2019年6月に発行された「C型肝炎治療ガイドライン」第7版における主な改訂点として,非代償性肝硬変に対するソホスブビル/ベルパタスビル配合錠12週投与が治療選択肢として示された.DAA前治療不成功例に対する再治療として,グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠12週投与,またはソホスブビル/ベルパタスビル配合錠+リバビリン24週投与が治療選択肢として示された.ゲノタイプ1型では薬剤耐性変異,ことにP32欠失の有無を測定した上で,肝臓専門医によって慎重な治療薬選択がなされることが推奨された.また抗ウイルス治療による発癌抑制効果とリスク因子についてこれまで明らかとされたエビデンス,および肝移植後の再発に対する治療について記述された.
症例は53歳男性,右下腿蜂窩織炎を機にC型肝硬変を指摘されたが,その際にHBs Agは陰性.その後も感染源不明の敗血症性ショックを繰り返し,その都度抗菌薬の投与で軽快していた.初診から1年後に再度感染症で入院した際に,肝機能は徐々に悪化しており,若年でもあり肝移植を検討した.移植前検査においてHBV-DNA陽性,HIV陽性が判明し,そこでMSM(men who have sex with men)ということが判明し,同性間性交渉が3ウイルスの感染経路と推測された.その直後再び敗血症性ショックに陥り,初診から18カ月後に敗血症を契機とした肝不全で永眠された.3ウイルス共感染の致死率は高く極めて予後不良であり,比較的若年の非代償性C型肝硬変では,HIV共感染を念頭におき診療にあたる必要がある.
症例は41歳女性.2018年10月三叉神経痛を発症し近医でカルバマゼピンを処方された.内服後発熱及び体幹中心の紅斑が出現しその後呼吸困難感も認めたため総合病院へ紹介された.重症皮膚症状からStevens-Johnson症候群を疑い,被疑薬を中止するも十分な改善が得られず肝障害も併発した.プレドニゾロン50 mg/日,ウルソデオキシコール酸600 mg/日を開始したが症状の改善なく当院へ転院となった.入院後免疫抑制療法を継続,皮膚症状が改善傾向のため漸減したが,第8病日に一時肝障害が増悪した.血液のPCR検査からHHV-6バリアントB(HHV-6B)陽性となり,HHV-6再活性化関連の薬剤性過敏症症候群(DIHS)と診断した.その後発熱,皮疹と共に肝障害も改善した.DIHSではHHV-6再活性化による肝障害が問題となることがあり,薬物起因性の肝障害では念頭に入れる疾患であると考えられた.