B型肝炎を背景とする肝細胞癌症例の肝機能評価におけるALBI gradeの予後予測能を,Child-Pugh分類と比較した.HBs抗原陽性の初発肝細胞癌の生存率はALBI grade・Child-Pugh分類いずれでも有意差をもって分別されたが,5年・10年生存率はALBI grade 1で77.8%・64.8%,Child-Pugh Aで60.8%・48.5%と前者で有意に高かった(p=0.004).Child-Pugh Aに限って検討すると,5年・10年生存率はALBI grade 1で78.8%・65.7%,grade 2で27.9%・17.0%であり肝機能の面からみた予後を分別した(p<0.001).ALBI gradeはB型肝炎由来の肝細胞癌においても予後予測に有用であり,Child-Pugh分類と比べさらに肝機能の良い症例の選択が可能な評価法と考えられた.
今回,GIFT-I試験の事後解析を行い,70歳以上および70歳未満の日本人ジェノタイプ1b型C型肝炎ウイルス感染患者における12週間オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル(OBV/PTV/r)レジメンの有効性および安全性を評価した.
Intent-to-treat(ITT)集団(OBV/PTV/rが1回以上投与された全ての患者)における治療終了12週後のウイルス学的著効率(SVR12率)は,70歳以上群が92.2%,70歳未満群が96.2%であった.Modified ITT(mITT)集団(非ウイルス学的治療不成功例を除外した集団)におけるSVR12率はそれぞれ97.3%および96.8%であった.OBV/PTV/rの忍容性は年齢群に関係なく全般的に良好であった.OBV/PTV/rは日本人高齢C型慢性肝炎患者に対する治療の選択肢として適している.
症例は67歳男性.吐血を主訴に救急搬送された.緊急上部消化管内視鏡検査(EGD)にて食道静脈瘤(Ls F3 Cb RC2)ならびに胃静脈瘤(Lg-cf F3 RC1)を認め,出血源と考えられた胃噴門部の静脈瘤に対して内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を施行した.腹部造影CTで脾腫,腹水のほか,左肝動脈から門脈左枝に流入する肝内動脈門脈瘻を認め,肝生検では肝硬変の所見を認めなかった.血管造影検査にて左肝動脈から門脈左枝に連絡する肝内動脈門脈瘻を確認した.その後の経過観察中に腹水は改善し,EVL施行から9カ月後のEGDでは食道静脈瘤はF1形態で白色化し,胃静脈瘤はF0形態となりいずれも著明な改善を認めた.血管造影検査では,肝内動脈門脈瘻は閉鎖しており,これにより門脈圧が正常化することで食道胃静脈瘤が改善したと考えられた.門脈圧亢進症を呈する肝内動脈門脈瘻の自然閉鎖は極めて稀であると考え,報告する.
症例は70歳女性.食後の上腹部痛を主訴に受診し,入院精査を行い膵頭部癌と診断された.造影CTにて門脈左枝水平部は欠如し,肝左葉の門脈枝は中肝静脈の腹側をアーチ状に横走する肝内門脈枝を介して描出されており,門脈左右分岐部の欠如と診断した.内視鏡的胆管造影では左右肝管が長く,左肝管はB2+3および3本のB4がほぼ同じ位置で合流して形成されていた.左肝管に最も右側より合流するB4は肝右縁付近まで描出されており,一部の枝が中肝静脈の腹側をアーチ状に横走する肝内門脈枝と併走していた.肝内門脈枝は,門脈左枝水平部が形成されなかったことに対して,P8とP4の門脈枝の間で形成された肝内門脈吻合枝であると考えられた.門脈左右分岐部の欠如を有する症例では胆管の分岐異常を伴うことが考えられ,術前には詳細な胆管評価が必要である.
症例1は73歳男性.表在性膀胱癌に対し経尿道的切除術を半年前に受けられ,2週前までに7回のBCG膀胱内注入を受けた.血液検査で炎症反応および肝胆道系酵素上昇を認め,両肺下葉にすりガラス様陰影を認め播種性BCG症が疑われた.肝生検にて類上皮肉芽種を認め,播種性BCG症に随伴したgranulomatous hepatitisと確定診断.3剤併用での抗結核治療にて軽快した.症例2は66歳男性.2日前までに4回のBCG腎盂内注入を受けた.炎症反応および肝胆道系酵素の上昇を認め,当初は腎盂腎炎と診断され抗生剤加療が行われたが,肝胆道系酵素のさらなる上昇を認めたため肝生検が行われgranulomatous hepatitisと確定診断.3剤併用治療にて炎症反応,肝胆道系酵素ともに軽快した.BCG注入療法後に発熱を伴う肝障害を認めた際には,積極的な肝生検を行うことが早期診断,治療に繋がると考えられた.