肝臓
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54 巻, 2 号
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症例報告
  • 日高 聡, 平岡 淳, 清水 祐宏, 今井 祐輔, 宇都宮 大貴, 達川 はるか, 二宮 朋之, 道堯 浩二郎
    2013 年 54 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性.検診にてγ-GTP高値を指摘され,近医で腹部超音波検査を施行.肝内に多発する腫瘤を指摘され精査加療目的にて当科紹介受診.CT検査では肝内に多発する腫瘤および肺野に小結節を認めた.PET-CTにて肝内にFDGの集積を伴った腫瘤が多数見られた.肺野の多発小結節にはFDGの集積はなかったが転移性肺腫瘍が疑われた.画像診断では確定診断がつかず,経皮経肝エコーガイド下肝腫瘍生検を施行し肝原発類上皮血管内皮腫と診断した.IL-2による治療を開始した.重篤な副作用はなく,治療開始後9カ月進行はみられず,治療継続中である.肝原発類上皮血管内皮腫は稀な疾患であり治療法が確立しておらず,症例のさらなる蓄積が必要であるが,IL-2による治療は治療選択の1つとなり得ると考えられた.
  • 佐藤 里映, 和栗 暢生, 荒生 祥尚, 五十嵐 俊三, 薛 徹, 佐藤 宗広, 相場 恒男, 米山 靖, 古川 浩一, 杉村 一仁, 五十 ...
    2013 年 54 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性.2003年に近医のCTで肝S2に20 mm大の血管腫を指摘され,フォローされていた.2009年にS2背側の別部位に嚢胞様腫瘤を指摘され,2011年に53 mmに増大したため当科を紹介受診.その時点でフォローされていた血管腫は画像上消失していた.増大傾向の腫瘤は単純CTで低吸収,内部は辺縁主体に不均一な造影効果を認めた.MRI T1強調in phaseで高信号,opposed phaseで低信号で脂肪に富む腫瘤であり,高分化脂肪肉腫と,脂肪成分を主体とする血管筋脂肪腫を鑑別に挙げた.明らかな増大傾向で5 cmを超えることを根拠に,左葉外側区域切除術を施行,病理学的に脂肪成分優位の血管筋脂肪腫と確定診断した.増殖能の高い腫瘍と推測されたが,Ki67陽性細胞は低頻度で,増大の主体は成熟脂肪組織であった.発生初期からの増大する経過を追えた報告はほとんどなく,貴重な症例と考え報告する.
  • 小林 知樹, 川上 由育, 平松 憲, 瀧川 英彦, 野中 裕広, 田中 未央, 苗代 典昭, 中原 隆志, 本田 洋士, 宮木 大輔, 長 ...
    2013 年 54 巻 2 号 p. 120-127
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.タイに仕事で出張中に現地女性と性交渉を行った.帰国後,発熱,黄疸,腹部膨満を主訴に近医受診.肝機能障害,腹水貯留を指摘され,急性肝炎の診断で入院となった.HCV抗体陽性,HCV RNA陽性および他のウイルスマーカー陰性よりC型急性肝炎と診断した.HCVゲノタイプ3a,IL28B遺伝子多型(rs8099917)メジャーアリル(TT)であり,HCVの自然排除およびIFNの高い治療効果が期待された.しかし,その後HCVは自然排除されず,持続感染を認めたが,PEG-IFNα2b/RBVの24週投与にてSVRを達成した.IL28B遺伝子多型の測定はC型急性肝炎の治療方針の決定において有用となる可能性があるが,ゲノタイプ3型における測定の意義については今後の症例の蓄積と検討が必要と考えられた.
  • 相原 司, 飯田 洋也, 友松 宗史, 前田 晃宏, 別府 直仁, 吉江 秀範, 生田 真一, 木村 文彦, 柳 秀憲, 山中 若樹
    2013 年 54 巻 2 号 p. 128-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    症例は70代男性.C型慢性肝炎合併.肝細胞癌に対し2003年10月から2010年9月までに4度の手術療法を施行後,肝十二指腸間膜リンパ節再発と胆管腫瘍栓による閉塞性黄疸が出現し,内視鏡的胆道ドレナージ術を施行.血清総ビリルビン(T-Bil)値がドレナージにより18.6 mg/dlから7.5 mg/dlに低下した後,腹部CTで腫瘍増大傾向を認め,黄疸発症前はChild-Pugh分類でAに相当し肝予備能は良好であったため,ソラフェニブを投与(800 mg/日)開始した.その後黄疸は改善し,ソラフェニブ投与3カ月で,腹部CT上リンパ節転移巣は縮小し,7カ月でAFPは10 ng/mlに減少し,腹部CTではmRECIST基準でPRとなり12カ月でRECIST,mRECIST基準ともにPRとなった.良好な肝予備能を背景とした肝に急性発症した閉塞性黄疸合併肝細胞癌症例において胆道ドレナージによる減黄が確認されれば,T-Bil値が適応基準外でもソラフェニブの投与を一律に排除すべきではない.
