症例は胸部CTで横隔膜~肝部下大静脈周囲に不整な低吸収域を指摘された2カ月後に Budd-Chiari 症候群, 黄疸を来して死亡した76歳, 女性である. 剖検で, 横隔膜を中心として後縦隔, 右心房, 肝右葉上部にまで浸潤, 増殖する超鶏卵大の腫瘍が認められた. 腫瘍細胞は多彩であり, ミオグロビン陽性の好酸性の胞体, 横紋筋様構造などがみられ, 横隔膜原発の多形型横紋筋肉腫と診断された. 腫瘍は下大静脈へ浸潤し, 同部に形成された血栓は右肝静脈にまで達しており, 肝右葉は高度の鬱血, 出血を伴って萎縮し, 尾状葉は代償性に肥大していた. この肥大した尾状葉によって肝門部胆管は圧迫されて扁平化しており, 肝内には胆汁鬱滞などの閉塞性黄疸の像がみられた. Budd-Chiari 症候群にみられる黄疸の発生機序は不明であるが, 尾状葉肥大をしばしば伴うことから, 本症例のような機序による閉塞性黄疸の可能性もあると考えられる.
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