肝臓
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46 巻, 7 号
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原著
  • 小林 慎二郎, 大坪 毅人, 古川 達也, 小泉 哲, 高崎 健
    原稿種別: 原著
    2005 年 46 巻 7 号 p. 395-405
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    【目的】 Lecithin加lipiodol emulsionを用いた肝動脈塞栓術 (Transcatheter arterial embolization with Lecithin added lipiodol emulsion ; 以降TAE-L) の抗腫瘍効果を検討した. 【対象】 従来用いられてきた塩酸ドキソルビシンのlipiodol emulsionを使用したTAE施行群 (A群) 95症例125結節と, TAE-L施行群 (B群) 76症例95結節を検討対象とした. 【結果】 1年後のCT所見で判定した結果, 完全壊死が得られた結節はA群で28%, B群で57%となり, 有意差を認めた (p<0.01). また, B群についてCT所見で完全壊死が得られた結節を検討すると, (1) 肉眼型別では, 単純結節型 : 71%, 単純結節周囲増殖型 : 37%, 浸潤型 : 0%であった. (2) coronaの有無別で完全壊死が得られた結節は, corona陽性結節で67%, 陰性結節で38%であった. (3) 腫瘍径別でみると, 3cm以内の結節では67%, 3.1cm以上では12%であった. (4) 局在別ではperiphery type : 63%, center type : 29%であった. 【結論】 Lecithin加lipiodol emulsionを用いることで腫瘍壊死効果は増強する. また, 単純結節型, corona陽性, periphery typeの結節で径3cm以内の大きさであれば, より高い腫瘍壊死効果が期待できる.
症例報告
  • 金 民日, 伊藤 敬義, 三木 洋幸, 高橋 正一郎, 中野 雅行, 井廻 道夫
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 7 号 p. 406-413
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性. 肝機能障害のため当院受診し, 自己免疫性肝炎重症化の診断でメチルプレドニゾロン大量療法を開始した. 肝障害は軽快したためステロイドを漸減, プレドニゾロンへ変更し外来管理していたが, ステロイド減量に伴い肝障害が再燃した. アザチオプリン (AZA) 100mgを併用するも軽快せず, 再入院となった. 再度ステロイド大量療法を行い寛解導入され, AZA併用下でステロイドを漸減し退院した. その後肝機能再増悪を認めたため, 第3回目の入院となった. 既に大量のステロイドが投与され, ステロイド減量に伴い再燃することから, 併用薬をシクロスポリンA 125mgに変更した. 変更後は再燃なく外来にてステロイド減量中である. 自己免疫性肝炎では約10%の患者が治療抵抗性を示し, ステロイドが有効であった患者でも副作用により治療継続不可能な例が存在する. このような症例に対してシクロスポリン併用療法が有効であると考えられた.
  • 小林 稔, 鈴木 通博, 高橋 泰人, 池田 裕喜, 高橋 秀明, 松永 光太郎, 石井 俊哉, 桜井 丈, 守屋 仁布, 小池 淳樹, 四 ...
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 7 号 p. 414-419
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    55歳, 男性. B型肝硬変で経過観察中, 平成15年1月にS5, S6に肝細胞癌を認め肝動脈塞栓術に引き続きラジオ波焼灼療法 (以下RFA), エタノール注入療法 (以下PEIT) の局所治療を行った. 3カ月後, CTにてPEITの穿刺ルートに当たる肝表面と腹壁の間に結節病変の出現を認め, 入院となった. 結節病変はCT, MRI, 造影超音波にて造影効果が認められ, 胃十二指腸動脈造影にて濃染を呈し播種性結節と診断した. 12月2日, 大網部分切除を行い, 同時に肝内再発病変に対し肝部分切除を施行した. 肝内の再発病変は組織学的には中分化型の肝細胞癌であり, 大網内の結節からも同様の所見が得られた. 術後15カ月後の現在まで, 再発, 転移は認めない. 肝癌の局所治療の際は, 播種を意識した治療前の穿刺ルートの画像確認が必要であり, 被膜下病変には, 治療後早期からの穿刺経路・近隣臓器の画像観察が重要であると考えられた. また, 播種病変に対する治療は可能な限り切除を行うことが長期予後の改善につながるものと思われた.
