肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
50 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
Editorial
原著
  • 中原 英樹, 小橋 俊彦, 大森 一郎, 田中 飛鳥, 三口 真司, 橋本 慎二, 森本 博司, 惠木 浩之, 角舎 学行, 眞次 康弘, ...
    原稿種別: 原著
    2009 年50 巻6 号 p. 273-279
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    近年,肝細胞癌症例の高齢化に伴い,高齢者手術症例は増加傾向にある.それに伴い,術前から様々な併存症を有する症例も増加傾向にある.これら併存症を有する症例をより安全に手術することを目的に当科での肝細胞癌初回手術症例を対象に全身状態,肝局所因子の両面から術後合併症発生の予測を行った.
    2002年7月から2008年12月に当科にて経験した肝細胞癌初回手術例131例のうち,何らかの処置を必要とする術後合併症を認めた51例を合併症群,合併症の無い80例を非合併症群として検討を行った.
    背景肝機能の単変量解析では合併症群でコリンエステラーゼ,アルブミン,ヘパプラスチンが有意に低く,総ビリルビン,AST,ZTT,ICG-R15値が有意に高かった.多変量解析ではアルブミンが有意な因子であった.腫瘍因子では両群間に差を認めなかった.治療因子では術中出血量に有意差を認め500 g以上が合併症発生の危険因子であった.幕内基準を基に手術適応を決定していること,アルブミンが有意な因子であったことからこれらを含む肝障害度を背景肝機能因子とし,出血量を含むH-POSSUMを全身状態評価・手術因子評価とし多変量解析した結果,肝障害度BまたはC,H-POSSUM合併症発生予測50%以上はともに合併症発生の危険因子であった.
    これらを用い症例を4群に分類すると,予測術後合併症発生率50%未満かつ肝障害度BまたはCの症例での合併症発生率は60.0%,予測術後合併症発生率50%以上かつ肝障害度Aの症例での合併症発生率は50.0%,予測術後合併症発生率50%以上かつ肝障害度BまたはCの症例での合併症発生率は80.0%であり,予測術後合併症発生率50%未満かつ肝障害度Aの症例での合併症発生率21.6%と比較して有意に合併症発生は高率であった.
    標準的な検査で算定できる肝障害度とH-POSSUMの組み合わせにより,肝切除の術前状態を正確に把握し,術後合併症を予測することが可能で,肝疾患以外の合併症を有する症例でも,術前肝障害度AでH-POSSUM 50%未満の症例では安全に肝切除手術を施行することが可能である.
症例報告
  • 大野 芳敬, 渡辺 崇夫, 竹下 英次, 小林 雄一, 田中 良憲, 上甲 康二
    原稿種別: 症例報告
    2009 年50 巻6 号 p. 280-288
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.既往歴に眼サルコイドーシス.C型慢性肝炎に対してPEG-IFNα-2b/Ribavirin(PEG-Interferon α2b/Ribavirin,PEG/RBV)の併用療法開始後,造影CTで明瞭に描出される多発肝腫瘍を認めたため治療中止した.超音波検査では腫瘍の境界が不明瞭で,生検の結果,肝サルコイドーシスが疑われたが,確定診断には至らなかった.しばらく経過観察したが変化ないためPEG/RBV併用療法再開し24週間投与を行った.投与終了後5カ月目で多発肝腫瘍は徐々に増大傾向にあり,CT及び造影超音波で明瞭に描出されたので,造影超音波下肝腫瘍生検施行し,肝サルコイドーシスと確定診断した.その後は経過観察のみで肝腫瘍は徐々に縮小し,PEG/RBV終了後12カ月目にほぼ消失した.C型慢性肝炎はSVR(Sustained Virological Response)を維持している.IFN(Interferon)およびRBVの治療においてサルコイドーシスの誘発,増悪についても注意すべきであると考えられた.
