肝臓
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50 巻, 2 号
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原著
  • 田中 篤, 高橋 宏樹, 根津 佐江子, 上野 義之, 菊池 健太郎, 渋谷 明隆, 大平 弘正, 銭谷 幹男, Lorenzo Monta ...
    原稿種別: 原著
    2009 年 50 巻 2 号 p. 51-59
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    疲労は原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者の主要症状の一つとされており,近年欧米では臨床上の重要な問題としてPBC患者の疲労に関する報告が相次いでいるが,日本人PBC患者における疲労症状の実態は不明である.われわれは疲労症状の評価尺度として頻用されるFisk Fatigue Severity Score(FFSS)の日本語版をback translation法によって作成し,日本人PBC患者166名を対象としてその妥当性を統計学的に検証した.クロンバックのα係数は0.900を超えており,評価尺度の内的整合性は良好であった.SF-36との間にも高い相関が存在し,ことに疲労と関係の深い「活力」「日常役割機能(身体)」との間に最も強い相関がみられた.主因子法による探索的因子分析ではphysical, cognitive, socio-relational, socio-emotionalと推定される4因子が抽出され,これらによって結果全体の66%が説明可能であった.以上より今回作成した日本語版FFSSの妥当性が検証された.今後これを用いて日本人PBC患者の疲労症状について詳細に検討する予定である.
症例報告
  • 江林 明志, 井上 和明, 高橋 和明, 渡邊 綱正, 山田 雅哉, 安田 宏, 三代 俊治, 与芝 真彰
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 2 号 p. 60-64
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    E型肝炎ウイルス(HEV)はアジア・アフリカにおける流行性肝炎の重要な原因で,一般にはself-limitedな経過を取るが,妊婦では重症化しやすく致死率が高く胎児の合併症も多いとされる.今回我々は本邦で初めて妊娠中のHEV感染により急性肝炎重症型に陥った邦人妊婦例を経験した.本例はインドに長期滞在して帰国後2週間で発症し,入院時の血清よりgenotype 1のHEV RNA(JHN-Kan07R,AB447389)が検出された.抗ウイルス治療開始後速やかに肝機能は回復し,早産であったものの周産期の合併症もなく,母児共にその後は順調な経過をとった.
  • 鈴木 真琴, 室久 俊光, 荒井 大輔, 眞島 雄一, 國吉 徹, 小嶋 和夫, 玉野 正也, 飯島 誠, 菅谷 仁, 平石 秀幸
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 2 号 p. 65-70
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.2004年12月食欲不振と褐色尿を主訴に当院を受診.血清肝胆道系酵素の上昇を認め,急性肝炎の診断にて精査加療目的で入院となった.肝炎ウイルスはHAV,HBV,HCV,HEVともに陰性であったが,EBV-VCA-IgG抗体のみ陽性であったことからEBウイルス感染の可能性が示唆された.また,抗核抗体と抗ミトコンドリアM2抗体陽性から自己免疫性肝炎も疑い肝生検を施行しinterface hepatitis像と多核巨細胞を認めた.肝組織像より自己免疫性肝炎と診断後,ステロイド投与を開始し肝機能の著明な改善を認め軽快退院となった.多核巨細胞性肝炎像を呈した自己免疫性肝炎について自験例を含め2002年から2008年の本邦報告例についても検討したので報告する.
  • 石川 達, 今井 径卓, 樋口 和男, 上村 博輝, 渡辺 孝治, 関 慶一, 太田 宏信, 吉田 俊明, 上村 朝輝
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 2 号 p. 71-74
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性.2005年8月飲酒後,吐血し,救急車にて某院搬送入院.上部消化管内視鏡にて孤立性胃穹窿部静脈瘤からの出血を認めたが,自然止血にて経過観察していた.再出血の可能性を認め,バルーン下逆行性経静脈的塞栓術目的に当院へ紹介転院となった.造影CTにて胃内腔へ突出する胃静脈瘤とそれに連続する胃腎短絡路を認めた.胃腎短絡路の存在からバルーン下逆行性経静脈的塞栓術可能と判断し,血管造影施行.右内頸静脈により6Frバルーンカテーテルを胃腎短絡路に挿入,逆行性造影を施行したところ,造影剤は通常より左側の細い胃腎短絡路より流出し,胃静脈瘤本体への造影剤の停滞は不十分であった.そこで,右大腿静脈から6Frシェファードフックカテーテルを左腎静脈に挿入し,マイクロバルーンカテーテルを細い短絡路に挿入し,閉塞下に造影したところ,十分な静脈瘤血行路の描出が得られ,閉塞が可能となり,2カ所の閉塞により胃静脈瘤への造影剤の停滞が十分であると判断し,5%EOIを注入し塞栓可能となった.術後CTにても短絡路は消失し,胃静脈瘤は消失した.
  • 平峯 靖也, 今村 也寸志, 鐘撞 一郎, 細山田 香, 堂嶽 洋一, 樋脇 卓也, 馬場 芳郎, 庄 幸彦, 田原 憲治, 浜之上 雅博, ...
