肝臓
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58 巻 , 10 号
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総説
  • 中川 英刀
    2017 年 58 巻 10 号 p. 551-558
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    ゲノム解析技術の進歩によりがんの全ゲノム解読が可能となり,肝臓がんにおいては,平均1万カ所の変異があることが分かってきた.その中で,肝がんの発生と進展に関わるdriver変異としては,Wntシグナル,TP53,TERT,クロマチン調節因子の変異,そしてウイルスゲノムの組み込むなどが,高い頻度で起こっていることが明らかになった.また,変異の塩基置換パターンの解析により,アフラトキシンを始め様々な環境因子の曝露が肝がんの発生に関わっていることも明らかになりつつある.肝臓がんのゲノム異常ではActionabilityが少ないことから,ゲノム情報を用いた治療薬の選択を行うことは実現されていないが,今後,肝臓がんのゲノム情報と分子標的薬の効果などの臨床情報との関連解析がすすむことによって,既存の分子標的薬や化学療法の肝臓がんの適応拡大,およびその効果予測のバイオマーカーが同定でき,肝がんのPrecision Medicineの実践がすすんでいくものと期待される.

症例報告
  • 宮崎 勇希, 原 康之, 宮城 重人, 中西 史, 戸子台 和哲, 中西 渉, 村上 圭吾, 海野 倫明, 亀井 尚
    2017 年 58 巻 10 号 p. 559-566
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    症例は35歳女性.2015年11月,人間ドックでの超音波検査にて肝内側区域に径20 mmの低エコー腫瘤を指摘された.血液検査所見では腫瘍マーカーを含めて正常範囲で,肝炎ウイルスマーカーも陰性であった.単純CTでは肝S3/4境界部に低吸収の腫瘤を認め,動脈相で造影されず平衡相にかけて漸増性に造影されていた.また,腫瘤周囲の組織が動脈相で濃染され平衡相では低吸収であった.造影MRI検査では腫瘤は造影効果に乏しく,腫瘤周囲の組織は動脈相でのみ造影された.画像所見から良悪性の鑑別がつかず,肝左葉切除を行った.病理組織検査では異型に乏しいリンパ球が濾胞を形成しており,構造異型も認められずreactive lymphoid hyperplasia(RLH)の診断となった.本症例はこれまで報告されたRLHとは異なった画像所見を呈しており,また本邦における肝RLHの報告例としては最若年であった.

  • 廣澤 拓也, 森本 直樹, 三浦 光一, 渡邊 俊司, 津久井 舞未子, 村山 梢, 高岡 良成, 野本 弘章, 仲矢 丈雄, 大城 久, ...
    2017 年 58 巻 10 号 p. 567-573
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    症例は39歳男性.37歳時に食道静脈瘤破裂で他院入院の際,両側肺門リンパ節腫脹および肺野粒状影を認め,リンパ節生検で非乾酪性肉芽腫を認めたため,肺サルコイドーシスの診断となった.食道静脈瘤のフォローアップと門脈圧亢進症の原因精査目的に当科紹介となった.腹腔鏡検査では肝表面は広範に凹凸不整で辺縁は鈍であった.また肝表面には粒状の白色結節が多数見られ,肝辺縁で一部癒合し斑状であった.同時に施行した肝生検では,非乾酪性肉芽腫を認め,肝表面の所見と合わせて,肝サルコイドーシスの診断に至った.肉芽腫は門脈域に認めており,門脈の壁外性圧迫や閉塞により門脈圧亢進症を来したと推定された.ステロイドによる加療を開始し,1年近く経過しているが,肝障害は軽度改善し,食道静脈瘤は増悪なく経過している.肝サルコイドーシスに門脈圧亢進症を合併することは稀であり,腹腔鏡検査にて合併症なく診断できたので報告する.

  • 巽 亮二, 小関 至, 山口 将功, 木村 睦海, 荒川 智宏, 中島 知明, 桑田 靖昭, 大村 卓味, 髭 修平, 狩野 吉康, 豊田 ...
    2017 年 58 巻 10 号 p. 574-581
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    65歳男性.発熱,下痢を認め,2016年7月に当科受診した.造影CTにて肝S8に最大径49 mmの腫瘤を認め,同腫瘤より連続する静脈枝から中肝静脈と両肺動脈に造影欠損域を認めた.以上より,肝膿瘍,肝静脈血栓・肺動脈塞栓症の診断で入院となった.第1病日よりビアペネム投与を開始し,第3病日に播種性血管内凝固症候群を疑い,血栓・塞栓症の治療も兼ねてダナパロイドナトリウムを開始した.しかし,改善が乏しいことから第5病日に経皮経肝膿瘍ドレナージを施行し,ドレナージtubeを留置した.肝膿瘍の細菌培養が陰性であり,抗生剤の反応性が乏しいことからアメーバ性肝膿瘍を疑い,第6病日よりメトロニダゾール投与を開始したところ,病状の改善を認め,血中赤痢アメーバ抗体値の結果よりアメーバ性肝膿瘍と診断した.肝静脈内血栓症を伴うアメーバ性肝膿瘍では,肺動脈塞栓の合併を念頭においた診断,治療が必要と考えられた.

  • 橋口 正史, 玉井 努, 山﨑 成博, 長谷川 将, 藤崎 邦夫, 井戸 章雄
    2017 年 58 巻 10 号 p. 582-588
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    肝細胞癌症例の多くは肝硬変が背景にあり,肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization;TACE)後に胸腹水の貯留や浮腫をきたすことがある.また,TACEの際に使用する造影剤,抗癌剤等の薬剤は腎障害のリスクがあり,特にシスプラチンは腎毒性が強く,腎障害の予防としてhydrationが確立しているが,肝硬変症例では大量輸液は体液貯留につながる可能性がある.Tolvaptan(TLV)は選択的V2受容体拮抗薬で,腎機能悪化やNaの低下を起こしにくいとされる.体液貯留のリスクがある肝硬変合併肝細胞癌症例のTACE直後にTLVを投与したところ,術後尿量が増加し,体液貯留を抑制し,eGFRの維持が可能であった.

    TVLは,腎保護や体液貯留予防として,TACE時のhydrationにおける有効な利尿薬となりうる可能性が示唆された.

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