肝臓
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44 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 矢野 右人
    2003 年 44 巻 2 号 p. 54-57
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ワクチンを用いたB型肝炎ウイルス (HBV) 感染予防対策は, その目的, 方法ともに世界の趨勢とかけ離れた日本固有の対策として定着している. すなわち, 世界的に見るとEPI (expanded program on immunization) に組み入れた universal vaccination で次世代の人々すべてを受動免疫状態にして母子感染, 水平感染ともに防御し, HBV感染の撲滅を目的としているのに反し, 日本ではHBVキャリアの母より出産した児にキャリア防止目的のための接種に限られている. HBワクチン接種法も世界的には生後可及的速やかに接種するのが常識になっているが, いまだ日本では生後2カ月後よりの接種である. 最近のWHO肝炎会議でも世界的 strategy に取り残され, 議論にも入れない状態である. 今世紀の半ばには universal vaccination の効果が予測通りであれば, 世界中多くの国では母子感染はもとより水平感染による劇症肝炎も撲滅されることになる. 日本だけが取り残されることなく, 世界的 strategy に沿ったHBワクチンによる予防体制へ変更しなければならない.
  • 太田 宏信, 馬場 靖幸, 石川 達, 吉田 俊明, 上村 朝輝, 坪野 俊広
    2003 年 44 巻 2 号 p. 58-65
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Hepatic peribiliary cysts (以下HPBC)症例6例について臨床的検討を行った. 6例全例男性であった. 6例中1例は胆管細胞癌を否定しきれず切除となった症例であり, その他の5例は臨床症状, 画像よりHPBCと診断した. 本症の診断にはDIC-CTかMRCPが必須であった. HPBCは臨床的に無症状であることが多いと言われているが, 今回の検討では6例中4例に胆管炎を認めた. また嚢胞が小さくとも胆管を圧排することがあり, 他の嚢胞性肝疾患と異なるHPBCの特徴の一つと思われた. 6例中4例の基礎疾患にはアルコール性肝疾患が関与しており, うち1例は肝硬変であった. HPBCの臨床経過は不変から短期間に増加, 増大するものまで様々であったがその増悪因子は不明であった.
  • 岡野 淳一, 汐田 剛史, 村脇 義和, 周防 武昭
    2003 年 44 巻 2 号 p. 66-70
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性. 20歳頃よりアルコール性肝障害を指摘されていたが, アルコールの多飲を続けていた. 平成13年11月2日より, 発熱と右季肋部痛が出現したため同年11月5日に当科外来を受診, 黄疸と腹水貯留を認め, その精査加療目的にて同日当科入院となった. 入院後検査にて, 右胸水及び腹水の貯留を認めたが, 腹水は漏出液であったことから, 特発性細菌性腹膜炎 (Spontaneous Bacterial Peritonitis; SBP) の合併は否定的であった. しかし, 発熱と右季肋部痛が持続したため, その原因精査のため右胸水の試験穿刺を行ったところ, 腹水とは対照的に, 胸水は滲出液かつスメアにて好中球を多数認めた. 胸水の細菌培養結果は陰性であったが, 特発性細菌性胸膜炎 (Spontaneous Bacterial Empyema; SBEM) の合併と診断し, トロッカーチューブ挿入及び抗生剤の全身投与を行ったところ, 臨床症状と検査成績は速やかに改善をみた. 肝硬変症患者にSBEMを合併することは本邦では稀であり, かつ本症例ではSBPは併発せず, SBEMのみを合併した点が, その感染経路を考える上で興味深く思われたため, 文献的考察を含めて報告する.
  • 竹内 丙午, 鈴木 正徳, 海野 倫明, 片寄 友, 森川 孝則, 水間 正道, 松野 正紀
    2003 年 44 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    複数のマイクロ波発生装置に接続した電極針を複数本同時に穿刺し, 通電する剣山法 Microwave coagulonecrotic therapy (MCT) を考案し, 直径12cmの切除不能胆管細胞癌症例に応用した. 症例は肝S4, 5, 8を占拠し肝静脈への明らかな浸潤, 大動脈周囲リンパ節への転移を認めた51歳の胆管細胞癌症例. 開腹下に剣山法MCTを施行して同時穿刺を26回, 合計78箇所の焼灼を実施したところ, ほぼ十分な腫瘍の ablation と手術時間の短縮が得られた. 術後抗癌剤投与を契機として, 高熱に続く播種性血管内凝固症候群 (DIC) を発症したが適切な集中治療により回復した. 大きな腫瘍に対する剣山法MCTは侵襲度をさらに軽減する効果的な方法と考えられた.
  • 辻本 達寛, 石川 昌利, 飯岡 弘伊, 豊川 泰勲, 鶴薗 卓也, 松村 吉庸, 吉治 仁志, 栗山 茂樹, 福井 博
    2003 年 44 巻 2 号 p. 76-79
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 女性. 肝硬変の経過中, 超音波検査, dynamic-CT, MR-Angiography で門脈右枝より右肝静脈, さらに下大静脈へと屈曲蛇行する肝内門脈肝静脈短絡路が考えられ, 経静脈的造影超音波検査を施行した. 指摘された血管は, Levovist 静注20秒後より血流信号の増強効果が出現し, 40秒前後で最も造影され下大静脈へと流入するのが確認された. 画像診断の普及に伴い, 本短絡路の報告は増えているが, 造影超音波による画像は今まで報告例がない. 経静脈的造影超音波検査は侵襲が少なく本疾患の診断に有用であると考えられた.
  • 渡邉 尚子, 岩田 滉一郎, 中尾 國明, 松本 正廣, 松本 裕子, 籏原 照昌, 太田 裕彦, 平林 寧子, 高橋 和明, 三代 俊治
    2003 年 44 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    従来本邦ではE型肝炎は輸入感染症として軽視されがちであったが, 最近本邦を含む非流行地からの国内発症例の報告が相次いでおり, 我々も1例経験したので報告する. 症例は62歳男性. アルコール歴・ビタミン剤と生薬の服用歴あるも, 海外渡航歴・輸血歴・動物の飼育歴はなく, 特記すべき性交渉歴もなかった. 2000年11月初旬より全身倦怠感・褐色尿・微熱・食思不振を訴え, 職場の健康管理室を受診. 急性肝炎の疑いで同年11月21日に当科外来を紹介され, 同日入院となった. 入院時には全身倦怠感・皮膚及び眼球結膜黄染・軽度肝腫大・肝逸脱酵素上昇を認め, 急性肝炎と診断した. 安静のみで経過観察したが, 劇症化あるいは遷延・慢性化することもなく, 約20日間で軽快退院となった. 入院時より第29病日まで血清HEV-RNAが持続陽性で, 且つ第57病日の回復期血清中にHEV抗体を認めたことより, E型急性肝炎と診断した. 本患者より分離されたHEV株(JRA 1)のゲノム塩基配列の特徴に鑑みて, 本症例は「日本に土着化したHEV株」に感染して発症した急性肝炎であると考えられた.
  • 徳永 晋, 安田 宏, 山田 雅哉, 若杉 聡, 遠藤 豊, 井上 和明, 与芝 真
    2003 年 44 巻 2 号 p. 85
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
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