症例は64歳, 男性. 飲酒歴, 輸血歴はない. 前壁急性心筋梗塞の既往があり, 62歳時冠動脈バイパス術 (LAD-LITA, GEA-4PD) を受け, その後順調に経過していたが, 1996年12月より虚血性心疾患に有効とされている片仔廣の服用を開始. 服用2カ月後の定期検血にて, トランスアミナーゼの上昇 (AST 79IU/
l, ALT 120IU/
l) が認められたが, 自覚症状がなかったため服用し続け, 10カ月目には, AST 217IU/
l, ALT 296IU/
lとさらに上昇してきたため, 入院となる. 入院時の腹部超音波およびCT検査では, 脂肪肝と軽度の肝腫大を認めるのみであった. 肝炎ウイルスマーカーはすべて陰性であり, 漢方薬による薬剤性肝障害が疑われたため, 服用を中止したところ, 肝機能は速やかに改善した. 片仔廣および入手可能な生薬である牛黄, 田七人参, 蛇胆に対しLSTを施行した結果, 合剤の片仔廣と構成成分の1つである蛇胆が陽性であった. 本例は片仔廣その生薬である蛇胆によるアレルギー性肝障害と考えられたが, 本薬剤による肝障害の頻度は極めて少なく, 興味ある症例と考え報告する.
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