劇症肝不全IV度症例を中心に移植前の理学所見, 脳波及びCT所見と神経学的予後を検討した. 脳症II, III度は全例神経学的予後は良好であった. 以下16例のIV度症例では, 術前, 硬直性痙攣を来した6例の内, 3例が広範囲脳萎縮となった. 脳波上, 徐波は9例で, 内, 脳萎縮, 脳死が各々1例に認められた. 低電位は4例で, 2例が脳萎縮のために寝たきりとなった. 平坦脳波の1例は広範囲脳萎縮を来した. CT上, 瀰漫性浮腫を来した1例は重度の四肢拘縮となり従来の報告通り肝移植の非適応と考えられた. 脳死となった1例を除き限局性の脳浮腫は予後良好であった. 脳浮腫が認められなかった1例が術後広範囲の脳萎縮を来した. 瀰漫性浮腫以外の硬直性痙攣, 低電位, 平坦脳波のいずれかを有した症例は6例で移植後, 神経学的後遺症を残す可能性が高かったが, 4例は完全に回復し, 移植の絶対非適応とはならない.
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