肝臓
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46 巻, 5 号
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症例報告
  • 仲島 信也
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 5 号 p. 257-261
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性, 肝硬変患者である. 1995年にC型慢性肝炎に対してインターフェロン (IFN) 投与とグリチルリチン製剤 (SNMC) 静脈注射の治療歴がある. 当院にてSNMCを60ml に増量するもALTは100~150IU/l が続いた. そのため少量IFN-α投与を試みた. ALTはIFN投与量を100万から30万, 10万単位と漸減しても開始前値より低い値を持続したが, 5万単位では上昇し, 10万単位に戻すと再び低下した. 以後IFN10万単位を継続投与し, ALTは60~100IU/l 程度であった. 10万単位IFN投与期間中の血清2-5AS活性値は, IFN非投与期間中の約2.4倍に上昇した. 血中のウイルス量に変化は認めなかった. 副作用は出現しなかった. 難治性の肝硬変患者に対して10万単位の極少量IFN投与が, トランスアミナーゼの低下に有効であった症例を経験したので今回報告する.
  • 児玉 美千世, 北本 幹也, 中原 英樹, 福田 康彦, 大石 和佳, 森 奈美, 松本 明子, 鬼武 敏子, 今川 勝, 茶山 一彰
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 5 号 p. 262-269
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 男性. B型非代償性肝硬変で, S3に25mm, S5に10mm, S6に8mmの肝細胞癌 (stage III) を合併していた. 肝予備能不良のため肝癌の根治的治療は困難と考えられたため, まずLamivudine 100mgを投与した. Child-Pugh B9点からB7点まで肝機能が改善し, 肝細胞癌に対してablationを施行した. HBV DNAは陰性化したが, Lamivudine投与15カ月後にYVDD変異株が出現した. 18カ月後に, HBV DNAが再陽性しALT上昇を認めたため, Adefovir 10mgを追加し, 肝予備能の悪化は認めていない. Adefovir内服3カ月でHBV DNAは再びPCR法で検出感度以下となった. Lamivudine投与後2.5年を経過しているが, 肝細胞癌に対する治療反復が可能であった.
  • 青木 秀樹, 高倉 範尚, 塩崎 滋弘, 岡本 良一, 荒木 康之
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 5 号 p. 270-276
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    肝切除後広範な肝虚血に陥り肝不全を来した赤血球増多症合併肝細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は77歳男性で, 肝S8~S4に及ぶ径10cm大の腫瘤を認め, 当院紹介入院となった. 赤血球増多症の合併を認めたため瀉血を2日間行い, 術直前のヘマトクリット値が45を切ったことを確認した後, 中央2区域切除を施行した. 術後肝機能が急激に悪化し, 7日目の腹部CTで門脈血栓を認めたため, 緊急手術を行った. 術中, 門脈血流の逆流を認め, 門脈血栓は2次的に生じたものと考えられた. 門脈血栓の除去を行い, 術後に血漿交換等を施行するも肝不全は改善せず, 術後14日目に永眠された. 術中肝生検では肝組織の凝固壊死を認めた. 本症例では赤血球増多症および糖尿病の病態に手術という侵襲が加わってsinusoidal obstruction syndromeを来したものと考えられた.
  • 伊坪 真理子, 小池 和彦, 長田 正久, 小林 進
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 5 号 p. 277-283
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    高分化型肝細胞癌切除18年後に残肝再発を確認した男性症例を経験した. 初発時はHBe抗体陽性B型肝炎ウイルス (HBV) キャリア状態にあり, 64歳時に肝切除を施行. 切除標本より慢性肝疾患を母地としない肝S4の4cm大の高分化型肝細胞癌であった. 輸血後肝炎と考えられる急性肝炎状態となり, 3年後に沈静化する間にHBs抗体陽転化を示した. その後C型肝炎ウイルス (HCV) 持続感染が判明し, 80歳頃よりトランスアミナーゼ上昇が持続したが, 血中HBV DNAは持続陰性であった. 外来にて経過観察中, 78歳頃より肝S7に小結節性病変が検出され緩徐に増大, 82歳時に動脈血流に富む1.7cm大の肝細胞癌と診断し, 加療した. 非癌部肝組織は慢性肝炎で, 組織中HBV DNAも検出されなかった. 本症例は初発時には慢性肝疾患なく, 発癌にはHBVの直接的関与が, 再発時にはHCV感染持続による慢性肝炎を背景とした発癌が考えられた.
  • 橋本 毅, 小泉 淳, 朴沢 重成, 斎藤 拓郎, 常盤 香代子, 斯波 忠彦, 峯 徹哉, 今井 裕
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 5 号 p. 284-289
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性. 既往にC型肝炎ウイルス感染に伴う肝硬変を指摘されている. 吐血, ショック状態にて当院救命救急センター搬送. 内視鏡にて食道・胃静脈瘤破裂と考えられたため, 食道静脈瘤に対し内視鏡的静脈瘤結紮術を施行した. その後の腹部CT, MRIにて胃腎短絡を認めたため, バルーン下逆行性経静脈的塞栓術を試みたが流出路を閉鎖できず断念し, 経静脈的肝内門脈静脈短絡術とそれを介した静脈瘤塞栓術を施行した. しかし再吐血を認め, 血管造影上, 短胃静脈からの静脈瘤への血流も認めたため, 内視鏡的硬化療法, 脾動脈塞栓術, それに引き続きバルーン下逆行性経静脈的塞栓術を施行し初めて止血に成功した. 破裂胃静脈瘤に対しては, 門脈圧低減に成功しても塞栓術を行うべきであり, さらに短胃静脈が流血路として疑われた場合には, 静脈瘤への血流を減少させるために脾動脈バルーン閉塞術または脾動脈塞栓術を施行すべきだと考えられる.
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