肝臓
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55 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 小木曽 智美, 橋本 悦子, 徳重 克年, 千嶋 さやか, 児玉 和久, 戸張 真紀, 松下 典子, 谷合 麻紀子, 鳥居 信之, 白鳥 敬 ...
    2014 年 55 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2014/04/18
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における,性別・年齢の関与を明らかにするため,組織学的に診断されたNASH 691例を55歳を境に年齢(若年Y・高齢E)と性別(男M・女F)で4群に群別し,臨床病理学的特徴,脂肪測定,血清adipocytokine,遺伝的因子を比較検討した.高度肥満例は若年群で有意に高頻度であった(高度肥満YM 10%,EM 2%,YF 13%,EF 5%).男女とも高齢になると生活習慣病の合併,線維化の進行を認めた.CTによる脂肪測定では,性別・年齢で内臓脂肪面積は有意差を認めなかった.肝硬変合併に関与する多変量解析では,4群全てにおいて脂質異常症非合併が肝硬変合併の有意因子として抽出された.さらにEF群では糖尿病が有意な危険因子であった.adiponectinはEF群で高値で,血清IL-6はYF群で低値であった.NASHでは性・年齢により病態が異なり,これらを考慮して診療にあたる必要がある.
症例報告
  • 横井川 規巨, 栁田 英佐, 北出 浩章, 圦 貴司, 權 雅憲
    2014 年 55 巻 4 号 p. 206-213
    発行日: 2014/04/18
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性.C型慢性肝炎に対してIFNの治療歴あり.上腹部の不快感,38度台の発熱を認めたため当院を受診し腹部CT検査にて肝S8に直径約8 cmの肝腫瘍を認め肝膿瘍の疑いにて加療を開始した.腹部超音波検査では同腫瘍はhypoechoicであり辺縁が不整形で内部に一部hyperechoicな領域を認めた.ドレナージは行わず抗生剤で経過観察したが解熱傾向を認めなかったため肝生検を行ったところ低分化型肝細胞癌の診断であり当科で肝前区域切除術を施行した.術中所見は肝S8に肝腫瘍を認めた他,肝門部と胃小弯にリンパ節の腫脹を認め肝細胞癌の転移であった.病理組織検査では単純結節周囲増殖型の肉腫様変化を伴う肝細胞癌であった.術後2カ月目の腹部CT検査で胃小弯側から膵背側のリンパ節の腫脹,腹水の貯留を認め再発と診断しソラフェニブ400 mg/日を開始し経過観察を行った.前治療のない肉腫様肝癌の報告は少なく,今回急速な進展,再発を示した肉腫様肝癌を経験したので報告する.
  • 丸山 康弘, 吉澤 要, 鶴田 史, 丸山 雅史, 藤森 一也, 滋野 俊, 福島 万奈, 上原 剛, 森田 進, 城下 智, 梅村 武司, ...
    2014 年 55 巻 4 号 p. 214-220
    発行日: 2014/04/18
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.めまいに対して柴苓湯を処方され,29日目に食欲不振,嘔気が出現し,肝胆道系酵素の著明な上昇を認め入院となった.ウイルス感染,自己免疫性肝疾患は否定的であり,病歴から薬物性肝障害を疑った.DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリングでは9点であった.薬物リンパ球刺激試験(DLST)で柴苓湯が陽性となり,柴苓湯による肝障害の可能性が高いと判断した.グリチルリチン製剤投与で肝機能は改善した.1年半後,右季肋部痛に対して,柴胡桂枝湯を処方され,14日後に食欲不振,嘔気が出現し,再度の肝胆道系酵素の上昇のため入院となった.DDW-J 2004スコアリングでは11点であった.両漢方薬の共通生薬成分によるDLSTを行ったところ,オウゴン,カンゾウで陽性あり,これらの成分が肝障害に作用した可能性が示唆された.漢方薬による薬物性肝障害の既往歴がある際の漢方薬の投与は,成分を確認した上で慎重に行うべきである.
  • 西田 久史, 波多野 悦朗, 冨山 浩司, 瀬尾 智, 田浦 康二朗, 藤本 康弘, 水本 雅己, 上本 伸二
    2014 年 55 巻 4 号 p. 221-227
    発行日: 2014/04/18
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性,心窩部痛と腹部腫瘤触知を主訴に前医を受診し,CTにて門脈内腫瘍栓(Vp4)を伴う高度進行肝細胞癌と診断された.当科入院後,直ちに肝動脈注入化学療法(FP療法:1クール,IFN併用5FU療法:1クール)を開始したが,治療後のCTにて主病巣と腫瘍栓は増大傾向であったため,肝動脈注入化学療法は中止し,ソラフェニブを導入した.ソラフェニブ導入10日目に腫瘍崩壊症候群による腎不全を認め,ソラフェニブを中止するとともに,緊急血液透析を施行した.13日目に多形紅斑の出現も認めたが,その後腎不全と多形紅斑は徐々に改善した.28日目のCTでは主病巣の広範な壊死所見を認め,ソラフェニブによる抗腫瘍効果と考えられた.31日目に減感作療法を開始し,ソラフェニブを再開した.再開後は腫瘍崩壊症候群,多形紅斑を再燃することなく,ソラフェニブ継続中である.
  • 山下 尚毅, 大穂 有恒, 山﨑 晃裕, 黒川 美穂, 金城 満, 梶原 英二
    2014 年 55 巻 4 号 p. 228-234
    発行日: 2014/04/18
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.初診時に門脈本幹の腫瘍塞栓を伴い肝右葉をほぼ占拠する多結節状の巨大な肝細胞癌を認めた.肝動注リザーバーを留置しlow-dose FP療法施行するも奏功せず,ソラフェニブ400 mgより開始した.投与6日目に肝逸脱酵素上昇を認めソラフェニブ中止.7日目の造影CTにて腫瘍に一致して広範な壊死を認めた.8日目肝逸脱酵素は著明に上昇し,腎機能悪化,尿酸上昇を認め,腫瘍崩壊症候群(TLS)と診断した.急性腎不全に対して血液透析を導入し,高尿酸血症に対してはラスブリカーゼを投与した.腫瘍マーカーは著明に低下し,治療開始40日目には血液透析から離脱できた.しかし長期臥床・食事摂取不良にて全身状態が徐々に悪化し75日目に死亡した.ソラフェニブによるTLSは稀な合併症であるが,発症すると予後不良であり,治療前のリスク管理により発症を予防することが重要であると思われた.
  • 松本 修一, 滝澤 直歩, 児玉 亘弘, 松林 直
    2014 年 55 巻 4 号 p. 235-239
    発行日: 2014/04/18
    公開日: 2014/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.4年前に他院でアルコール性肝硬変と診断された.今回は食道静脈瘤出血のため当院へ入院となった.以前より労作時の息切れや呼吸困難などの自覚症状の訴えはなかったものの入院時より低酸素血症を認めた.胸部CTで肺血管が抹消まで追跡可能であり,microbubbleを用いた造影心エコーで通常は認めない左心系にもbubbleを認めたことから,肝肺症候群による低酸素血症と診断した.酸素投与にて低酸素血症の改善を認めたため,断酒を継続しながら,長期酸素療法を施行したところ,半年後にはChild-Pughスコアは7点から5点に改善し,2年後には低酸素血症も改善して長期酸素療法から離脱することが出来た.本症例では断酒と酸素投与により肝機能が改善し,肝肺症候群による低酸素血症も改善したと考えられた.
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