症例1は,58歳男性.B型およびアルコール性肝硬変と2型糖尿病の既往あり.主訴は,全身倦怠感と体重減少であった.RBC 707x10
4/mm
3,Hb 20.4 g/d
l,Hct 59.6%と多血症があり,血清エリスロポエチン値(以下Epoと略す)113 mU/m
lは高値であった.喫煙・ビタミン欠乏症などによる2次性多血症は除外された.肝右葉に17 cmの肝細胞癌(以下HCCと略す)を認めた.肝右葉切除後に,高Epo血症と多血症は改善した.低分化型肝細胞癌で,stage IIIであった.術後2年間無再発である.症例2は,58歳男性.B型肝硬変の既往あり.肝右葉に径9 cmのHCCと,右門脈1次分枝に腫瘍栓を認めた.血液生化学検査で多血症と高コレステロール血症と高Epo血症を認めた.肝拡大右葉切除後に,多血症は改善した.低分化型肝細胞癌,stage IVAであった.術後1年1カ月目に多発肺・肝転移が出現した.高Epo値を伴う多血症合併HCCの2例に,文献的考察を加え報告する.
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