肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓術(TACE)の術前予後予測因子を検討した.対象は2014年4月から2021年4月までに肝細胞癌に対しTACEを実施した連続症例106例.予後予測因子をCox比例ハザードモデルで検討したところ,単変量解析ではAlb,ALBIスコア,AFP,腫瘍数,Up-to-7が,多変量解析ではAlb(p=0.025),AFP(p=0.000),腫瘍数(p=0.000)が有意であった.次に腫瘍数と腫瘍径の選択的TACEの選別に対する関連についてROC曲線を用いて比較したところ,AUCは腫瘍数が0.754,腫瘍径が0.693と腫瘍数の方がAUCは高値であった.TACE予後予測因子として腫瘍径よりも腫瘍数が有用であり,腫瘍数がTACEの選択性に関連していることが理由の一つと考えられた.
症例は89歳女性.C型慢性肝炎の経過観察中,腹部超音波検査で膵頭部周囲のリンパ節腫大を認め,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の診断に至った.リツキシマブを含む全身化学療法中に肝障害が増悪し,化学療法終了後も肝障害が遷延した.C型肝炎ウイルス(HCV)再活性化によるC型肝炎増悪と考え,Glecaprevir Hydrate,Pibrentasvirを8週間投与した.投与後,肝障害は速やかに改善し,Sustained Virological Response(SVR)12を達成した.以降,肝障害の再燃はなく,経過観察中である.C型慢性肝炎患者でも,B型慢性肝炎患者と同様,化学療法によるHCV再活性化,肝炎増悪をきたす可能性を常に念頭に置き,肝障害が遷延する場合には,肝炎増悪と考え,抗ウイルス治療を行う必要があることが示唆された.
70歳台男性.患者は陳旧性心筋梗塞にて近医循環器内科へ通院していたが,20XX年に心室細動による心停止をきたし当院へ救急搬送され,救命の後に除細動器が埋め込まれ,さらに不整脈予防の目的で抗不整脈薬であるアミオダロンの内服が開始された.アミオダロン内服1年8カ月後に肝障害で当科へ紹介となり,腹部単純CT検査で肝臓の高吸収を認めたことから,アミオダロンによる薬物性肝障害と診断し休薬を勧めたが,代替薬がないことから継続投与となっていた.その2年後に肝硬変へ陥り腹水貯留の増悪を認めアミオダロンの内服を中止したが,その半年後に肝不全により死亡した.アミオダロンによる薬物性肝障害は,時に短期間で肝硬変へ進行する可能性があり,早期内服の中止やアミオダロンの血中濃度測定を行い,投与量の調整を随時検討することが重要であると考えられた.
The diagnosis of NASH requires a liver biopsy; however, actual clinical practice is unknown. In this study, we analyzed a large database of medical claims from 2013 to 2017, which included 7, 368, 327 insured people. The number of people newly diagnosed with NASH was 2, 224. Among these, 153 (6.9%) had received liver biopsies in the three months prior to the new NASH diagnosis. The elderly had a higher rate of liver biopsy implementation. Over the last 5 years, there had been no change in the implementation liver biopsies. According to the findings of this study, it is desirable to develop an alternative method for evaluating liver fibrosis instead of a liver biopsy, which is not performed at the clinical site.