肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
55 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 四十物 由香, 鴨志田 敏郎, 丸山 常彦, 岡 裕爾
    2014 年 55 巻 8 号 p. 454-458
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/09/03
    ジャーナル フリー
    C型慢性肝炎の治療はテラプレビルの登場に伴い,短期間で高い有効性が得られるようになった.その一方で,重篤な皮疹や貧血等の副作用や治療の煩雑さが問題になっている.今回,当院において3剤併用療法を導入された患者36人を対象として有効性,安全性及びチーム医療の有用性を検討した.治療中断は8/36件(22.2%)で良好であった.薬剤師の医師への提案は549/563件(97.5%)が採択された.副作用に対する支持療法施行後は脱落例においても全て改善を認めた.肝臓専門医へのアンケートでは「医師の外来負担軽減」での評価が高く,専門医全員が薬剤師外来を「評価できる」と回答した.以上の結果より,薬剤師外来は有用と考えられる.
  • 足立 卓哉, 藤岡 真一, 下村 泰之, 川上 万里, 大澤 俊哉, 糸島 達也
    2014 年 55 巻 8 号 p. 459-467
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/09/03
    ジャーナル フリー
    肝硬変患者における高アンモニア血症は日常診療で遭遇する機会は多く,しばしば治療に難渋する.カルニチン補充療法が高アンモニア血症に対し有用であるとの報告が近年増えてきている.2012年2月から2013年1月に当院で高アンモニア血症に対してレボカルニチン製剤を用いた21例について検討した.Child-Pugh scoreが10点以上の症例で,有意に1カ月後の血清アンモニア値が低下していた(p=0.0038).また,血清アンモニア値が低下した群(以下低下群)では,低下しなかった群(以下非低下群)に比べて栄養の指標を表す血清アルブミン値,血清総コレステロール値,血清コリンエステラーゼ値がやや低い傾向にあり,大腰筋の断面積も,低下群でやや小さい傾向にあった.Child-Pugh score10点以上の症例で,栄養摂取不良例や筋力低下例でカルニチン補充療法により血清アンモニア値を下げる効果が期待できる可能性が示唆された.
症例報告
  • 山崎 修, 岡 博子, 新川 寛二, 倉井 修
    2014 年 55 巻 8 号 p. 468-478
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は92歳,男性.2005年1月,C型慢性肝炎を背景とする径3.8 cmの胆管内発育型肝細胞癌に対してTACE後に肝後区域切除が施行された.中分化型肝癌で胆管腫瘍栓もほぼ壊死に陥っていた.2006年8月,胆管前枝から肝門部におよぶ腫瘍栓に対して肝前区域切除を施行した.切除標本内に径1.5 cmの結節型を呈する中分化型癌と連続する胆管腫瘍栓を認めた.2008年7月,肝S4の径1.5 cmの再発結節に対してRFAを施行した.2010年3月,肝門部胆管閉塞を発症しまずPTCSにより腫瘍栓を確認した.TACEを施行し2週間後に再度観察したところ腫瘍栓は完全に壊死に陥りその後脱落した.2012年9月,肝門部胆管腫瘍栓の再発を認め,2012年10月,2013年4月と8月にTACEを施行した.しかし腫瘍栓の増大とPTCD後も尾状葉胆管枝の拡張を認めた.2013年9月,尾状葉切除と胆管腫瘍栓摘出術を施行したが孤立性の胆管腫瘍栓であり肝内腫瘍はなかった.これまでに経験した胆管内発育型肝癌は非切除29例と肝切除7例でMSTはそれぞれ4.5カ月と22.9カ月であり予後不良であった.自験例は超高齢者であるが3回の肝切除を軸とする集学的治療により長期生存がえられたと考えられる.
  • 宮田 央, 宮田 學
    2014 年 55 巻 8 号 p. 479-487
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/09/03
    ジャーナル フリー
    肝肺症候群は肝硬変症例に合併してみられるが,その頻度は4%から80%と報告によりばらつきが大きい.今回我々は,肝機能の改善に伴い呼吸機能が著明に改善した肝肺症候群の1例を経験した.症例は65歳女性.飲酒歴は無く,ALT優位の肝障害で,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)として加療中,初診から7年後に突然チアノーゼと低酸素血症をきたし,肝肺症候群の診断で在宅酸素療法(HOT)を開始した.開始時,FIB4 index等の肝線維化指標からF3-F4の高度線維化を呈していたと考えられた.HOT開始後2~3年をピークに肝線維化指標は改善を示し,それに伴い呼吸機能が改善し,開始後5年で中止できた.またHOT施行中,非腫瘍性にPIVKA IIが上昇する現象が観察されたが,呼吸機能改善に伴い正常化した.高度線維化を伴ったNAFLDが原因の肝肺症候群は,発症後比較的短期間のうちに肝臓の線維化進展が阻止できれば,可逆的な場合がある.
