症例は34歳男性. 6歳頃より肥満となり22歳時にはBMI33.0と高度肥満を呈していた. 30歳時初めて肝障害を指摘され, 32歳時東京女子医大消化器病センターに精査目的で入院となった. 入院時のBMIは49.5, HOMA-IRは9.36で, 飲酒歴や服薬歴はなく, 肝炎マーカーも陰性であり, 肝生検では小葉中心性の脂肪沈着・肝細胞のballooning・Mallory bodyに加え, 線維性隔壁を伴った偽小葉の形成がみられ, NASHによる肝硬変と診断した. その後通院を中断していたが, 34歳時に肝不全・腎不全を発症し帝京大学医学部附属病院に入院, 治療に反応せず同日永眠された. この時のBMIは55.9であった. 剖検所見では, 結節状の甲型肝硬変を呈し, 偽小葉の再生が著しく不良で, 肝の脂肪沈着は一部に少量認めるのみであり, NASHの終末像として矛盾しない所見であった. 若年で発症したNASHによる肝不全症例は極めて稀であり, 小児ないし若年のNASHを的確に診断・治療することの重要性を示唆する症例と考えられた.
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