肝臓
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46 巻, 9 号
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Editorial
原著
  • 谷口 雅彦, 嶋村 剛, 鈴木 友己, 古川 博之, 藤堂 省
    原稿種別: 原著
    2005 年 46 巻 9 号 p. 534-542
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    生体肝移植においてC型肝炎再発に対する予防策はその予後の鍵となる可能性がある. 教室におけるC型肝硬変に対する生体肝移植症例について分析したので報告する. 1997年9月から2004年2月までに北海道大学病院で10例のC型肝硬変症例に対して生体肝移植を施行した. 10例中初期の症例3例において移植施行前に抗HCV療法を施行した. 2例でHCV-RNAの減少を認めたが, いずれの症例も副作用のために治療中断した. 10例中7例で移植後抗C型肝炎ウイルス (HCV) 療法を施行した. うち5例はC型肝炎再発前に施行し, 1例のみに治療後再発を認め, 2例でHCV-RNAは陽性ながら再発を認めず, 2例ではHCV-RNAは陰性となった. 一方, 7例中2例は再発後に治療を開始したが, 治療開始後もC型肝炎の増悪を認めた. 10例中3例は不安定な術後経過のため, 移植後に抗HCV療法を施行できなかった. C型肝硬変に対する生体肝移植では, C型肝炎再発予防のため移植前, 移植後の抗HCV療法を考慮すべきである.
  • ―中国地区の多施設調査―
    山本 晋一郎, 沖田 極, 神代 正道, 浮田 實
    原稿種別: 原著
    2005 年 46 巻 9 号 p. 543-548
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の治療法の進歩により長期生存も稀ならず経験される. 10年以上生存した肝細胞癌の治療法の内容を調査する目的で, 中国地区の19施設の協力により集計された155例の肝癌患者について分析を行った. その結果以下の点が明らかとなった.
    1) 男性110例 (71%), 女性45例 (29%) で, 年齢は38歳~92歳 (平均65.1歳) であった.
    2) HBs抗原陽性32例 (20.6%), HCV抗体陽性88例 (56.7%), 両者陽性6例 (3.9%), HCV抗体未検12例 (7.8%), 両者陰性12例 (7.8%) であった.
    3) HBs抗原陽性者の年齢は平均59.1歳に対しHCV抗体陽性者は67.2歳とより高齢に多くみられた.
    4) 治療法別では肝切除単独のみは61例 (39.3%) と最も多く, 次いで肝切除+他治療法との組み合わせが59例 (38.1%) であった. 両者を合わせると155例中120例 (77.4%) が肝切除を受けていた.
    5) 肝動脈塞栓術 (TAE) は155例中66例 (42.6%) に単独あるいは他治療法との併用で施行されていた.
症例報告
  • 土谷 薫, 朝比奈 靖浩, 小貫 優子, 上田 研, 西村 幸, 中西 裕之, 北村 敬利, 黒崎 雅之, 内原 正勝, 泉 並木
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 9 号 p. 549-556
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は23歳女性. 全身倦怠感を主訴に近医を受診し, 強い肝機能障害のため当院に紹介入院した. 3カ月前に交際中の男性がB型急性肝炎を発症しており, 男性は発症3カ月後の時点でも血中HBV-DNA陽性であった. 患者女性は入院時HBs抗原陽性であった. 肝性脳症I度, 入院後PT延長を認めたためラミブジン内服を開始した. その後肝機能障害は改善し, 第73病日にHBs抗原陰性・HBV-DNA陰性を確認したためラミブジン内服を中止した. その後, 第174病日にはHBs抗体の出現を確認した. 男女ともHBV genotype AeでありpreS/S領域の塩基配列で99.9%の相同性を認め, 同一ウイルスの感染が証明された. 若年者異性間での水平感染が証明されたHBV genotype AeによるB型急性肝炎症例を経験し, 今後若年者へのB型肝炎ワクチン接種などの社会的政策や, 急性肝炎遷延例での抗ウイルス療法の検討も必要であると考えられた.
  • 布井 弘明, 徳本 良雄, 木阪 吉保, 古川 慎哉, 日浅 陽一, 南 尚佳, 道堯 浩二郎, 堀池 典生, 恩地 森一
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 9 号 p. 557-562
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 女性. 2001年5月に大腿骨骨頭置換術の術前検査で肝機能異常とHBs抗原陽性を指摘された. HBe抗原陰性, HBe抗体陽性, HBV-DNA検出感度以下であるにもかかわらず肝機能異常が持続した. 他の肝疾患の合併を考慮し精査を行ったところ抗核抗体160倍, 抗ミトコンドリア抗体陽性であり自己免疫性肝疾患の合併が疑われた. 腹腔鏡検査で溝状陥凹がみられた. 生検組織は慢性肝炎 (F3/A2) の像を呈しており, 門脈域には形質細胞の浸潤があったが胆管病変はなかった. 以上より肝障害の成因は自己免疫性肝炎と診断した. プレドニゾロンによるHBVの再活性化の予防を目的としてラミブジンを併用した. 治療開始後肝機能の改善があり, 開始2年後の現在まで経過は良好である. ラミブジンの併用でHBVの再活性化を来すことなくステロイド投与を実施できた症例を経験した.
  • 蓮井 宏樹, 西村 光太郎, 何森 晶, 梶 義照, 佐藤 明
    原稿種別: 症例報告
    2005 年 46 巻 9 号 p. 563-569
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/11/24
    ジャーナル フリー
    症例は41歳女性, 職場の健診で軽度の肝機能異常を指摘され受診. 肝炎ウイルスや薬物の関与は否定され, 抗核抗体 (ANA), 抗ミトコンドリア抗体 (AMA) も陰性だったが, 抗平滑筋抗体 (ASMA) が陽性で肝生検にて慢性非化膿性破壊性胆管炎 (CNSDC) の所見が得られたためScheuer2期の原発性胆汁性肝硬変 (PBC) と診断した. UDCA 600 mg/日の投与にて肝機能検査は正常化した. 無症候性で組織学的にも早期のPBCであったが, γ-グロブリン, IgGそしてAIHスコア高値から自己免疫性胆管炎 (AIC) やAIHオーバーラップ症候群との異同が問題となった. 非定型的なPBCの診断にはASMAの検索が有用である可能性があり, 今後その臨床的意義を検討する上でこのような症例を集積することが必要と考えられた.
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