肝臓
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46 巻, 8 号
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特集
肝炎ウイルスの遺伝子型
原著
  • 佐藤 悦久, 川村 直弘, 奥山 秀平, 中村 一久, 松岡 弘泰, 浅葉 宣之, 根津 佐江子, 中島 洋, 石田 均, 高橋 信一
    原稿種別: 原著
    2005 年 46 巻 8 号 p. 498-505
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    難治性と考えられる高ウイルス量のC型慢性肝炎患者に対し, IFN α 2bとリバビリンの併用24週投与における導入2週間をIFN βの1日2回単独投与に置き換えた投与法を行い, その有用性について検討した. ウイルス学的著効に至った症例は, Genotype 1bでは44.4% (12/27), そのうち従来法のHCV-RNA定量で500 kIU/ml 以上の症例では31.6% (6/19) であった. またGenotype 1b以外の症例では86.7% (13/15) が著効に至った. 著効に関わる因子についての多変量解析では, 開始4週目のHCV-RNA定性の陰性化のみが有意な因子として抽出された. 本治療法は難治症例に対しても有用であり, 治療早期でのウイルス陰性化率が高められたことと維持治療期でのα 2bとリバビリンの作用が相加的に著効を導いたものと考えられた.
症例報告
  • 和久井 紀貴, 石井 耕司, 樋上 勝也, 篠原 美絵, 池原 孝, 篠原 正夫, 住野 泰清, 三木 一正
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 8 号 p. 506-511
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    52歳の男性. 2002年4月, HBs抗原陽性の肝障害のため当院に入院した. 肝生検組織所見は, 慢性肝炎の初期像と思われる所見を呈した. 2001年までの会社の健康診断ではHBs抗原は常に陰性でトランスアミナーゼも正常であったことから, HBウイルスによる急性肝炎後に慢性化したものと判断した. 本症例のHBV genotypeを検索したところtype Aであった. 診断後からラミブジン100 mg/日の内服治療開始. 治療5カ月後にはHBV-DNA量は7.6から2.6Logコピー/ml 以下まで低下し, 治療7カ月以降にALTは正常化しその後も正常範囲内であった. 治療11カ月目にHBs抗原は陰性化したが, HBs抗体の出現は遅れHBs抗原消失8カ月後に陽性化した. 治療14カ月目からラミブジン内服治療を中止したが, それ以降もALTは正常範囲内でありHBV-DNAは測定感度以下を示し, HBs抗原は持続的に陰性化している. HBV genotype Aの急性感染は慢性化しやすいことが本邦でも経験されるようになってきたが, 慢性化したB型肝炎がその後のラミブジン内服治療によって治癒したと思われる症例を経験したので報告した.
  • 岩室 雅也, 川口 光彦, 寺田 亮, 大澤 俊哉, 山本 和秀, 糸島 達也, 高橋 和明
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 8 号 p. 512-515
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性. 2004年12月21日に近医で行った血液検査でAST 593 IU/l, ALT 661 IU/l と肝機能障害を認め, 12月22日に当院紹介となった. 発症の約4週間前に漢方薬の内服を開始しており, またリンパ球幼弱化試験 (lymphocyte stimulation test : LST) が陽性を示したことから, 当初は漢方薬による薬物性肝障害が疑われた. しかし血中E型肝炎ウイルス (hepatitis E virus : HEV) RNAが陽性で, HEV IgM抗体価が有意に上昇していることが明らかとなり, 最終的にE型急性肝炎と診断した. 問診により10月頃に市販のブタ肝臓を摂食していたことが判明し, 感染源として疑われた. 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴はなかった. 本例はE型急性肝炎の症例であるが, 薬物性肝障害の診断基準を満たしたため, その鑑別が問題となった. 漢方薬はLSTで偽陽性を示すことが多く, LSTの結果を以て漢方薬を肝障害の原因薬物と断定することはできない. またE型急性肝炎の診断においては, 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴とともに, 市販のブタ肝臓の摂食歴を聴取することが重要である.
  • 高松 督, 野口 典男, 伴 大輔, 真田 貴弘, 工藤 篤, 中村 典明, 川村 徹, 寺本 研一, 有井 滋樹
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 8 号 p. 516-522
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性で, 2004年8月胆管癌に対して胆管切除, 胆管空腸吻合術が施行された. 同年11月に発熱がつづいたため入院となった. 入院時の腹部CTにて肝S7を中心に直径8cm大の低吸収域を認め, 胆道再建後の胆管炎に起因する肝膿瘍と診断し, 経皮経肝的ドレナージおよび抗生剤による治療を開始した. 血液および膿汁の培養からKlebsiella pneumoniae が検出された. 入院2日目ごろより頭痛, 意識障害, 項部硬直などの症状が出現し, 髄液の細胞数が増加しており, 細菌性髄膜炎と診断された. 髄液の培養でもK. pneumoniae が検出され, 肝膿瘍からの感染の転移による細菌性髄膜炎と考えられた. 肝膿瘍ドレナージおよび約8週間の抗生剤投与, さらには続発性の水頭症に対する脳室腹腔シャント術により軽快した. 胆管癌術後に発生した細菌性肝膿瘍から遠隔臓器に感染が波及した1典型例として報告する.
速報
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