肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業(以下 事業)の候補となる肝がん患者数と説明方法の実態を明らかにするため,兵庫県内の肝疾患診療連携拠点病院・専門医療機関に対するアンケート調査を実施した.その結果,肝炎ウイルスに由来する肝がん患者が未だ多く存在すること,事業対象者は3月以上の治療を受けた患者の中の13%であること,対象者への情報提供は十分になされていないことが明らかとなった.本事業の説明担当部署が存在する施設が61%であり,その中の53%に肝炎医療コーディネーターが配置されていた.本事情内容の各施設への周知,制度の改良,対象者の同定と適切な説明,肝炎医療コーディネーターの関与など,多くの課題を解決し,さらに多くの肝がん・重度肝硬変患者が医療費の自己負担軽減を図りつつ最適な治療を選択できるようになることを期待する.
混合型肝癌は単一腫瘍内に肝細胞癌と肝内胆管癌へ明瞭に分化した両成分が混ざり合っている腫瘍と定義されている.原発性肝癌の中でも頻度が低く,その中でも腫瘍破裂をきたす症例は非常に稀である.今回我々は正常肝を背景に発生し,胆管癌主体で乏血性腫瘍であるにも関わらず腫瘍破裂した混合型肝癌の一例を経験した.術後12カ月で肝S8に再発が疑われ切除を行ったところ,肝内再発ではなく腹膜播種再発と判明した.播種巣の切除後9カ月経過し無再発生存中である.混合型肝癌の術後再発症例については一定の治療指針がなく,切除標本や画像所見,腫瘍マーカーの推移などを症例毎に検討して治療法を選択しているのが現状だが,腫瘍破裂後症例では腹膜播種再発の可能性も考慮した画像評価や治療法選択が必要となる.
症例は73歳女性.発熱,嘔気を主訴に受診し,高度炎症と肝腫瘤を認めた.抗生剤治療を行い速やかに炎症反応は低下した.肝腫瘤生検では高度の炎症細胞浸潤を認め,炎症性偽腫瘍が疑われた.その後経過観察にて肝腫瘤は縮小傾向となったが,1年4カ月後に肝門部および膵周囲リンパ節腫大を認め,同部からのEUS-FNAで低分化癌を認めた.肝腫瘤生検所見との類似性から,炎症性偽腫瘍として経過観察していた病変は肝細胞癌であったと考えられた.耳下腺転移も認めたため,全身化学療法の方針となり,テセントリク+アバスチン併用治療を行って奏功を得た.当初炎症性偽腫瘍が疑われ,後に肝細胞癌と判明する症例は稀であるが,免疫チェックポイント阻害薬が有効と考えられ,複合免疫療法の時代においては予後改善が期待できる.
症例1は60代男性,職場健診でγ-GTPのみの上昇を指摘され前医を受診,適量以上の飲酒習慣があったため,当初MetALDが疑われたが,禁酒していたにも拘わらず3カ月後に肝障害の増悪を認め当科に紹介となった.精査の結果,肝門部領域胆管癌の診断であった.症例2は60代男性,職場健診でγ-GTPのみの上昇を指摘され,3カ月後に当科を受診した.飲酒習慣はなかったが,脂肪肝の既往があったため当初MASLD由来を疑ったが,再検査で肝障害の増悪を認めた.精査の結果,膵尾部癌の診断であった.稀に健診や人間ドックの肝機能障害を契機に胆膵領域の悪性腫瘍が見つかることがあり,注意が必要と考え報告する.