肝臓
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40 巻, 7 号
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  • 林 紀夫
    1999 年 40 巻 7 号 p. 377-385
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    アポトーシスに関する研究のスピードには目を見張るものがある. 細胞死が分子生物学的に厳密に制御されているという事実は, この機構のコントロールが様々な疾患に対する新たな治療戦略への足がかりになる可能性を示している. 今後, ウイルス性肝炎や肝細胞癌を始めとする難治性肝疾患の遺伝子治療に, アポトーシスの制御による治療が応用される日も遠くないと期待する.
  • 岡村 博文
    1999 年 40 巻 7 号 p. 386-394
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    肝疾患95例のGBV-C/HGVRNAをNS3領域, 5’非翻訳領域 (5’NCR), 3’非翻訳領域 (3’NCR) の3種の異なるプライマーを用いてRT-PCR法により検出した. 3’NCRのプライマーを用いた方法の検出率が8.4%で最も高かった. 6例についてGBV-C/HGVの全塩基配列を決定した. 塩基配列の保存性は3’NCR, 5’NCR, NS5a領域の順に高かった. E2領域を含め, 超可変領域を認めなかった. 劇症肝炎例に多いと報告されたNS3領域のアミノ酸変異を劇症肝炎ではない6例全例に認めた. C型肝硬変および肝癌の疾患別GBV-C/HGVRNAの陽性率はC型慢性肝炎よりも有意に高かった (P<0.05, 0.01). また, 臨床検査値の比較ではC型慢性肝炎・肝硬変例におけるGBV-C/HGV陽性例は陰性例よりALTのみが有意に高かった. GBV-C/HGV感染は肝障害に影響している可能性が示唆された.
  • 橋詰 清江, 四柳 宏, 鈴木 通博
    1999 年 40 巻 7 号 p. 395-403
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    血清ウイルスマーカー陰性肝細胞癌 (NBNC-HCC) の特徴ならびに成因を明らかにする目的でこれら肝細胞癌の臨床的検討を行い, 血清GBV-C/HGV-RNA, TTV-DNA, HBV-DNA, 肝組織中HBV-DNAの検出を行った. 1991年より6年間に当科に入院した肝細胞癌460例中NBNC-HCCは48例 (10.4%) であり, その併存肝病変はアルコール性肝障害24例 (50%), 原因不明の肝障害13例 (27.1%), 自己免疫性肝炎4例 (8.3%) 原発性胆汁性肝硬変2例 (4.2%), ほぼ正常肝に発生したと思われる [Normal] 例は5例 (10.4%) であった. NBNC-HCC48例 (男性38例, 女性10例) は, 診断時平均年齢は65.5歳と高齢で, 病期進行例, 肝機能低下例も多く認められた.
    NBNC-HCCにおける血清GBV-C/HGV-RNA陽性率は6.7%と低率で, TTV-DNA陽性率は86.7%と高率を示すも, これらウイルスの発癌に関与する可能性は低いと考えられた. 一方, HBV-DNAは血清では41.7%, 肝組織中では88.2%と高率に検出された. 特に, 組織検索を行ったNormal 4例では, 全例が他症例に比較して腫瘍部, 非腫瘍部とも明瞭なHBV-DNAのバンドが認められ, NBNC-HCC症例の発癌にHBVの関与する可能性が考えられた.
  • 大山 仁, 斉藤 文子, 新澤 穣太郎, 鈴木 智浩, 東條 淳, 大平 弘正, 黒田 聖仁, 宮田 昌之, 西間 木友衛, 粕川 禮司, ...
    1999 年 40 巻 7 号 p. 404-408
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性. 多発関節痛と肝障害の精査加療目的に当科紹介入院となる. 胆道系酵素の上昇を主体とする肝機能異常と抗ミトコンドリア抗体陰性が認められ, ERCにて肝内胆管の数珠状変化および末梢肝内胆管枝の硬化像の所見があり, 肝生検組織では典型像を呈していないが原発性硬化性胆管炎と診断した. また, 炎症反応が比較的高度の血清リウマチ反応陰性の関節炎があり, 仙腸関節と末梢関節に病変が認められたことから脊椎関節炎と診断した. HLA B27は陰性で, 潰瘍性大腸炎の合併は認めなかった. これら疾患の合併は希であることから, 貴重な症例と考え報告した.
