肝臓
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62 巻, 11 号
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総説
  • 小玉 尚宏, 木積 一浩, 竹原 徹郎
    2021 年 62 巻 11 号 p. 681-689
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    世界人口の約3割が罹患しているNAFLDの中から,病勢進行が生じるNASHや生命予後と直結する線維化進展例を同定することは臨床上重要である.NASHの診断には侵襲的な肝生検が必要であるが,病理学的な診断のばらつきが問題である.NASHの確立された治療法は未だ存在しないが,病理学的な評価が臨床試験のエンドポイントに用いられてきたことはその一因と考えられる.そこで国際的な取り組みとして,NASHの病理診断や活動性評価基準の統一化,診療ガイドラインの策定,臨床試験における適切なサロゲートマーカーの検討,そして肝生検に代わる非侵襲的バイオマーカーの開発が行われてきた.我々も最近NASH・肝線維化診断やNAFLD予後予測に有用な血清マーカーを報告した.また,脂肪性肝疾患を広く含有したNAFLDに代わる新名称としてMAFLDが近年提唱されたが,世界的なコンセンサスは未だ得られていない.

原著
  • 持田 智, 佐久間 龍太, 中島 龍, 川縁 岳志, 泉 並木
    2021 年 62 巻 11 号 p. 690-702
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル配合錠はセログループ1(ジェノタイプ1)はC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善の効能・効果で承認された直接型抗ウイルス薬である.承認の際に,使用実態下における本剤の安全性および有効性を検討するために使用成績調査を実施した.安全性解析対象症例数2954例の中でIFNを含むHCV治療歴のある症例は21.2%,代償性肝硬変の症例は14.8%であった.副作用の発現が認められた症例は16.2%であった.主な副作用は2.0%に血中ビリルビン増加が,1.4%にそう痒症が認められた.重篤な副作用は2.3%で認められた.有効性主要評価項目である投与終了12週後のHCV-RNA陰性化率(SVR12)は97.9%であった.新たな懸念事項は認められず,添付文書に従った適正な使用がなされたうえで本剤の安全性と有効性が示唆された.

  • 髙草木 智史, 井上 佳奈, 高橋 智美, 小曽根 隆, 高木 均
    2021 年 62 巻 11 号 p. 703-711
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    当院では2014年から2019年までに428例のC型肝炎に対して直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療を施行し,400例(93.5%)でウイルス学的著効(SVR)を得た.SVR後も画像検査による肝細胞癌(HCC)スクリーニングを継続すべき所44例(11%)で継続されておらず,その内で肝炎医療コーディネーターによって呼び出し再診となった20例から3例がHCCと診断された.各々肝動脈化学塞栓療法(TACE)+重粒子線治療,経皮的ラジオ波焼灼術(RFA),TACE+RFAにて治療しcomplete remission(CR)を得た.DAAにより高率なSVRを得てもHCCは発症し発見が遅れれば治療困難となる.SVR患者こそ放置せず,HCC高危険群として定期受診を継続し中断例は拾い上げて定期受診を勧奨することで肝癌死をさらに減少させることが可能である.

症例報告
  • 浦壁 憲司, 水島 隆史, 塚本 宏延, 藤田 恭明, 羽根田 賢一, 鈴木 雄太, 蓑輪 彬久, 石原 亮, 鬼頭 佑輔, 渡邊 和子, ...
    2021 年 62 巻 11 号 p. 712-723
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    症例1:61歳,男性.Nivolumab導入後82日目に腹痛と肝障害が出現した.造影CTで閉塞起点を伴わない肝外胆管の拡張と壁肥厚を認めた.細菌性胆管炎と診断し,内視鏡的胆管ドレナージを行なったが,改善しなかった.肝生検を施行し,免疫チェックポイント阻害薬関連硬化性胆管炎と診断した.プレドニゾロンは奏功せず,原病の悪化で死亡した.症例2:75歳,女性.Nivolumab導入後150日目に腹痛と肝障害が出現し,造影CTと肝生検で免疫チェックポイント阻害薬関連硬化性胆管炎と診断した.プレドニゾロンでは改善が乏しく,ミコフェノール酸モフェチルの追加で改善した.その後,プレドニゾロン漸減中に悪化を認めたが,アザチオプリンの追加で再度改善が得られた.免疫チェックポイント阻害薬関連硬化性胆管炎はステロイド抵抗性であるが,ミコフェノール酸モフェチル,アザチオプリンの追加で改善が得られる可能性がある.

