症例は50歳代男性.再生不良性貧血と診断され,輸血依存状態であった.輸血療法開始2カ月後より肝機能障害が出現し,肝ヘモクロマトーシスが疑われた.血小板減少もあり,肝生検は出血リスクが高いと判断したため,MRI検査にて肝鉄沈着を評価した.R2*mappingで,肝実質はびまん性に高信号を呈し,平均R2*値が高値であったことから輸血後鉄過剰に伴う肝ヘモクロマトーシスと診断した.鉄キレート薬として経口デフェラシロクス導入後は肝機能障害が改善し,平均R2*値も低下した.
肝生検は侵襲性を伴うものであり,サンプリングエラーの課題もある.MRIによるR2*mappingとR2*値は肝生検に完全に置き換わるものではないが,非侵襲的に肝ヘモクロマトーシスを診断・評価ができる点で有用と考えられる.
48歳,男性.C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus,HCV)抗体陽性を指摘されていたが,抗ウイルス療法を受けていなかった.HCV-RNAは陽性で,HCV genotypeは2a型であった.切除不能肺扁平上皮癌に対して,ニボルマブ(3 mg/kg)を2週ごとに3回投与した.3回目投与から2週間後に血中肝酵素の上昇を認めた.肝生検組織所見よりC型慢性肝炎の急性増悪(新犬山分類F1/A2)と診断し,ソホスブビル・リバビリン併用療法を12週間施行した.投与直後より肝機能改善がみられ,終了後24週での持続的ウイルス陰性化が得られた.その後肝機能異常は認めていない.抗PD-1抗体製剤をC型慢性肝炎患者に使用した際,肝炎の急性増悪をきたすことがあり,肝機能障害が起きた場合は速やかに肝生検の実施などを検討し,病態を鑑別することが重要であると考えられた.
症例は73歳男性.肺の結節影の経過観察目的に撮影したCT検査で,肝両葉に多発する占拠性病変を指摘された.経皮的肝腫瘍生検を行ったが確定診断に至らず,腹腔鏡下肝腫瘍切除による組織採取にて肝血管肉腫と診断した.全身化学療法としてパクリタキセル療法を開始したが,1クール後の効果判定はPDであり,パゾパニブ療法に変更するも,PS不良のため治療開始後早期に中止となった.その後,緩和医療に移行し,初回化学療法開始後約4カ月で永眠された.肝血管肉腫の予後は不良であり,画像による正確な診断は容易ではないため,疑いのある症例に対しては,診断目的に腹腔鏡下腫瘍切除を試みることも選択肢であると考えられた.