  • 大森 茂, 伊藤 圭一, 国吉 幹夫, 清水 敦哉, 高瀬 幸次郎, 中野 赳, 為田 靱彦, 小坂 義種
    1999 年 40 巻 7 号 p. 409-413
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳男性. 発症5カ月前に腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を受けている. 全身倦怠感を主訴に来院しtransaminase, 胆道系酵素高値のため当科入院となった. 精査にて抗ミトコンドリア抗体陽性で, 組織学的には慢性非化膿性破壊性胆管炎 (CNSDC) に矛盾しない胆管病変であったが, 著明なpiecemeal necrosis及び肝小葉内巣状壊死を伴う所見であった. 以上より原発性胆汁性肝硬変 (PBC), なかでも慢性活動性肝炎 (CAH) との混合型であるPBC-CAH mixed typeの範疇に入る病態と診断した. CAHの病因として自己免疫性肝炎の関与が考えられたが, 高齢男性であること等の理由でウルソデオキシコール酸 (UDCA) による治療を開始した. その後ビリルビン及びトランスアミナーゼ値はいずれも低下したもののZTT, IgG値は上昇を続け, 治療開始6週以降GOT, GPT共250IU/l前後から改善がみられないためプレドニゾロン投与を併用したところ, 肝機能検査値も正常化した.
  • 福西 恵一, 黒川 晃夫, 栗栖 義賢, 竹下 篤, 成山 硬, 松宮 禎介, 江頭 由太郎, 芝山 雄老, 野々口 直助, 小川 竜介
    1999 年 40 巻 7 号 p. 414-418
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 女性. 左顔面の鈍痛, 左眼瞼下垂および下垂体機能低下で発症し. 頭蓋骨, 下垂体に原発不明の癌転移が認められ, 剖検によって胆管細胞癌と判明した症例を報告した. その転移経路は, 肺には肺動脈末梢枝にごく少量の癌塞栓がみられるのみであり, 外椎骨静脈叢に高度の癌塞栓がみられたことから, Batsonの提唱した椎骨静脈系を介するものと考えられた. すなわち, 門脈に侵入した胆管細胞癌が奇静脈に流入し, 椎骨静脈系, 脳底静脈叢および海綿静脈洞を経て下垂体および頭蓋骨に転移したと推測される. 胆管細胞癌が椎骨静脈系を介する経路で頭蓋骨および下垂体に転移することは稀であるが, 肺転移のみられない症例ではこのような可能性を念頭において原発巣を検索する必要がある.
  • 堀田 総一, 鴨志田 敏郎, 平井 信二, 岡 裕爾, 高橋 敦, 伊藤 均
    1999 年 40 巻 7 号 p. 419-426
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2010/02/22
    ジャーナル フリー
    稀な肝原発の血管原性悪性腫瘍の2例を経験した. 症例1は, 46歳男性, 健診の超音波検査によって発見された. 腹部CTおよびMRI検査にて10×9cm大の肝腫瘍が認められ, 血管腫として経過観察された. 4カ月後に下腿浮腫と, 超音波検査上肝腫瘍の増大が認められ入院した. 肝動脈塞栓術, 化学療法を施行したが, 入院第57病日に死亡した. 死後の肝生検にて血管肉腫と診断された. 症例2は, 82歳女性, 多発性脳梗塞によるParkinson症候群にて通院中に体重減少あり, 腹部超音波およびCT検査を施行, 多発性肝腫瘍と脾腫瘍が認められた. 他臓器に悪性腫瘍を示唆する所見なく, 肝原発の悪性腫瘍と考えられた. 肝生検施行したが, 診断に至らず, 肝腫瘍発見2カ月後に死亡した. 剖検の結果, 脾転移をともなう肝類上皮性血管内皮腫を診断された. 当疾患は, 我々が検索し得た範囲で本邦で53例が報告されており, この中では最高齢発症であった.
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