肝臓
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51 巻, 11 号
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原著
  • 野ツ俣 和夫, 神野 正隆, 松田 尚登, 真田 拓, 新 浩一, 小坂 星太郎, 渡邊 弘之, 登谷 大修, 田中 延善, 須藤 嘉子, ...
    原稿種別: 原著
    2010 年 51 巻 11 号 p. 607-614
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    C型慢性肝炎に対するPeginterferon alfa-2b(PEG-IFN)/Ribavirin(RBV)療法にコレステロールトランスポーター阻害薬であるEzetimibeを併用する後ろ向き研究を行い,Ezetimibeの有用性につき検討した.PEG-IFN/RBV療法を行い,投与開始から12週目HCV RNA陰性の判定が可能であった1型高ウイルス334例(Ezetimibe併用44例,非併用290例)を対象とした.EVR率は併用群(65.9%)で非併用群(45.2%)より有意(p=0.002)に高かった.多変量解析によるEVR寄与因子にEzetimibe併用が選択された(odds比2.993,p=0.004).累積HCV RNA陰性化率は,併用群で有意に高かった(p=0.0035).投与前の肝脂肪変性の有無に関わらず併用群では非併用群よりEVR率が高い傾向があった.Ezetimibe併用は,C型慢性肝炎に対するPEG-IFN/RBV療法の治療成績向上に有用である可能性が示唆された.
症例報告
  • 本間 雄一, 原田 大, 日浦 政明, 成田 竜一, 阿部 慎太郎, 田原 章成
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 615-619
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性.2008年12月下旬より両側下肢から始まる皮疹が出現し,全身へ拡大した.肝機能障害を認め,HBs抗原120.4 S/Nで,IgM-HBc抗体は1.4 indexと軽度上昇,HBe抗原202.3 S/CO,HBe抗体0.0%,IgG-HBc抗体は原液96.0%,200倍希釈16.4%でありB型急性肝炎と診断した.また経過から皮疹はB型急性肝炎に伴うGianotti-Crosti症候群と診断した.入院にて,肝炎の改善とともに皮疹の消退を認めた.Gianotti-Crosti症候群は小児に多く,成人では比較的稀と認識されているが,成人での報告もある.近年,本邦では稀であった成人のB型急性肝炎からの慢性化が増加しており,B型急性肝炎を適切に診断することは重要である.肝炎の症状が軽微な症例もあるため,Gianotti-Crosti症候群のように特徴的な症状をみた場合は注意が必要である.
  • 谷本 匡史, 杉原 誉明, 藤瀬 幸, 加藤 順, 徳永 志保, 的野 智光, 永原 天和, 植木 賢, 岡本 欣也, 大山 賢治, 岡野 ...
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 620-627
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    異性間性交渉を契機に感染したアメーバ性肝膿瘍の2例を経験したため報告する.症例はそれぞれ28歳と29歳の男性で,性風俗店での口肛門性交の経験を有していた.両症例とも慢性の下痢・下血を契機に発症しており,腹部超音波検査,腹部CT検査にて肝S8に膿瘍を認めた.1例は胸腔への穿破を合併していた.膿汁の塗抹検査や糞便からはアメーバ原虫は確認されなかったが,抗アメーバ抗体が陽性であり,メトロニダゾール750 mg-1500 mg/日の内服を開始したところ,速やかに解熱し回復した.海外渡航歴が無くても,20代から60代までの男女で慢性の下痢・下血が認められる場合,性行為感染症としての赤痢アメーバ感染症を念頭において,性交渉歴について詳しく問診し,積極的に内視鏡検査の実施やアメーバ抗体を検査し,特に男性には肝膿瘍の合併が多い為に腹部超音波検査を実施する事が大切である.
  • 杤尾 人司, 今井 幸弘, 木本 直哉, 杉之下 与志樹, 和田 将弥, 岡田 明彦, 高橋 隆幸, 猪熊 哲朗
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 628-636
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    急性骨髄性白血病(AML)細胞の肝浸潤により僅か入院11病日で急激な転帰を辿った急性肝不全の一例を経験した.患者は,40才代男性.発熱,末梢血異常,肝機能障害により緊急入院し,入院第2病日に骨髄穿刺にてAML(FAB分類:M5b)と診断された.第4病日より肝不全による脳症が発現し,血漿交換,血液濾過透析を第9病日まで実施したが第11病日に死亡された.超音波ドプラ法では,入院当日,肝動脈と門脈の血流動態に顕著な異常を認めなかった.しかし,第4病日より門脈血流の明瞭な高速化と共に肝動脈の末梢血管抵抗の高値化が確認され,その後,さらにその程度は著明となった.第3病日に実施した肝生検では肝実質の広範な凝固壊死と共に門脈域への白血病細胞の浸潤が認められた.門脈域内の門脈内腔は保たれていたが,動脈は狭窄,ないし閉塞していた.本例においては,末梢肝動脈血流の灌流低下が,極めて急激に発症した急性肝不全の成因や肝細胞再生の不良さと関与している可能性があると考えられた.
