症例は40歳, 男性. 1983年初めて肝障害を指摘され, 近医で加療を受けていたが改善しないため, 1994年3月当科を受診, 入院となった. HBs抗原陽性, HBc抗体高力価陽性であったが, HBe抗原陰性, HBe抗体陽性, DNA polymerase陰性, 抗δ抗体および血清HDV-RNAが陽性であり, HBVキャリアにHDVが重感染したものと考えられた. 肝組織所見は, CAH, moderateを呈し, 肝細胞核にδ抗原を認め, D型慢性肝炎と診断した. HLBIを67週間投与し, 血清HDV-RNAは陰性となり, ALT値も正常化した. しかし, 早期に血清HDV-RNAが陽性化し, 投与終了14カ月後にALT値が406IU/Lと上昇したため, HLBIを24週間再投与し, 投与終了4カ月後の現在まで, ALT値は正常で, 血清HDV-RNAは陰性が持続している. 本例はIFNを繰り返し投与することにより, 肝炎がコントロールされたと考えられる症例であり, 今後投与法のさらなる工夫により慢性D型肝炎の予後が改善される可能性が示唆された.
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