  • 岡田 真穂, 天野 優雅, 中井 隆志, 川崎 靖子, 濱野 玄弥, 高台 真太郎, 清水 貞利, 金沢 景繁, 福島 裕子, 井上 健, ...
    2021 年 62 巻 11 号 p. 724-733
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    症例はC型肝硬変に対して7年前にウイルス学的著効を達成した73歳女性.肝細胞癌のスクリーニング目的の腹部CT検査で肝S7に単発腫瘤を指摘された.経皮的肝腫瘤生検の結果,臨床的に低分化型肝細胞癌と診断し,腹腔鏡下肝腫瘍切除術を施行した.腫瘍は被膜を伴わない結節状の病変であり,病理組織学的所見ではリンパ球を含む炎症細胞浸潤が顕著で,N/C比の高い肝細胞類似の異型細胞の混在を認めた.また免疫染色ではN/C比の高い異型細胞で一部の上皮性マーカーが陽性を示したことからLymphoepithelioma-like carcinoma(LELC)と診断した.術後2年以上経過するが再発は認めていない.LELCの診断は主として病理学的所見に依存するが,肝細胞癌や肝内胆管癌に類似した特徴をもつため,肝生検では診断が困難であることも少なくない.低分化癌においては常に鑑別に挙げることが重要であると考えられた.

  • 小野 隆裕, 橋本 章, 田中 隆光, 福家 洋之, 清水 敦哉, 欠田 成人, 中野 洋
    2021 年 62 巻 11 号 p. 734-741
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    症例は40歳代女性.風俗店勤務.外陰部腫瘤,潰瘍,体幹部丘疹,手掌足底に紅斑を認め梅毒を疑った.梅毒反応陽性,胆道系優位の肝胆道系酵素上昇を認めた.腹部超音波検査で門脈域に高エコー像を認めた.造影CTでは動脈相で肝内胆管の一部拡張と壁肥厚,肝実質に不均一な造影所見を認め,以上より胆管炎も疑われた.MRIではT1強調画像opposed-phaseで門脈域周囲低信号域を認め,MRCPで胆管の枯れ枝状変化を認めた.肝生検ではグリソン鞘と周囲組織にリンパ球浸潤と線維化を認め実質に脂肪変性を認めた.AMPC内服を開始し梅毒反応は陰性化し,肝胆道系酵素は約11カ月の経過で低下し画像所見も改善を認めた.早期梅毒肝炎の過去報告例では画像上胆道系異常を指摘した報告は少ない.この所見は胆道系優位の肝障害という早期梅毒性肝炎の特徴とも合致し,特徴的な画像所見を呈した1例として報告する.

  • 池田 有希, 上野 真行, 髙畠 弘行, 上西 陽介, 戸川 文子, 羽田 綾子, 眞野 俊史, 萱原 隆久, 守本 洋一, 水野 元夫
    2021 年 62 巻 11 号 p. 742-748
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性.慢性閉塞性肺疾患の既往あり.肝動脈化学塞栓療法(TACE)不応の肝細胞癌に対してレンバチニブ12 mg/日を開始した.開始3週間後から易疲労感が出現し,減量や休薬を行いながら投与を継続したところ,開始2カ月後に著明な労作時呼吸困難と低酸素血症を認めた.胸部CT所見から間質性肺炎と診断し,入院治療を開始した.レンバチニブ中止後も呼吸状態はさらに悪化したが,プレドニゾロンの内服と高流量鼻カニュラ酸素療法により徐々に改善が得られた.退院から1年後,間質性肺炎の再燃をきたすことなくプレドニゾロンを中止できた.本症例から,レンバチニブが重篤な間質性肺炎を生じうることが示された.レンバチニブ投与中に易疲労感や労作時呼吸困難を認め,減量や休薬で改善が乏しい場合は本副作用を念頭に置く必要がある.また,レンバチニブによる間質性肺炎に対して副腎皮質ステロイドが有効である可能性が示唆された.