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.2004年4月よりアルコール性肝硬変症と糖尿病にて当院治療中であった.2008年5月肝性脳症と糖尿病の悪化にて当院入院したが改善認めず次第に肝性昏睡へ移行した.腹部造影CTにて脾静脈から腸間膜静脈を経由し直接下大静脈へ流入する巨大な側副血行路を認めた.経皮経肝門脈経路から側副血行路へアプローチし塞栓術を施行した.しかし,3日目に肝穿刺部より出血を認めたため腹部血管造影施行.巨大な肝動脈・門脈短絡(Arterioportal shunt:AP-shunt)と側副血行路の再開通を認めた.よってAP-shuntの責任動脈を塞栓した.結果,止血効果得られるとともにAP-shuntの消失,側副血行路の血流低下を確認した.臨床経過は,腹部血管造影後3日目に覚醒し7日目には日常会話可能になり,長谷川式スケール12点まで回復した.難治性肝性脳症に対して経皮経肝的に門脈側副血行路塞栓術が有効であった症例を経験したので報告する.
  • 神田 光郎, 竹田 伸, 杉本 博行, 野本 周嗣, 中尾 昭公
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.2006年12月に検診の腹部超音波検査にて,肝S6に径20 mmの低エコー腫瘤を指摘されるも経過観察となっていた.2007年12月の腹部超音波にて腫瘍は全体に低エコーを呈し,腫瘍径が36 mmに増大していたため,当院に紹介となった.血液生化学検査では肝機能,腫瘍マーカーに異常はみられず,肝炎ウイルスマーカーも陰性であった.腹部造影CT, MRI等の精査を行い,それら画像的所見と増大している経過から肝細胞癌と術前診断し,肝後区域切除術を施行した.術後病理学的検査にて肝血管筋脂肪腫と診断された.肝血管筋脂肪腫は,血流豊富な性質から,しばしば肝細胞癌と鑑別に難渋する.特に本症例は,脂肪成分に乏しかったため超音波にて全体に低エコーを呈し,経過中に腫瘍の増大をみた極めて稀な例であり,より肝細胞癌との鑑別が困難であった.
  • 今城 健人, 厚川 和裕, 武田 篤也, 坂口 隆, 斯波 忠彦, 野中 敬, 岡田 和久, 千葉 秀幸, 碓井 真吾, 高橋 久雄, 杜 ...
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法(以下RFA)後に,肝内に多発性に再発する症例が報告されている.我々は同区域多発再発した肝細胞癌に対し体幹部定位放射線治療(以下SBRT)を施行し,著効した症例を経験したので報告する.症例は77歳男性.2002年1月に肝S6の腫瘤を認めた.同年2月に腫瘍生検を施行しNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に合併した肝細胞癌と診断,同年3月にRFAを施行した.2004年9月に肝S6に同区域多発再発病変が認められたため,線量35 Gy/5回/1週間にてSBRTを施行した.SBRT後,CTにて再発病変は消失し,PIVKA-IIも262 mAU/mlから29 mAU/mlと正常に復した.多発性の再発病変も病巣範囲がある程度限局していれば,SBRTによりコントロール可能となることもあり,本症例を通じRFA後の同区域多発再発病変に対してSBRTは検討すべき治療法の一つであることが示唆された.
  • 矢田 豊, 竹内 卓, 神田 大輔, 高草木 智史, 畑中 健, 家崎 桂吾, 吉永 輝夫, 久保田 潤, 柏原 賢治, 佐藤 賢, 樋口 ...
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.2007年5月肝ダイナミックCTにて肝S4に径2.4 cm大腫瘍を指摘され精査加療目的に当科紹介.画像所見および肝腫瘍マーカー高値よりC型肝硬変に伴う肝細胞癌と診断し,S4病変に対し人工胸水下に経皮的ラジオ波焼灼術(Percutaneous radiofrequency ablation;PRFA)施行.治療評価CTにて解剖学的占拠部からsafety marginは不十分だが腫瘍部は焼灼野に含まれると判断し退院.3カ月後外来での肝ダイナミックCTにてS4RFA施行部に径3.0 cm大の局所再発病変を認め,第2回入院の上,肝動脈塞栓術に引き続きPRFA施行.評価CTでS4再発病巣は完全焼灼と判定し退院.以後,外来フォローされていた.初回PRFAより7カ月後,CTにてS4RFA後瘢痕部内側に新たに乏血性腫瘍を認め,かつ同腫瘍は急速に発育進展.肝機能障害増悪に加え,閉塞性黄疸,腹水,食欲不振を認め第3回入院.腹部超音波検査,CTにてS4乏血性腫瘍による上部総胆管閉塞,左右肝内胆管の著しい拡張を認めた.減黄目的に総胆管内に金属ステントを留置し,胆道系酵素は一時低下するも,肝癌による肝不全にて永眠.死後肝S4乏血性腫瘍部よりネクロプシー施行.病理診断は肝内胆管癌(Intrahepatic cholangiocarcinoma;ICC)であった.本例は,経過より混合型肝癌に対するPRFA後の再発例と考えられた.RFA施行前後の腫瘍造影パターンおよび発育形式は明らかに変化しており,その原因としてRFA治療が影響した可能性もある.肝癌治療法の選択においては,ICC成分へのRFA後に急速進展例があることを念頭におく必要がある.
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