肝臓
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50 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
原著
  • 堀江 義則, 石井 裕正, 山岸 由幸, 海老沼 浩利, 菊池 真大, 梅田 瑠美子, 斎藤 英胤, 加藤 眞三, 日比 紀文
    原稿種別: 原著
    2009 年 50 巻 9 号 p. 507-513
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/24
    ジャーナル フリー
    わが国におけるアルコールの総消費量は,最近は若干の減少傾向を示しているが,全肝疾患におけるアルコール性肝障害の比率は上昇している.今回,アルコール性肝硬変患者の飲酒量,飲酒期間を全国調査し,性差,肥満,糖尿病などの合併症の影響についても検討した.アルコール性肝硬変1207例について検討したところ,女性は男性より常習飲酒期間が有意に短かった.肥満(BMI 25以上),糖尿病の有病率は,常習飲酒群(一日飲酒量60-110 g)が大量飲酒群(一日飲酒量110 g以上)より有意に高かった.また,糖尿病の合併率は,男性が女性より高く,特に常習飲酒群では男性が45.2%であったのに対し,女性は16.7%と著明に少なかった.一方,これらの合併症のない群では,男性では85.6%が大量飲酒群で,常習飲酒群は14.4%と少数であった.糖尿病,肥満などの生活習慣病が,アルコール性肝硬変の進展に関与していることが示唆された.女性はそれらとは独立したアルコール性肝硬変の危険因子であることが示唆された.
症例報告
  • 宮崎 将之, 樋口 野日斗, 田中 正剛, 上田 哲弘, 加藤 正樹, 辻 裕二, 古藤 和浩, 高柳 涼一
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 9 号 p. 514-519
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性.1999年よりB型慢性肝炎に対してラミブジン治療が行われていた.2004年に肝炎増悪を伴ったHBV DNAのYVDD変異が出現したため,ラミブジン・アデフォビル併用療法が開始された.2008年7月よりウイルス量が増大し,肝炎の再増悪が出現した.アデフォビル耐性株によるbreakthrouh hepatitisを疑い,エンテカビル・アデフォビル併用療法に変更し,ウイルス量の低下とともに肝炎改善が得られた.HBV DNA塩基配列の解析にてA181V/T変異,N236T変異が確認され,アデフォビル耐性株によるbreakthrouh hepatitisと診断した.ラミブジン耐性ウイルスに対するアデフォビル併用療法の経過中に,アデフォビル耐性ウイルスによるbreakthrouh hepatitisを発症した報告は極めて稀少であり,文献的考察を加え報告する.
  • 木下 晃吉, 板垣 宗徳, 青木 孝彦, 松平 浩, 石黒 晴哉, 二上 敏樹, 上竹 慎一郎, 瀧川 真吾, 瀬嵐 康之, 小池 和彦, ...
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 9 号 p. 520-526
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.C型肝硬変で当科加療中,2006年6月中国で脳死肝移植を施行した.帰国後当科受診し,再発性C型肝炎の診断で,2007年3月よりIFNα2b 150万単位週3回,ribavirin 200 mg/日の併用投与を開始した.同年11月よりIFNα2b 300万単位週3回,ribavirin 400 mg/日へ増量し,2008年8月にHCV RNAは陰性化した.同時期に撮像した胸部CTで,縦隔リンパ節腫大を認め,9月胸腔鏡下リンパ節生検を行い,縦隔リンパ節結核と診断された.肺結核の合併も認め,INH,RFP,PZA,EB 4剤による抗結核療法を開始した.2009年1月現在,IFNα2b 300万単位週3回,ribavirin 400 mg/日の投与を継続しながら,抗結核療法を行っているが,重篤な肝障害や拒絶を示唆する兆候を認めていない.肝移植後の縦隔リンパ節結核の報告は少なく,移植後リンパ増殖性疾患との鑑別も含め,示唆に富む症例と考えられた.
  • 林 亮平, 北本 幹也, 野田 育江, 渡邉 千之, 山田 博康, 今川 勝, 松本 陽子, 田中 未央, 児玉 美千世, 平本 智樹, 赤 ...
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 9 号 p. 527-531
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は86歳女性.肝障害の精査の為に入院したが,原因となり得るウイルス感染および服薬歴,アルコール飲酒歴は認めなかった.抗核抗体は陽性であり,肝生検を施行しAIH scoreは17点となり自己免疫性肝炎と診断した.HLA typeはDR4陽性であった.プレドニゾロン(PSL)30 mg/日とウルソデオキシコール酸(UDCA)600 mg/日の内服を開始し,ALTは持続正常化した.UDCA 600 mg/日と併用することで,PSL 10 mg隔日投与としている現在も肝障害再燃は認めていない.
  • 関 耕次郎, 朴 孝憲, 楳村 敦詩, 松本 美加, 水野 雅之, 島 俊英, 岡上 武
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 9 号 p. 532-539
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性.2型糖尿病,高血圧,高脂血症,NAFLDにて通院中であったが,平成18年9月頃より腹水が出現し,諸検査にてNASH肝硬変と診断した.腹水は利尿剤に抵抗性であった.平成19年6月に小腸コレステロールトランスポーター阻害剤であるエゼチミブの投与を開始したところ,開始17週後に腹水が消失した.しかし患者がエゼチミブを4週間自己中断していたため,再び腹水が多量に貯留した.すぐにエゼチミブを再開したが,しばらくは肝予備能の低下は進み腹水も増加した.その後次第に効果が現れ,再開12週頃から肝予備能は改善し始め,腹水も徐々に減少し,再開34週後に消失した.本例は,非代償性NASH肝硬変に対しエゼチミブが有効であることを示した1例である.
  • 安部 智之, 調 憲, 古賀 睦人, 播本 憲史, 辻田 英司, 祇園 智信, 梶山 潔, 本村 健太, 小柳 年正, 坂本 茂, 長家 尚
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 50 巻 9 号 p. 540-546
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/24
    ジャーナル フリー
    症例1は,58歳男性.B型およびアルコール性肝硬変と2型糖尿病の既往あり.主訴は,全身倦怠感と体重減少であった.RBC 707x104/mm3,Hb 20.4 g/dl,Hct 59.6%と多血症があり,血清エリスロポエチン値(以下Epoと略す)113 mU/mlは高値であった.喫煙・ビタミン欠乏症などによる2次性多血症は除外された.肝右葉に17 cmの肝細胞癌(以下HCCと略す)を認めた.肝右葉切除後に,高Epo血症と多血症は改善した.低分化型肝細胞癌で,stage IIIであった.術後2年間無再発である.症例2は,58歳男性.B型肝硬変の既往あり.肝右葉に径9 cmのHCCと,右門脈1次分枝に腫瘍栓を認めた.血液生化学検査で多血症と高コレステロール血症と高Epo血症を認めた.肝拡大右葉切除後に,多血症は改善した.低分化型肝細胞癌,stage IVAであった.術後1年1カ月目に多発肺・肝転移が出現した.高Epo値を伴う多血症合併HCCの2例に,文献的考察を加え報告する.
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