  • 北條 雄暉, 上村 博輝, 大脇 崇史, 木村 莉菓, 岩澤 貴宏, 渡邊 雄介, 高綱 将史, 五十嵐 聡, 高村 昌昭, 薛 徹, 荒生 ...
    2021 年 62 巻 11 号 p. 749-755
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    症例は50代の女性.30代でC型肝炎ウイルスへの感染を指摘されていたが治療に至らず,継続的な受診も行っていなかった.腹痛と意識消失を主訴に救急搬送され,脾動脈瘤破裂による出血性ショックと診断された.当院で脾動脈瘤塞栓術を施行し,術後経過は良好であった.外来にて直接作用型抗ウイルス薬を導入し,ウイルス学的著効を達成した.CT検査の普及により,脾動脈瘤の偶然の発見も増加していると報告されていて,今後本例のように肝臓以外の疾患での受診を契機に,ウイルス性肝炎や肝硬変の診断から治療に至る症例もある.C型肝炎の未治療者や未受検者,非認識受検者は国内に未だ数多く存在しており,脾動脈瘤に関する文献的考察と,新潟県で実施している肝炎患者の拾い上げの試みについても併せて記載し報告する.

  • 中村 博式, 華井 竜徳, 水草 貴久, 畠山 啓朗, 西脇 伸二
    2021 年 62 巻 11 号 p. 756-764
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    80歳男性.C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法を13年前に施行し,ウイルス持続陰性化となった.腹部超音波検査で肝S8に約36 mmの肝細胞癌を認めた.肝機能はChild-Pugh分類5点Aであったが,呼吸器合併症が判明したため,ミリプラチン及びゼラチンスポンジによる肝動脈化学塞栓療法を選択した.リピオドールの局所停滞は良好であった.治療後41日目に呼吸器症状,全身浮腫を主訴に再入院した.薬剤性肺障害を疑いプレドニゾロンを,非結核性抗酸菌症の悪化を疑い抗結核剤を開始したが,効果乏しく全身浮腫が増悪したため甲状腺機能を測定したところ,甲状腺機能低下症が判明した.レボチロキシンの投与により甲状腺機能は徐々に正常化し,呼吸器症状及び浮腫は軽快した.甲状腺自己抗体は陰性であることから,甲状腺機能低下症の発現にリピオドール由来のヨードによるWolff-Chaikoff効果の影響が考えられた.

短報
  • 金 秀基, 藤井 貴子, 金 守良, 小林 久人, 奥田 豊一, 早雲 孝信, 藤井 友実, 中井 敦史, 大谷 綾, 金 啓二, 中島 収 ...
    2021 年 62 巻 11 号 p. 765-769
    発行日: 2021/11/01
    公開日: 2021/11/08
    ジャーナル フリー

    Ultrasound (US) revealed a 6-mm hypoechoic nodule in segment 6 of a 65-year-old man with alcoholic cirrhosis (Case 1) and a 7-mm hypoechoic nodule in segment 5 of a 70-year-old man with chronic hepatitis C (Case 2). Contrast-enhanced US (CEUS), CE computed tomography, and CE magnetic resonance imaging of the nodules in both cases revealed hypervascularity in the early phase and washout in the late phase. CEUS with the use of perflubutane revealed washout in the portal phase, which differentiates these nodules from hepatocellular carcinoma. Histopathologically, the nodules showed proliferation of small 30-μm bile ducts with slight atypia. Immunohistochemically, these were positive for p16INK4a and Ki67 index (0%-3%) and negative for EZH2, distinguishing them from cholangiolocellular carcinoma.

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