  • 坂田 稔之, 山田 尚史, 塚田 勝比古, 橋本 貴至, 武内 俊彦, 稲垣 宏, 服部 日出雄
    原稿種別: 症例報告
    2009 年50 巻6 号 p. 289-296
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.狭心症,C型慢性肝炎にて近医で通院加療中,心窩部痛が出現.肝機能異常を指摘され当院紹介入院となった.腹部超音波検査では肝臓は腫大し,両葉に低エコーとして描出される腫瘍が多発し,肝実質の正常部位をほとんど確認できなかった.腫瘍は単純CT検査でやや低濃度,造影CT検査で造影効果を認めなかった.MRI検査T1強調で低信号,T2強調で同信号,造影MRIで辺縁は造影され,内部は低信号を呈した.全身状態の悪化で死亡し,家族の同意を得て,肝臓のnecropsyを施行した.N/C比の高い単核異型細胞のびまん性浸潤を認め,免疫染色でCD20(+),CD3(-)であり,malignant lymphoma,diffuse large,B cell typeと診断した.今回我々はC型慢性肝炎に合併し,肝臓原発と考えられた悪性リンパ腫を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 落合 香織, 本田 英明, 渡辺 珠美, 甲嶋 洋平, 中村 郁夫, 松崎 靖司
    原稿種別: 症例報告
    2009 年50 巻6 号 p. 297-302
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.急性心筋梗塞,たこつぼ心筋症のため入院加療中であった.冠動脈に薬剤溶出性ステント(Drug-eluting stent;DES)を留置し,さらに抗凝固剤・抗不整脈薬・降圧剤などの薬物投与を受けていた.投与開始後約3週目から肝機能障害が出現し,臨床所見・検査所見などから薬物性肝障害が強く疑われた.しかし心疾患の急性期であったため,抗凝固療法を中止できず,原因薬物を検索しつつ肝障害に対する治療を行わざるを得なかった.今回我々は血漿交換を導入した後に,ウルソデオキシコール酸製剤を内服することにより,遷延する黄疸に対し,有効であった症例を経験した.
  • 千田 剛士, 影山 富士人, 竹平 安則, 山田 正美, 吉井 重人, 本城 裕美子, 高井 哲成, 岩岡 泰志, 魚谷 貴洋, 末廣 智之 ...
    原稿種別: 症例報告
    2009 年50 巻6 号 p. 303-311
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.C型肝硬変,多発肝細胞癌に対して肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)を繰り返していたが,2004年9月に腫瘍が左肝管内に浸潤を来たし化膿性胆管炎を併発した.左肝管の狭窄部に内視鏡的にplastic stent(PS)を留置し胆管炎は軽快したが,わずか23日で留置したPSが逸脱した.胆管炎再発を防ぐためにexpandable metallic stent(EMS)の留置を考えたが,出血などの合併症防止の目的で左肝管内に浸潤した腫瘍に対するTACEを先行させた.その後PSを抜去し,総肝管から左肝管にかけて8 mm径,80 mm長のS.M.A.R.T. Nitinol StentTMを留置した.2005年6月(初回のステント留置から309日後)に繰り返す発熱のため再度入院となった.computed tomography(CT)にて左葉B3の末梢に多発膿瘍形成が認められ,腫瘍のovergrowthに伴う胆管狭窄が原因と考えられた.このため前回留置したステントの上流にS.M.A.R.T. Nitinol StentTM,8 mm径,80 mm長の留置を追加した.本症例は2006年4月に肝不全で永眠されたが,それまでこのステントは開存しておりその間に感染や閉塞などの合併症は認めなかった.肝細胞癌は易出血性の腫瘍であるためEMS留置には出血や早期閉塞のリスクがあるとされるが,ステント留置前にTACEを行うことで出血やEMS閉塞を防ぐことができたと考えられた.
