62歳の男性, 胆道系酵素上昇の原因精査目的にて入院. 薬物, アルコール, 肝炎ウイルス, 肝外病変の関与はすべて否定された. IgM上昇, 抗ミトコンドリア抗体 (AMA) 陰性, 抗平滑筋抗体 (ASMA) 陽性, 肝生検にて軽度ながら慢性非化膿性破壊性胆管炎を示唆する所見を認め, 無症候性原発性胆汁性肝硬変と診断された. ウルソデオキシコール酸 (UDCA) 内服継続にて検査所見は正常化し, ASMAは陰性化し, AMAは終始陰性のままだった. しかし, 5年後の肝生検で炎症像および線維化の軽減を認めるものの, 胆管病変の持続を認めた. しかも, その後2年間にUDCAの減量, 中止により検査所見が動揺, 再開により改善を認めた. 本例の7年余りの経過が興味深く, 本症類縁疾患との異同を論じる上に示唆に富む症例と思われた.
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