  • 志摩 泰生, 森田 荘二郎, 辻 晃仁
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 7 号 p. 420-424
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    心嚢内にまで伸びる下大静脈腫瘍栓を有する原発性肝癌に対し, 全身化学療法 (Low-dose FP) を施行後, 腫瘍栓が縮小し, 切除術が施行し得た症例を経験したので報告する. 症例は79歳, 男性. 腹部膨満感を主訴に近医受診. CTにて肝内側区域を主体とした最大径12cm大の腫瘍を指摘された. 心嚢内下大静脈に伸びる腫瘍栓を伴っており, 手術侵襲も大きく, 全身化学療法を選択した. レジメンは5-FU 250mg/body連日, CDDP 10mg/body週2回投与, 4週投与1週休薬で1コースとした. 治療開始後, 腫瘍マーカーは順調に低下し, 4コース終了後には下大静脈内の腫瘍栓は消失し, 腫瘍最大径は7cmに縮小した. 有害事象としては, Grade 2の食欲不振, 口内炎が認められており, 化学療法の継続よりも手術を選択した. 下大静脈内に腫瘍栓は認めず, 肝拡大左葉切除を施行した. 術後2年で肝S5に22mm大の孤立性の肝内再発を認め, 治療予定である.
  • 野村 尚弘, 末永 昌宏, 武内 有城, 飛永 純一, 三輪 高也, 神田 光郎
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 7 号 p. 425-430
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性. 主訴は心窩部痛. 腹部全体に強い腹膜刺激症状を認め, CTにて腹腔内に多量の液貯留を認めたため汎発性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した. 開腹すると消化管穿孔は認めず, 約700ml の新鮮血および凝血塊を認めた. 腹腔内を検索すると, 左三角間膜内に存在する25×20mm大の腫瘤が破裂し出血を来していた. この腫瘤は肉眼的には肝との連続性は認めなかった. 病理組織検査では高分化型肝細胞癌と診断された. 従って, 左三角間膜内に発生した異所性肝細胞癌が自然破裂, 出血したものと考えられた. 異所性肝細胞癌は非常に稀な疾患であり, なかでも破裂を伴ったものは本症例を含めて4例のみという稀有な症例であった.
  • 善田 貴裕, 増永 高晴, 篠崎 公秀, 岡田 俊英, 近藤 恭夫, 中尾 眞二
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 7 号 p. 431-436
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性で, Helicobacter pylori (HP) 陽性の出血性胃潰瘍の既往がある. C型肝硬変が非代償期に入るとともに, 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) を併発した. 血小板数が1.3×104/μl まで低下したために, prednisolone (20 mg/日 : 0.5 mg/kg) による治療が開始されたが, 血小板数は6×104/μl 前後以上には増加せず, またステロイド投与直後より高用量のインスリン治療を要する糖尿病が顕性化し, 散発性に38℃台の発熱を認めるようになった. ステロイドの副作用を考えこれを減量中止する一方で, HP除菌療法を施行したところ持続する血小板数の増加と血小板関連IgG (PA-IgG) の低下が得られた. 糖尿病は投薬が不要な状態に復し, 発熱も認めなくなった. 本例は種々の制約を伴う肝硬変に併発したITPに対してもHP除菌療法が有用であることを示唆するものと考えられた.
  • 吉田 雅, 永坂 敦, 小川 弥生, 西川 秀司, 樋口 晶文
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 7 号 p. 437-442
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性. 2002年9月2日, 左下腹部痛を主訴に当科初診した. 早期胃癌の診断で同年10月11日, 当院外科にて胃分節切除術を施行した. 術前から認めていた肝機能障害が術後一過性に増悪し, 血清抗核抗体・抗ミトコンドリア抗体高値の為, 肝生検を施行して原発性胆汁性肝硬変 (Primary biliary cirrhosis, 以下PBC) のStage Iと診断した. その後, 術後13カ月後の腹部CTで胃所属リンパ節の腫脹を認め, その3カ月後のCTで増大傾向を示した為, 開腹リンパ節生検を施行した. リンパ節には非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を認め, 臨床所見からサルコイドーシス等は否定的であり, 術後のサルコイド反応と診断した. これまでに術後1年経過してから所属リンパ節がサルコイド反応を来した報告例は無く, PBCを背景として発症したサルコイド反応と考えられた非常に稀有な1例と考えられた為, 文献的考察を加えて報告する.
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