肝臓
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57 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 杉原 誉明, 孝田 雅彦, 岡本 敏明, 三好 謙一, 的野 智光, 法正 恵子, 岡野 淳一, 磯本 一, 堤 玲子, 江原 由布子
    2016 年 57 巻 11 号 p. 571-576
    発行日: 2016/11/20
    公開日: 2016/11/29
    ジャーナル フリー

    薬物アレルギーの検査であるリンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test;DLST)の陽性率は,約4割と報告されているが,偽陽性などの問題がある.今回,薬物性肝障害,薬物アレルギーの患者において2回目のDLSTが起因薬物同定に有用か検討した.対象は2009年から2015年の間に当院で同じ薬物に対して2回DLSTを行った症例を抽出し,後ろ向きに検討した.2回目の測定までは,中央値で82(27-247)日であった.1回目で,原因薬物の同定感度は53.9%,特異度61.5%,陽性適中率(PPV)58.3%,陰性適中率(NPV)57.1%であったが,2回目では感度87.5%,特異度72.2%,PPV58.3%,NPV92.9%であり,感度・特異度,NPVが向上した.DLST2回目測定は起因薬物同定に有用と考えられた.

症例報告
  • 世古口 悟, 長尾 泰孝, 竹村 圭祐, 山口 勝利, 提中 克幸, 山田 展久, 森本 泰隆, 磯崎 豊, 小山田 裕一, 石井 博道, ...
    2016 年 57 巻 11 号 p. 577-585
    発行日: 2016/11/20
    公開日: 2016/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は63歳,男性.HBV既感染,高血圧症,高脂血症,糖尿病で当科に通院中であったが,超音波検査で肝腫瘤を指摘された.血液生化学検査で,ALT 43 U/lと軽度の肝障害を認めたが,腫瘍マーカーは正常範囲内であった.腹部造影CT検査およびEOB造影MRI検査所見を行い肝細胞癌と診断した.肝S6亜区域切除術を施行した際に,術前指摘されていた腫瘤の近傍に,偶然4 mmの腫瘤性病変を認めた.病理組織検査で寄生虫感染が疑われ,conventional PCRによる遺伝子解析を行い, Anisakis pegreffiiによる肝アニサキス症と診断した.肝表面に近く,造影CTやMRI検査で造影効果を示さない肝腫瘤性病変の鑑別疾患の一つとして,肝アニサキス症はまれであるが重要と考え報告する.

  • 福岡 佳奈子, 道堯 浩二郎, 壷内 栄治, 金藤 美帆, 相引 利彦, 奥平 知成, 山子 泰加, 宮本 勇治, 富田 英臣, 須賀 義文 ...
    2016 年 57 巻 11 号 p. 586-591
    発行日: 2016/11/20
    公開日: 2016/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は71歳男性.1994年にC型慢性肝炎(遺伝子型1型)を指摘.2015年12月よりレジパスビル/ソホスブビル併用療法を開始した.治療開始から5日目に飲酒し,翌日早朝より39℃を越える発熱と,内服開始前にみられなかった不整脈が出現した.血液検査では白血球,CRPの上昇以外に大きな変化はなく,数時間で解熱して不整脈も消失した.1日のみ休薬し,翌日にも発熱,不整脈はなかったため治療を再開した.本例では過去に飲酒後にこのような一過性の高熱がみられたことはなく,また不整脈を自覚したこともなかった.これらの症候の出現にレジパスビル/ソホスブビル投与中の飲酒が影響した可能性が否定できないため,今後同様の症例の有無を調査する必要があると思われた.

  • 山崎 拓也, 渡邊 真彰, 岡田 武倫, 安達 快, 武田 果林, 長谷川 力也, 金子 亨, 高橋 晃彦, 大塚 俊和, 南野 勉, 田原 ...
    2016 年 57 巻 11 号 p. 592-597
    発行日: 2016/11/20
    公開日: 2016/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は80歳女性.肝右葉に直径15 cm超の単純性肝囊胞を有していた.無症状のため無治療で経過観察の方針としていたが,右腹部打撲後に腹部膨満感が出現したため来院した.CTで肝囊胞を内包する肝右葉前後上亜区域横隔膜下の破裂と血性腹水を認めた.ショックに陥ることはなかったが,貧血が進行したため輸血を行い,待機的に腹部血管造影を施行した.血管外漏出像はなかったが,右肝動脈前後区域枝末梢に濃染部をみとめ,同部を出血部位と判断しそれぞれ経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)を施行した.出血は制御され入院第15病日に退院した.以後の経過観察で,肝囊胞は破裂部が開存した状態で縮小した.本症例は,単純性肝囊胞の破裂,出血に対する治療として,非手術的治療であるTAEが一治療選択肢となることを示唆した.また破裂,TAE施行後の肝囊胞縮小の機序について考察を加えた.

  • 平石 哲也, 奥瀬 千晃, 石井 俊哉, 辻 顕介, 近江 亮介, 佐藤 望, 末谷 敬吾, 中津 智子, 石郷岡 晋也, 池田 裕喜, 渡 ...
    2016 年 57 巻 11 号 p. 598-605
    発行日: 2016/11/20
    公開日: 2016/11/29
    ジャーナル フリー

    症例は64歳の女性.C型慢性肝炎に対して2015年2月13日よりダクラタスビル・アスナプレビル併用療法を開始した.3月1日(治療開始後17日目)から発熱を認め,翌日には軽度のLDH上昇を呈していたが,慎重な観察のもと治療は継続された.しかしながら,3月5日(治療開始後21日目)に手足の脱力を訴え,血液検査において横紋筋融解症が疑われ精査加療目的にて入院となった.入院後,ダクラタスビル・アスナプレビル併用療法は速やかに中止され,横紋筋融解症に対する輸液による保存的治療が開始された.以後,血液検査所見および自覚症状は経時的に改善し退院となった.また,ダクラタスビル・アスナプレビル両剤中止にもかかわらずHCV RNAは治療終了後24週間の持続陰性を呈し,最終的にはSustained Virological Response(SVR)24に至った.

  • 宮崎 慎一, 野田 裕之, 森田 照美, 甲斐 弦, 大廻 あゆみ, 小林 富成, 長嶋 茂雄, 高橋 雅春, 水尾 仁志, 岡本 宏明
    2016 年 57 巻 11 号 p. 606-613
    発行日: 2016/11/20
    公開日: 2016/11/29
    ジャーナル フリー

    鳥取県の山間部に居住する92歳の一人暮らしの男性が急性E型肝炎を発症した.患者には海外渡航歴や輸血歴はなく,発症前3カ月以内の豚レバーやホルモン,猪や鹿などの動物の肉や内臓の喫食歴,魚介類の生食の既往も無かった.しかし,7~8年前から猪胆(乾燥した猪の胆囊)を猟師より入手し,胆囊粉末を冷水に溶き,その胆汁液を生薬として飲用していたことが判明した.飲み残しの胆汁液はなかったが,保管されていた猪胆18個中7個からHEV RNAが検出され,患者から分離された3a型HEVと塩基配列が99.8%一致するHEVが同定された.加えて,リン酸緩衝液で溶出した10%胆汁液のHEV RNAタイターが4.6×105 copies/mlに達するものもあり,猪胆からの感染が強く疑われた.猪の肉やレバーの喫食後のE型肝炎症例はこれまでに多く報告されているが,猪胆が感染源と考えられる症例の報告は今回が初めてである.

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