  • 白戸 美穂, 西野 隆義, 中尾 絵美子, 白戸 泉, 光永 篤, 土谷 飛鳥, 木村 知, 遠田 譲, 中野 雅行
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 637-644
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    48歳女性.人間ドックの腹部超音波検査で肝血管腫を指摘され,近医で半年ごとに超音波検査にてフォローされていた.平成20年4月の検査で内部エコーの変化を指摘され,腹部造影CT上肝細胞癌を疑われたため当科紹介,入院となった.背景肝は正常で採血検査に異常値はなく,上部下部消化管内視鏡検査・胸部レントゲン検査では悪性所見を認めなかった.腹部超音波検査,CT検査,MRI検査,血管造影検査を行い多血性肝腫瘍を認めたが質的診断には至らず,確定診断のため超音波ガイド下で腫瘍生検を行った.腫瘍部は紡錘型平滑筋細胞が密に増生しており,脂肪組織はほとんど見られなかった.免疫染色で平滑筋細胞はHMB-45,melan-A陽性であり,肝血管筋脂肪腫と診断,外来で経過観察の方針となった.背景肝が正常で,肝炎ウイルスマーカー・腫瘍マーカー陰性,他臓器悪性腫瘍のない多血性肝腫瘍では,AMLの可能性を踏まえ積極的に腫瘍生検を考慮すべきと考えた.
  • 木下 晃吉, 横田 健晴, 千葉 允文, 小林 剛, 及川 恒一, 佐伯 千里, 益井 芳文, 小林 裕彦, 伏谷 直, 坂部 俊一, 木島 ...
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 645-651
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    58歳女性.特発性門脈圧亢進症にて加療中.慢性腎不全のため長期血液透析歴あり.他院での血液透析中に吐血し,当科へ搬送された.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部小弯静脈瘤より湧出性出血を認め,O-ring結紮で止血を図った.その後,難治性の鼻出血を生じ,窒息が危惧されたため,気管内挿管,呼吸器管理とし,後日気管切開術を施行した.術後貧血の進行を認め,気管切開部からの出血を疑ったが,出血は認められなかった.臍周囲に硬結性腫瘤を触知し,腹部CTを撮像したところ,両側腸腰筋,腹直筋内に広範な血腫を認め,特発性腸腰筋血腫,腹直筋血腫と診断した.保存的に加療したが,出血性ショックから肝不全へ進行し永眠された.肝疾患患者では鼻出血や歯肉出血などの出血傾向を呈することが多いが,筋肉内出血をきたすことはまれである.肝疾患患者で原因不明の貧血進行や腹部症状を認めた場合は,腸腰筋,腹直筋などの筋肉内出血も念頭に置く必要がある.
  • 眞田 幸弘, 水田 耕一, 中田 学, 浦橋 泰然, 江上 聡, 梅原 実, 脇屋 太一, 森 美鈴, 安田 是和, 河原崎 秀雄
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 652-663
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    [背景] 先天性門脈体循環シャント(Congenital extrahepatic portosystemic shunt:CEPS)は,症候性CEPSにおいて内科的治療抵抗性の場合,外科的治療の適応となる.今回,2例の症候性CEPSに対しシャント血管結紮術を施行し,良好な結果を得たので報告する.
    [症例1] 8才,男児.検診による精査にて肝腫瘍を指摘され,増大傾向を認めたため,静脈管結紮切離術を施行した.術後1年6カ月,CT上多発性肝腫瘍は明らかに縮小した.
    [症例2] 1才4カ月,女児.出生後より腎静脈レベルの下大静脈に直接流入するシャント血管を認めており,肝肺症候群が悪化したため,シャント血管結紮切離術を施行した.術後6カ月で在宅酸素療法を離脱でき,レントゲン上も明らかに改善した.
    [考察] 症候性CEPSに対する外科的治療は,種々の合併症の根治的治療になるため,時期を逸せずに施行すべきである.外科的治療法の選択の際,術前の肝内門脈評価と門脈圧測定が重要である.
