血清ウイルスマーカー陰性肝細胞癌 (NBNC-HCC) の特徴ならびに成因を明らかにする目的でこれら肝細胞癌の臨床的検討を行い, 血清GBV-C/HGV-RNA, TTV-DNA, HBV-DNA, 肝組織中HBV-DNAの検出を行った. 1991年より6年間に当科に入院した肝細胞癌460例中NBNC-HCCは48例 (10.4%) であり, その併存肝病変はアルコール性肝障害24例 (50%), 原因不明の肝障害13例 (27.1%), 自己免疫性肝炎4例 (8.3%) 原発性胆汁性肝硬変2例 (4.2%), ほぼ正常肝に発生したと思われる [Normal] 例は5例 (10.4%) であった. NBNC-HCC48例 (男性38例, 女性10例) は, 診断時平均年齢は65.5歳と高齢で, 病期進行例, 肝機能低下例も多く認められた.
NBNC-HCCにおける血清GBV-C/HGV-RNA陽性率は6.7%と低率で, TTV-DNA陽性率は86.7%と高率を示すも, これらウイルスの発癌に関与する可能性は低いと考えられた. 一方, HBV-DNAは血清では41.7%, 肝組織中では88.2%と高率に検出された. 特に, 組織検索を行ったNormal 4例では, 全例が他症例に比較して腫瘍部, 非腫瘍部とも明瞭なHBV-DNAのバンドが認められ, NBNC-HCC症例の発癌にHBVの関与する可能性が考えられた.
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