  • 伊藤 勝彦, 近藤 福雄, 大多和 哲, 石井 隆之, 清水 善明, 小川 清, 岸 宏久, 小豆畑 康児, 宮崎 勝
    2013 年 54 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性.心窩部痛にて紹介受診となった.腹部Dynamic CTにて肝巨大腫瘍を認めた.腫瘍中心部分は造影されず,腫瘍内周辺部が不規則に造影されていた.肝細胞癌の可能性を否定できず,かつ腫瘍からの出血の可能性も考えられたため肝左葉切除術を施行した.腫瘍は被膜に覆われ境界明瞭であり,腫瘍中心部には血腫を認めた.肝細胞腺腫に特有の臨床所見が無いこと,組織所見において血腫周囲の腫瘍内充実性部分は良性肝組織であり,結節内や被膜内に異常門脈域を認めたことから,血流異常に基づく過形成結節が考えられた.しかし最終的には,免疫組織染色におけるLiver-type fatty acid binding proteinの所見により肝細胞腺腫と診断した.
    本例は,最終的に肝細胞腺腫と診断されたものの,結節内や被膜内には異常門脈域が存在すること,経口避妊薬などの肝細胞腺腫関連因子を伴っていないこと等,従来の肝細胞腺腫の概念とは必ずしも一致せず,新たな免疫組織学的診断法と従来の疾患概念の相違を示す,示唆に富む例と考えられた.
  • 元尾 伊織, 高原 照美, 松井 恒志, 川部 秀人, 河合 健吾, 田尻 和人, 時光 善温, 安村 敏, 峯村 正実, 三輪 重治, 常 ...
    2013 年 54 巻 2 号 p. 143-151
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    症例1は79歳男性.膀胱癌術前にS4に10 mm大の肝腫瘤を認めた.ダイナミックCT早期相で高吸収,平衡相でやや低吸収を示した.EOB造影MRIでは早期相でシャントを伴う濃染を認め,門脈相から肝細胞相で集積の低下が認められた.肝細胞癌が疑われたが,膀胱癌の転移を否定できず,肝生検を施行して肝血管筋脂肪腫と診断された.症例2は40歳男性.S6に15 mm大の肝腫瘤を認めた.ダイナミックCT早期相で高吸収,門脈相で周囲にコロナ様濃染を認め,平衡相で低吸収を示した.EOB造影MRIでは腫瘤は早期相で濃染し,門脈相にて周囲にコロナ様濃染が認められ,肝細胞相で集積の低下を認めた.肝細胞癌と考えられ,腹腔鏡下肝部分切除術が施行されたが,病理で肝血管筋脂肪腫と診断された.OATP免疫染色では,腫瘍部,線維性被膜は陰性で周囲肝細胞膜は陽性であった.CD34免疫染色では,腫瘍部は介在する血管内皮が陽性で,線維性被膜内の小血管と周囲肝細胞内の拡張した血管も陽性であった.
  • 山崎 大, 辻 邦彦, 志田 勇人, 友成 暁子, 青木 敬則, 姜 貞憲, 桜井 康雄, 児玉 芳尚, 真口 宏介, 瀧山 晃弘, 篠原 ...
    2013 年 54 巻 2 号 p. 152-160
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.肝腫瘤の精査加療目的で入院.腹部USでは肝右葉に境界明瞭で14 cm大の類円形の腫瘤像を認め,内部は低エコーと高エコーが混在し,acoustic shadowを伴う多数の石灰化がみられた.腹部CTでは薄い被膜を伴い膨張性発育を示し,辺縁に造影される結節状の充実部分を有するが,腫瘤の大部分は造影されない低吸収域で,内部に著明な石灰化が認められた.他臓器に原発巣はなく,肝原発の悪性腫瘍として肝右葉切除術を施行した.病理学的には,好酸性に富む小型の腫瘍細胞が索状から充実性に増殖し,腫瘍内部に広範な壊死や粘液腫様間質,石灰化巣が混在する所見が認められた.免疫組織化学的には,SynaptophysinとCD56が強陽性であり,肝原発神経内分泌腫瘍(PHNET)と確定診断された.MIB-1 indexは大部分が2%程度であるが,一部で5-10%の部分もあり,PHNET grade 2と診断した.術後12カ月経過した現在,再発所見を認めず外来通院中である.著明な石灰化を伴ったPHNETは極めて稀と考え,報告する.
短報
  • 平岡 淳, 清水 祐宏, 白石 明子, 今井 祐輔, 宇都宮 大貴, 達川 はるか, 山子 泰加, 二宮 朋之, 廣岡 昌史, 道堯 浩二郎
    2013 年 54 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/05
    ジャーナル フリー
    Criteria for switching from transcatheter arterial chemo-embolization (TACE) to sorafenib or other chemotherapy in patients with hepatocellular carcinoma (HCC) resistant to repeated TACE have not been established. Herein, we propose an easy to implement method for such determination. One hundred six patients with advanced HCC (beyond Milan criteria) without venous invasion by the tumor or extra-hepatic metastasis and with good liver function (Child-Pugh A class) who were treated by repeated TACE from 2000 to 2011 were analyzed. We combined the scores for the tumor markers alpha-fetoprotein (AFP, ≥100 ng/mL), fucosylated AFP (AFP-L3, ≥10%), and protein induced by vitamin K absence-II (PIVKA-II, ≥100 mAU/mL) into a single prognostic marker, then added up the positive factors in each case. In patients with a score under 2, TACE could control HCC. When HCC is not controlled by TACE after the patient has a score of 2 or more points, switching to the next therapy should be considered.
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