  • 田口 順, 梶原 雅彦, 中島 収, 今村 真大, 城野 智毅, 高木 浩史, 馬場 真二, 石井 邦英, 安倍 弘彦, 矢野 博久, 佐田 ...
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 664-673
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.大酒家.全身倦怠感を主訴に受診.血液生化学検査で,肝機能異常を認めた.HBs抗原とHCV抗体は陰性で,飲酒歴があることより,アルコール性肝障害と考えられた.また,腹部超音波検査で,肝S6に径約20 mmの結節性病変を認め,精査が行われた.腹部血管造影,CT等の画像診断で混合型肝癌が疑われ,平成21年8月に肝S6の部分切除が施行された.切除標本の肉眼所見では同一結節に,黄白色調で被膜を有する部分と白色調で被膜はなく,浸潤性に増殖する部分を認めた.病理組織学的に被膜を有する部分は索状配列をなす中分化型肝細胞癌であり,被膜のない部分は線維性間質を有し,異型に乏しい腺管が吻合するように増殖する細胆管癌の所見であった.細胆管癌成分には免疫組織学的にCK7,19,EMAが強陽性で,一部にHepPar1,AFPが陽性であった.本症例は肝細胞癌と細胆管癌から構成される原発性肝癌と考えられ,混合型肝癌の組織発生解明に有用な症例と思われる.
  • 市川 仁美, 清水 恵理奈, 長澤 正通, 芳澤 社, 舘野 誠, 室久 剛, 熊岡 浩子, 佐藤 嘉彦, 鈴木 昌八, 谷岡 書彦
    原稿種別: 症例報告
    2010 年 51 巻 11 号 p. 674-680
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性,健診にて肝腫瘍を指摘された.血液検査では軽度の肝機能異常を認めたが,肝炎ウイルスマーカー,自己抗体は陰性であった.飲酒は80 g/日.腫瘍マーカーとしてPIVKAIIの上昇を認めた.腹部超音波検査ではS8に40 mm大の高エコー腫瘍を認め,CTおよびMRIで造影効果の乏しい脂肪成分に富んだ腫瘍と考えられた.肝細胞癌や血管筋脂肪腫などを疑い腫瘍生検を施行し,腫大した淡明な胞体を持つ細胞を認めた.clear cell typeの肝細胞癌が示唆されたため,肝S8部分切除術を施行した.腫瘍の多くは淡明な細胞質の豊富な細胞と脂肪化で占められ,一部に好酸性の胞体を有する異型細胞を認めたため,clear cell typeの肝細胞癌と診断した.
短報
  • 上嶋 一臣, 工藤 正俊
    原稿種別: 短報
    2010 年 51 巻 11 号 p. 681-683
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    Fifty patients with advanced hepatocellular carcinoma (HCC) were treated with sorafenib. In 25 of the patients, serum levels of protein induced by vitamin K absence or antagonist II (PIVKA-II) were evaluated at two time points (pretreatment and within 2 weeks from initial treatment). The time to progression in the "PIVKA-II-elevated group" (PIVKA-II more than two times pretreatment levels) was significantly longer than that in the "non-elevated group" (10.0 months [95%CI: 8.5-11.5] vs 5.7 months [95%CI: 3.3-8.1]; p=0.0296). It has been reported that hypoxia induces PIVKA-II in HCC cells. HCC treated with sorafenib are exposed to hypoxia caused by an antiangiogenic effect. Therefore, serum levels of PIVKA-II are a surrogate marker of tissue hypoxia and accordingly a predictive marker of treatment response by sorafenib.
速報
  • 多田 俊史, 熊田 卓, 桐山 勢生, 豊田 秀徳
    原稿種別: 速報
    2010 年 51 巻 11 号 p. 684-685
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    We investigated the pretreatment factors that were associated with the outcome of patients with hepatocellular carcinoma (HCC) who received the administration of sorafenib. Survival rates were compared according to the initial treatment for HCC, Child-Pugh class, extrahepatic metastasis, portal vein invasion, AFP, AFP-L3, and PIVKA-II, in 26 HCC patients who were administered sorafenib. Univariate analysis revealed the state of portal vein invasion (≤Vp2 vs. ≥Vp3) as a factor that was associated patient survival (p=0.016). By multivariate analysis, the state of portal vein invasion (hazard ratio, 4.631; 95% confidence interval, 1.541-13.921; p=0.006) was selected as factors that affected patient survival. The present result shows that portal vein invasion of ≥Vp3 indicated poor outcome in patients with HCC treated by sorafenib.
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