肝臓
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52 巻, 3 号
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症例報告
  • 小野原 伸也, 道免 和文, 田中 博文, 春野 政虎, 入江 真, 下田 慎治
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 52 巻 3 号 p. 163-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性.腹満感,体重増加を主訴に当科に紹介された.20歳代よりC型慢性肝炎を指摘され,29歳より糖尿病に対し,インスリン治療を受けていた.当科入院時には多量の腹水,食道静脈瘤を認め,総ビリルビン0.3 mg/dl,AST 25 IU/l,ALT 23 IU/l,アルブミン2.1 g/dl,クレアチニン2.4 mg/dl,尿蛋白陽性と低アルブミン血症,腎障害を認めた.血清クリオグロブリンは陽性を示した.HCV RNAはgenotype 2Aでウイルス量は5.1 logIU/ml を示した.クリオグロブリン血症を伴ったC型肝硬変と診断し,食道静脈瘤結紮術,腹水穿刺排液術を施行後,ペグインターフェロン/リバビリン併用療法を開始した.治療開始1カ月後にはHCV RNA,血清クリオグロブリンは共に消失し,尿中蛋白量も5.1 g/日から2.6 g/日へと半減した.24週の治療終了時にもHCV RNA,血清クリオグロブリンの消失が確認された.C型肝硬変,クリオグロブリン血症,クリオグロブリン血症に伴う腎障害にペグインターフェロン/リバビリン併用療法は有用であった.
  • 斎藤 広信, 高橋 敦史, 阿部 和道, 物江 恭子, 菅野 有紀子, 横川 順子, 大平 弘正
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 52 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル フリー
    症例1は65歳,女性.19年前,蝶形紅斑と光線過敏があり,抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性を認め,SLEと診断された.プレドニゾロン(PSL)内服にて症状は改善し,PSL 10 mg/日の隔日投与でSLEの活動性はなく経過していた.SLE診断時から肝機能異常があり,精査目的に当科へ紹介となった.胆道系酵素優位の肝障害,抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性,肝生検にてPBC(Scheuer分類のII期)と診断された.症例2は,55歳,女性.3年前,肝障害を認めAMA陽性からPBCが疑われたが肝生検は施行されなかった.以後,UDCA内服にて肝障害は改善していた.今回,関節痛と全身倦怠感があり腹水の精査目的に入院となる.腹水は滲出性腹水であり,関節炎,漿膜炎,抗DNA抗体陽性,抗Sm抗体陽性から,SLEと診断した.肝生検組織所見では,門脈域の軽度のリンパ球浸潤と線維性拡大を認めた.SLEに対してPSL 20 mg/日が追加され,関節痛の改善と腹水の消失が得られた.PBCとSLEの合併は稀であり,膠原病患者における肝障害を考える上で貴重な症例と考えられ報告した.
  • 大穂 有恒, 梶原 英二, 山下 尚毅, 牧野 一郎, 東 秀史, 鎌田 宏二, 下釜 達朗, 金城 満, 佐渡島 省三
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 52 巻 3 号 p. 176-183
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル フリー
    HBs抗原陰性化後に肝細胞癌を発症したHBVキャリア3症例を経験した.1例目は73歳男性.濃厚な肝細胞癌の家族歴を有する.15年前HBs抗原陽性を指摘され,4年3カ月前HBs抗原低力価陽性.CT&肝動脈造影による肝細胞癌診断時にHBs抗原陰性.肝表面は平滑で非腫瘍部の組織はA1F0.2例目は61歳男性.32歳より39歳までB型肝炎の増悪を繰り返し数年後HBe抗原セロコンバージョンし,ALTは正常を持続.1年1カ月前HBs抗原陰性,CTで肝内占拠性病変なし.右季肋部痛で発症し,CTと肝動脈造影にて肝細胞癌破裂と診断.3例目は69歳男性.8年前にHBV関連肝硬変と診断.1年2カ月前の採血でHBs抗原陰性.MRIにて径1.5 cmの肝細胞癌をみとめた.3例とも肝細胞癌診断時の血液検査はHBV既往感染の所見で,2例は慢性肝炎と肝硬変の基礎疾患を有するも,他1例はほぼ正常肝の無症候性キャリアからの発癌例であった.正常肝の無症候性キャリアも含め,HBs抗原陰性化後も肝細胞癌の出現例があることを念頭に置く必要がある.
  • 雨宮 秀武, 松田 政徳, 浅川 真巳, 細村 直弘, 藤井 秀樹
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 52 巻 3 号 p. 184-192
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌は腫瘍径1 cm前後まではほとんどが高分化型である.1 cmを越えると徐々に脱分化を起こすが,2 cm以下で低分化型が混在する症例は少ない.通常,中分化型以上は,CT/MRI検査で早期濃染腫瘤として描出される.低分化型の中には,早期濃染しない結節があり,肝癌診療ガイドラインに沿うと2 cm以下の場合,異型結節や高分化型肝細胞癌と誤診して,経過観察される可能性がある.今回我々は,CT/MRI検査で早期濃染を呈さない1.9 cmの未治療の肝細胞癌症例を経験した.MRI検査のT2強調画像,拡散強調画像の所見から,低分化型肝細胞癌と診断し,経過観察をせずに肝切除術を施行できた.T2強調画像と拡散強調画像は,境界域結節から肝細胞癌の分化度に相関するとされ,肝乏血性結節の診断に有用である.2 cm以下の肝乏血性結節の診断においては,低分化型肝細胞癌の存在を念頭において,検査を進めていくことが重要と考えた.
  • 矢根 圭, 辻 邦彦, 姜 貞憲, 松居 剛志, 志田 勇人, 金 俊文, 桜井 康雄, 児玉 芳尚, 真口 宏介
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 52 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.1988年よりC型慢性肝炎で当院外来通院中であった.2007年5月に3カ所の肝細胞癌(HCC)に対して経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した.治療10カ月後のdynamic MRI検査にて,S8の焼灼痕部が動脈相で均一に強く濃染する所見に変化した.血管造影検査を施行したところ,A8末梢に仮性肝動脈瘤の形成を認め,ゼラチンスポンジ細片およびmicrocoilを用いて塞栓した.本例は,RFA直後には胆道出血もなく画像所見でも明らかな動脈瘤を指摘できず,その後の経過中に画像所見が変化したことから,熱波及により遅発性に仮性肝動脈瘤が形成されたものと推察した.RFAの後期合併症として仮性肝動脈瘤も念頭におき,焼灼痕の画像所見に注意する必要があると思われた.
短報
  • 池田 弘, 詫間 義隆, 菊池 理, 守本 洋一, 下村 宏之, 山本 博, 友国 淳子
    原稿種別: 短報
    2011 年 52 巻 3 号 p. 201-203
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル フリー
    To clarify the significance of arterial blood resistance in viral acute hepatitis, we evaluated the pulsatility index (PI) with the pulsed-wave Doppler measurements.
    Mean PI was 1.23, 1.52 and 1.17, in hepatitis A, hepatitis B and hepatitis C, respectively. In hepatitis B, PI of the high viral load group was higher than that of the low viral load group (1.63 vs 1.08). PI was increased in fluctuating cases of hepatitis B and C. In some cases of hepatitis B, PI was decreased after the initiation of anti-viral drug.
    These data indicate that the measurement of PI is useful for the prediction of the prognosis of acute viral hepatitis and the choice of the antiviral drug.
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