肝臓
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62 巻, 3 号
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原著
  • 廣岡 可奈, 田中 哉枝, 山内 一彦, 廣岡 昌史, 西原 麻菜, 谷脇 楓佳, 田中 倫代, 古田 聡, 大藏 いずみ, 久保 義一
    2021 年 62 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/03/09
    ジャーナル フリー

    当院で2018年7月から2019年6月にかけて腹部CTまたは腹部超音波検査で脂肪肝を認めた非飲酒症例85例を対象にTransient Elastographyを施行し,食事摂取状況を調査した.単変量解析で,FAST score高値群はビタミンEや一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸の摂取が有意に少なく,多変量解析では高齢と多価不飽和脂肪酸の低摂取が独立因子として抽出された.FAST score高値症例の栄養指導時には多価不飽和脂肪酸の摂取を推奨する必要があることが示唆された.

症例報告
  • 坂本 雄飛, 加藤 慶三, 安部 宏, 米澤 健, 伊藤 禎浩, 井家 麻紀子, 與座 喜一郎, 大原 まみか, 逆井 章吾, 清水 晶平, ...
    2021 年 62 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/03/09
    ジャーナル フリー

    症例はHBs抗原陽性の60歳男性.ラムシルマブを導入する2年前より門脈腫瘍栓を有する肝細胞癌に対して肝動注化学療法を繰り返し施行し制御していたが,AFP,PIVKA-IIの再上昇,肝内腫瘤の増大を認め,ソラフェニブの内服を開始した.以降,進行の判定でソラフェニブからレゴラフェニブ,更にレンバチニブに変更するも,副作用にて再度ソラフェニブに変更した.その後も肝内腫瘤が増大し,ラムシルマブを導入した.導入後4日目に心窩部痛が出現,5日目以降の血液検査で肝機能障害と腎機能障害,尿酸値上昇,CTで肝細胞癌の血流低下を認め,腫瘍崩壊症候群(TLS)が疑われた.日本臨床腫瘍学会のTLS診療ガイダンスに則りリスク評価を行い,大量補液,フェブキソスタット内服などで改善し,後の治療も継続できた.肝細胞癌に対してラムシルマブ投与後にTLSを発症した報告はなく,示唆に富むと思われ報告する.

  • 吉川 ゆき, 河岡 友和, 安藤 雄和, 小坂 祐未, 末廣 洋介, 内川 慎介, 西田 祐乃, 盛生 慶, 中原 隆志, 村上 英介, 山 ...
    2021 年 62 巻 3 号 p. 136-143
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/03/09
    ジャーナル フリー

    53歳,男性.C型肝硬変のフォロー中にF3の食道静脈瘤を認め,ルストロンボパグ初回投与を行い,9万/μL台へ上昇した時点で内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)を施行した.また3カ月後に再度ルストロンボパグ投与を行い,血小板数の増加を確認し(4.3から8.4万/μL),EISを施行した.いずれも血小板輸血を行わず,偶発症なく退院した.さらに4カ月後に直腸Rb 20 mm大Isポリープに対し,ルストロンボパグの再投与により血小板数増加を認め(4.7から8.2万/μL),内視鏡的粘膜下層剥離術で一括切除が可能であった.以後10カ月経過し,AST・ALT上昇の精査目的の肝生検のため,4回目のルストロンボパグ投与を行った.血小板は上昇し(5.0から9.8万/μL),手技は特に合併症なく終了した.いずれの場合も門脈血栓などのルストロンボパグによる有害事象は認めなかった.

  • 道免 和文, 山本 洋, 山本 麻太郎, 小野原 伸也, 相島 慎一, 下田 慎治
    2021 年 62 巻 3 号 p. 144-151
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/03/09
    ジャーナル フリー

