, HCVの感染を伴わないPBCに合併したHCCの本邦報告例は本症例を含めて4例であった.
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