62歳の男性, 動悸, 息切れを主訴として来院. 1990年12月に肝細胞癌の初回治療 (経皮的エタノール注入療法) を受け, 1996年3月~5月に右肩甲骨転移及び左腸骨転移に対して放射線療法を施行されている. 入院時の肝障害度はChild Bに相当し, α-フェトプロテイン (AFP) の著明高値がみられた. 心エコーで右室腔内に6×4cmの腫瘤がみられ, 肝細胞癌の右室転移による両心不全と診断し, 対症療法を行ったが入院後23日目に死亡した. 剖検では, 肝内に肝細胞癌の再発はみられず, 心臓は, 右室内腔にEdmondsonII~III型の肝細胞癌が充満し, 心内膜及び心筋への浸潤もみられた. 肝静脈, 下大静脈, 右房からの連続進展はみられなかった. 肝内に再発がみられず, 右室へ孤立性の転移を生じた肝細胞癌例は極めて稀であり, 文献的考察を加えて報告する.
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