    1例目は71歳,女性.動悸を主訴に当科を紹介受診した.血色素7.7 g/dl,ハプトグロビン10 mg/dl以下,Coombs試験陽性から自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断された.プレドニゾロン(prednisolone,PSL)投与が著効したが,AIHAの診断後1年8カ月経過した頃よりALP,γGTPの上昇ならびに抗ミトコンドリアM2抗体の高値を示し,肝組織検査で中沼分類stage 2の原発性胆汁性胆管炎(PBC)と診断された.2例目は67歳,男性.褐色尿を主訴に当科を紹介受診した.血色素が10.3 g/dl,ハプトグロビンが10 mg/dl以下,Coombs試験が陽性であり,AIHAと診断された.1例目同様にPSLが著効したが,初診時からの持続的なALP,γGTPの上昇ならびに抗ミトコンドリアM2抗体の高値を示し,肝組織検査で中沼分類stage 2のPBCと診断された.2症例ともにウルソデオキシコール酸が奏効し,肝胆道系酵素は正常化した.自己免疫性疾患であるPBC,AIHAの合併例は稀であり,発症機序,治療について考察した.

  • 山下 由美子, 福原 崇之, 髙木 慎太郎, 森 奈美, 辻 恵二, 金城 直, 前田 貴司, 柿沢 秀明, 柾木 慶一, 古川 善也
    2021 年 62 巻 3 号 p. 152-159
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/03/09
    ジャーナル フリー

    症例は76歳女性.2年前に他院で十二指腸癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行された.術後に急性膵炎を発症し,それに伴う門脈閉塞により側副血行路が発達した.その後,胆管空腸吻合部の挙上空腸静脈瘤からの出血を繰り返したため静脈瘤治療目的で当院紹介.小腸ダブルバルーン内視鏡検査では,肝管空腸吻合部に静脈瘤を認めたが,細い新生血管の拡張を主体としており内視鏡的治療は困難と判断した.また門脈閉塞のため経門脈的治療も困難と考え,全身麻酔下・開腹下に経回結腸静脈的静脈瘤塞栓術を施行した.術後のCTで挙上空腸静脈瘤の造影効果は消失し,塞栓物質の良好な停滞を認めた.本症例では術後再出血なく経過しているが,新たな側副血行路発達や再出血のリスクがあるため慎重な経過観察が必要である.

  • 洪 伸有基, 高木 慎太郎, 福原 崇之, 宮木 英輔, 森 奈美, 前田 貴司, 藤原 恵, 辻 恵二
    2021 年 62 巻 3 号 p. 160-168
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/03/09
    ジャーナル フリー

    68歳女性.右膝蓋骨骨折のため近医整形外科入院中,腹部CTで肝右葉に12 cm大の腫瘍性病変を認め当院に入院した.腹部超音波検査(US)で可動性を呈する乳頭状隔壁を認めた.乳頭状隔壁は,MRIでも認めたがCTでは描出されず所見が乖離していた.Sonazoid造影超音波検査(Sonazoid CEUS)では,壁在結節の造影効果が持続しCA19-9 198.9 U/mlと上昇しており,外科的切除術を施行した.囊胞性腫瘤の内部は,フィブリン,コレステリン結晶を含んだ茶褐色の混濁した漿液が貯留し囊胞壁は不均一な線維性硬化を認め出血性肝囊胞と診断した.術後に画像所見を見直すと出血性肝囊胞に特徴的な所見である,USで可動性を呈するがCTでは描出されない乳頭状隔壁を認めた.さらに,Sonazoid CEUSでの壁在結節の造影効果の持続がよく観察されており同疾患の診断に有用な所見と考えられたため報告する.

短報
  • 大川 修, 須田 季晋, 白橋 亮作, 菅原 美和, 玉野 正也
    2021 年 62 巻 3 号 p. 169-171
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/03/09
    ジャーナル フリー

    肝硬変患者の治療の基本は栄養療法である1).栄養療法で重要な意義を担う栄養指導は,患者が直近約1週間分の食事品目を自己申告し,管理栄養士が面談しつつ摂取カロリーおよび栄養素を算出して行われる.通常は患者の来院後に過去の食事品目から摂取カロリーおよび栄養素を計算してから指導が開始されるので効率的ではない場合もある.

    人工知能(Artificial Intelligence:AI)を用いた栄養管理アプリケーションソフトが開発され実用化されているが,その多くは体重減量や筋力増強を目的としたものであり,医療の現場で患者に用いるソフトは開発されていない.

    本研究では,人工知能を用いて肝硬変患者が摂取した食事を自動的に解析した際の患者の受け入れ状況と,人工知能の解析能について検討を行った.

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