症例は71歳, 女性. 平成9年に近医にて胆石の診断にて腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた際に肝硬変を指摘された. 以後, 同院外来にて経過観察されていたが, 平成14年7月, CTにて肝S8に腫瘤性病変を指摘され, 精査目的に当科紹介入院となった. 腫瘤は画像上動脈主体の血流を有する病変として描出され, 狙撃肝生検にて異型腺腫様過形成 (Atypical adenomatous hyperplasia, 以下AAH) と診断した. また背景肝は肝硬変の状態であり, 肝実質炎, pericellular fibrosis を含めた生検所見, 飲酒歴がないこと, 等から非アルコール性脂肪性肝炎 (Nonalcholic steatohepatitis, 以下NASH) を背景としたものと考えられた. DNAの酸化ストレスの指標である8-hydroxy-2'-deoxyguanosine の染色にて背景肝ならびに腫瘤いずれにおいても陽性像を示し, NASHにおける発癌過程を理解する上で貴重な症例であると考えられた.
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