  • 岡 博子, 中井 隆志, 山崎 修, 真鍋 隆夫, 川崎 靖子, 木岡 清英, 村田 佳津子, 井上 健
    原稿種別: 症例報告
    2009 年50 巻6 号 p. 312-319
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    症例は91歳,男性.平成7年11月89歳時に近医でのUS・CTにて径3 cm大の肝血管腫と診断されたが,平成8年11月に増大し,当院を紹介された.肝S5に径6 cmの単発腫瘍と,S状結腸に径23 mm大のI型大腸癌を認め,平成9年3月にS5部分切除およびS状結腸切除術が施行され肝細胞癌大腸癌の重複癌と診断された.平成11年93歳時肝S4/8に径12 mmの再発が認められ,肝動脈塞栓療法(TACE)および経皮的エタノール注入療法(PEIT)が施行された.平成13年95歳時にTACEおよびPEIT,平成15年97歳時にTACEおよびPEIT,平成16年98歳時にTACEを施行され平成18年6月に100歳にて永眠された.91歳という超高齢での肝・大腸の同時性重複癌の一期的切除や97歳でのPEIT,98歳でのTACEの報告例は見当たらず,超高齢者に対する積極的な集学的治療の意義を示す貴重な症例と考えられた.
短報
  • 田中 昌子, 鈴木 雅治, 吉川 昭, 柚木 久雄, 五反田 裕子, 松倉 晴道, 松林 圭二, 鈴木 光
    原稿種別: 短報
    2009 年50 巻6 号 p. 320-323
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    HBs-antigen positive Japanese blood donors from October 2006 to September 2007 (n=2001) were examined for HBV genotype. Of 1887 blood donors whose HBV was successfully genotyped, the rate of HBV genotype was A (5.6%), B (30.8%), C (62.6%) and others (1.0%). The prefectures with an over-60% predominance of HBV genotype B were Akita, Yamagata, Niigata, and Okinawa. Although most prefectures showed 60% or greater rate of genotype C, Hokkaido, Aomori, Iwate, Miyagi, Ibaraki, Tochigi, Saitama, Chiba, Tokyo and Kanagawa showed almost same rate of genotype B and C. To our knowledge, this is the first report describing HBV genotype distribution in every prefecture of Japan.
特別寄稿
  • 松井 圭司
    原稿種別: 特別寄稿
    2009 年50 巻6 号 p. 324-338
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/06
    ジャーナル フリー
    目的 HCVの増殖がGompertzian modelに従い,インターフェロン(IFN)を投与したときのウイルスの崩壊がexponential decayを示す時,HCVの減少曲線は,lnH(t)=lnGmax-(D0/k)+(D0/k)exp(-kt)と表せることを筆者は提唱した.ここで,lnH(t)は減少するウイルス量を対数表示したもの,lnGmaxは開始時のウイルス量,D0はIFN開始時の初期減少率,kは減少率の減衰係数,tは時間である.
    本稿では,この数式に実際の臨床データをあてはめて検証することを目的とした.
    方法 C型慢性肝炎の患者にベータIFNを2週間投与し,治療前,1/2週後,1週後,2週後のウイルス量を TaqMan法を用いて測定した.
    結果 治療前,1/2週後,1週後から計算された2週後の値より,実測値の方がウイルス量が少なかった.HCVの増殖が,古典的なGompertzian modelではなく,Gomp-Ex model(ある閾値まではexponential growthを示し,閾値以上に増えたときにGompertzian modelに従う)に基づくと仮定し,閾値をTaqMan法の3.5 log/mlと設定した所,予測値と実測値はほぼ一致することが分かった.
    結論 HCVの増殖がGomp-Ex modelに従う,として計算したモデルは,結果的には従来のtwo-phase modelと同様のものであった.当試論の有用性は,治療開始後1週間の3点を計測することによって長期成績を予想できることである.3点から計算した理論上の最小値がGomp-Exの閾値(3.5 log/ml)を下回れば,ウイルスを根絶することができる.
feedback
Top