  • 達川 はるか, 平岡 淳, 名和 由一郞, 相引 利彦, 奥平 知成, 白石 明子, 川村 智恵, 山子 泰加, 畔元 信明, 二宮 朋之, ...
    2014 年 55 巻 8 号 p. 488-494
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/09/03
    ジャーナル フリー
    65歳男性,C型慢性肝炎(F3-4)にて2005年にペグインターフェロンα-2b,リバビリン療法を受けたがウイルスは消失しなかった.2010年S5, S6の肝細胞癌に対して当院にてラジオ波治療を行った.その後,近医にて肝細胞癌再発・肝硬変進行予防の目的でインターフェロンα-2b(300万単位/回)を週2回投与されていた.2012年7月に持続する黒色便,気分不良で当院に救急搬送された.来院時のHbは6.0 g/dl,血小板が0.2万/μLであった.緊急上部消化管内視鏡では食道胃静脈瘤はみられたが,明らかな出血部位なかった.血小板関連IgGが99.3 ng/107 cellsと増加,骨髄穿刺にて巨核球数は正常範囲であり,特発性血小板減少症(ITP)と診断した.ステロイドパルス治療を行ったが血小板数の回復は得られず.トロンボポエチン受容体作動薬を投与して血小板は7万/μLに回復して,現在外来通院中である.稀であるがC型慢性肝疾患におけるインターフェロン投与中に発生するITPは重要な病態であると考え報告した.
  • 堤 菜津子, 福田 知広, 大野 恵子, 角田 裕也, 伊藤 剛, 今村 諭, 田村 寿英, 長久保 秀一, 諸星 雄一, 小池 祐司, 藤 ...
    2014 年 55 巻 8 号 p. 495-502
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性.糖尿病性腎症にて維持透析中の患者で,大動脈弁狭窄症術後の経過観察目的で当院心臓血管外科に通院していた.経過観察中に施行した腹部単純CT検査上,肝S1, S7に約2 cm大の多発性腫瘍を認めたため,当科を紹介受診した.腹部血管造影検査の所見より肝紫斑病と診断して経過観察していたが,9カ月後に腹腔内出血を認めて緊急入院となった.保存的治療を継続したが肝不全の進行により第29病日に死亡した.病理解剖を施行したところ,肝血管肉腫の診断であった.肝紫斑病は良性疾患であるが肝血管肉腫は確立された治療法のない予後不良の悪性疾患であり,治療方針も根本的に異なる.両者とも肝腫瘍の鑑別に含まれる疾患であり,生検によるリスクは考えられるが可能な限り病理学的に確定診断をつける必要があると考えられた.
  • 筒井 りな, 永松 洋明, 水上 直久, 渡辺 次郎, 出口 章広, 森田 俊, 小野 典之
    2014 年 55 巻 8 号 p. 503-511
    発行日: 2014/08/20
    公開日: 2014/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は78際女性.B型肝炎治療中に腹部超音波検査および腹部造影MRI検査にて,肝S1とS6に腫瘤を指摘された.前医にて肝細胞癌(HCC)と診断のもと,2013年8月に肝動注化学塞栓療法(TACE)が施行された.治療1カ月後のCT検査にて,肝S1 HCCへのリピオドール沈着が不良であり,追加加療目的で当院へ紹介となった.2013年10月,血管造影検査を施行した.肝S1 HCCは右下横隔動脈からの血液供給を受けており,同血管よりTACEを施行し,局所制御能を高めるため,同腫瘍に対し,体幹部定位放射線治療(SBRT)を行った.SBRT後は特に有害事象なく,治療終了後に退院となった.退院後21日目に食思不振にて緊急入院となり,CT検査にて多発肺転移,鎖骨上窩リンパ節転移,腹膜播種,臍転移,多発肝内再発の所見を認めた.全身状態は急激に悪化し,初回TACE施行後3カ月半で永眠された.TACE併用SBRTの有用性が報告される中,治療後に予後不良な経過を辿った1例を経験した.文献的報告を加え報告する.
feedback
Top