HCV抗体が陽性を示すがHCV-RNAが陰性である症例の感染経路等の検討を行った.対象は,1993年度の定期健康診断にて第2世代HCV抗体を測定されて陽性となった244例の男性のうち同年度の超音波検診に参加した66例とした.これらの対象についてHCV-RNAを測定し,インターフェロン治療歴のあるものを除外したところ56例となった.
そこでわれわれは,これらのHCV抗体陽性でHCV-RNA陰性を示した12例(HCV-RNA陰性群)を,HCV抗体陽性でHCV-RNA陽性を示した44例(HCV-RNA陽性群)と比較して,それらの感染経路や肝障害について検討した.
感染経路についてみると,輸血の既往を認めるものは,HCV-RNA陰性群で1例(8%)に認めたのみで,HCV-RNA陽性群の18例(41%)と比較して,少ない傾向を示した(p=0.07).又輸血歴以外に鍼治療歴やC型肝炎を疑わせる家族歴を認めない感染経路が不明なものは,HCV-RNA陰性群で10例(84%)を数え,HCV-RNA陽性群で17例(39%)との間に有意差を認めた(p=0.02).
一方HBs抗体の保有率は,HCV-RNA陰性群では5例(42%)と高く,HCV-RNA陽性群の6例(14%)との間に有意差が認められた(p<0.05).
肝機能成績では,HCV-RNA陰性群はGGTPのみ平均値が異常を示したのに対して,HCVRNA陽性群はALT, AST, ZTT, GGTPの4項目で異常値を示し,明らかな差異を示した.
以上の結果から,HCV抗体陽性HCV-RNA陰性者の大部分は,感染経路が不明な,輸血のような大量ではないHCV感染を受けた後にHCVが排除されて治癒した状態にあるものと判断された.
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