肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
53 巻, 9 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 進藤 道子, El-Shamy Ahmed, 奥野 忠雄, 堀田 博
    2012 年 53 巻 9 号 p. 541-548
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/28
    ジャーナル フリー
    C型肝炎ウイルスによるC型慢性肝炎から肝癌発生にはウイルス側と宿主側の因子が関与していると考えられる.ウイルス側の因子としてはコア蛋白70番目および91番目のアミノ酸変異が報告されている.今回我々は,C型慢性肝炎時より肝癌発生まで平均7年以上経過を追えた49例の症例と,同時代に経過観察が可能でかつ肝癌を発生しなかった症例50例を対象にこれらコア蛋白のアミノ酸多様性の違いを明らかにすると同時に,肝癌発生前後での多様性の変化につき検討した.その結果,コア蛋白70番目のアミノ酸変異が肝癌発生に関与しているが,91番目のアミノ酸は関与していないことが示唆された.また,肝癌発生群にて肝癌発生前後におけるコア蛋白アミノ酸の多様性の変化は少なく,この領域は極めて保存性が高いと考えられた.多変量解析ではコア蛋白70番目のアミノ酸Glnとαフェトプロテイン(AFP)値が有意に肝癌と関連していた.
症例報告
  • 小栗 光, 鹿熊 一人, 林 伸一
    2012 年 53 巻 9 号 p. 549-557
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は神経線維腫症1型の74才,女性.腹部超音波検査にて多発性の肝嚢胞性病変を認め精査のため入院となった.腹部CT検査では肝両葉に多発する最大径15 cmまでの嚢胞性病変を認めた.多くの病変で嚢胞壁は薄く,病変のほとんどの部分が嚢胞状であり,造影では嚢胞壁が濃染された.また十二指腸下行脚に比較的強い造影効果を示し,内部に一部低吸収域を伴う3 cm大の腫瘍性病変を認めた.上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚の病変は陥凹を伴う粘膜下腫瘍であり,生検にて粘膜下組織にKIT染色陽性の紡錘形異型細胞を認め,十二指腸GISTと診断した.肝嚢胞性病変の嚢胞壁の生検では肝細胞類似の異型細胞を認め,肝細胞癌が疑われた.しかしながらKIT染色陽性であり,十二指腸腫瘍とは異なる病理学的形態を示したが,十二指腸GISTの肝転移と診断した.原発巣と転移巣が画像所見,病理所見とも大きく異なった点から示唆に富む症例と考え報告する.
  • 鈴村 和大, 平野 公通, 黒田 暢一, 飯室 勇二, 栗本 亜美, 中正 恵二, 藤元 治朗
    2012 年 53 巻 9 号 p. 558-563
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性で,C型肝炎に伴う肝細胞癌および混合型肝癌に対して肝S8切除術を施行.その後,経過観察中にAFP,PIVKA-IIの上昇および腹部CTで腹腔内に腫瘤性病変を指摘された.肝内および他臓器に転移を認めなかったため,孤立性の腹腔内リンパ節転移再発と診断しリンパ節摘出術を施行した.病理組織学的検査では混合型肝癌の肝細胞癌成分のリンパ節転移と診断された.術後はAFP,PIVKA-IIは低下し,術後約4カ月の現在,明らかな再発を認めていない.混合型肝癌術後の孤立性リンパ節転移再発に対し切除術を施行した1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 大江 晋司, 柴田 道彦, 本間 雄一, 日浦 政明, 阿部 慎太郎, 田原 章成, 原田 大
    2012 年 53 巻 9 号 p. 564-569
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性.多発肝細胞癌に対しTACEを繰り返していたが,肝細胞癌の増加増大を認めTACE不応例と判断した.肝予備能がChild-Pugh grade Aであったためソラフェニブ800 mg/日の投与を開始したが,投与開始1週間後にgrade 2の手足症候群,筋肉痛および肝酵素の上昇を認め,400 mg/日に減量した.投与2カ月後のCTでは,多発する腫瘍の更なる増加増大を認め,進行(PD)と判断した.投与2.5カ月後に再度のgrade 2の手足症候群のため200 mg/日へと減量した.投与4カ月後のCTでは,腫瘍は著明な縮小傾向を示し,部分奏効(PR)に転じた.また,AFP,PIVKA-IIも投与3カ月目までは増加傾向を示していたが,4カ月後には減少に転じた.投与9カ月後の現在までソラフェニブ200 mg/日での加療を継続し,RECIST基準にてPRが得られている.本例は投与4カ月後にPDからPRに転じ,少量にても著明な腫瘍縮小効果がみられている.
  • 坂口 達馬, 海堀 昌樹, 石崎 守彦, 松井 康輔, 松島 英之, 沖田 美香, 長尾 泰孝, 權 雅憲
    2012 年 53 巻 9 号 p. 570-574
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/28
    ジャーナル フリー
    肝動脈瘤は,画像診断の進歩により発見例が増加している.破裂例は致死率が高く,未破裂例の取り扱いが問題になる.今回,肝内側副血行路上に発生した仮性動脈瘤の1例を経験した.症例は67歳,男性.38歳時,胆嚢摘出術の既往あり.45歳時よりHCV抗体陽性のため近医で経過観察中であったが,USで肝腫瘤を指摘され当科紹介された.Dynamic CTで肝門部に接し動脈と等濃度で造影される結節像を認め,肝動脈瘤と考えられた.血管造影では右肝動脈は造影されず,左肝動脈から右葉への側副血行路上に径8×5 mmの瘤形成を認めた.経カテーテルアプローチは血管の蛇行のため困難であり,開腹術を選択した.動脈瘤は門脈臍部右側に認められ,流入・流出路を結紮し瘤を摘出した.病理組織検査で中膜の弾性線維と平滑筋が萎縮,欠損しており仮性動脈瘤であった.肝内側副血行路上に発生した動脈瘤は極めて稀であり,その成因および治療適応について若干の文献的考察を加え報告する.
feedback
Top