症例は65歳, 男性. 平成10年7月, 肝S7区域に径20mmの肝細胞癌を認め, PEIT, TAEによる治療が行われた. 平成11年6月, 急性膵炎の診断にて再入院となった. その後より黄疸が出現し, 総ビリルビン (以下T. B), 16.6mg/d
lまで上昇した. 腹部CTスキャンでは, 肝門部に, 塊状型の腫瘍を認めたが, 肝内胆管や総胆管の拡張は認めなかった. 肝細胞癌再発と膵炎後の胆汁うっ滞と診断し, 本人, 家族に十分な informed consent の後, 肝動脈内にリザーバーカテーテルを留置し, 肝血流量増加と肝細胞の保護作用を期待して, プロスタグランジンE1 (以下PGE 1) の持続肝動注 (120μg/日×14日) を開始するとともに, 肝動注化学療法 (Cisplatin+Fluorouracil 以下CDDP+5-FU) を行った. 黄疸は速やかに改善し, 肝細胞癌に対しては外来での動注化学療法へと移行できた. 急性膵炎後の高度黄疸症例に対するPGE 1持続肝動注の有用性が示唆される例と考え, 報告した.
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