免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の普及に伴い,免疫関連有害事象としての肝障害(ICIによる肝障害)が臨床的に問題となっている.重症例では副腎皮質ステロイド等の投与が必要となるため,臨床経過や血液・画像検査,必要に応じて肝生検による病理学的検査を含めた総合的な評価が重要となる.他の薬物による肝障害同様,R値による障害型分類は治療方針の決定に有用である.典型的な病理学的所見は,CD8陽性Tリンパ球浸潤を伴うびまん性小葉炎で構成される急性肝炎様の肝細胞障害像とされる.一方,ICI治療中に肝障害を来すもう一つの病態として,非閉塞性胆管拡張・胆管壁肥厚を伴う胆管炎が存在する.ICIによる胆管炎は,多くが非肝細胞障害型に分類され,副腎皮質ステロイドへの反応性は不良であることが報告されている.ICIによる肝障害については,消化器内科医と各科医師が連携し,早期診断と適切な治療を行う体制が不可欠である.
脳死肝移植には厳格な適応基準と選択基準が設けられており,「脳死肝移植希望者(レシピエント)適応基準とこれに関連する選択基準」として公表されている.2023年に脳死肝移植ドナーが100例を超え,それに伴って2024年1月より脳死肝移植レシピエント適応基準が変更になった.ひとつは,非代償性肝不全の脳死肝移植の適応評価が従来のChild-Pughスコア10点以上から7点以上に変更となった.これに伴い,肝細胞癌合併例の脳死肝移植の機会が増える可能性が予想される.二つ目は,生体または脳死肝移植後1年未満の早発性グラフト機能不全症例が脳死肝移植の適応となった.他の肝疾患に対する脳死肝移植への影響についての検討が必要である.内科的治療の限界が予想される症例を診療した場合には,本基準を確認して肝移植適応の有無を検討し,一人でも多くの末期肝疾患患者さんが肝移植によって元気になられることを期待する.
症例は60代女性.腹部CTにて偶発的に肝腫瘍を指摘された.画像検査で診断がつかず経過観察されたが,3年の経過で腫瘍の増大に伴う腹部症状が出現したため,確定診断目的に肝生検を行った.病理所見では,粘液性間質を伴う紡錘形ないし比較的豊富な胞体を伴う多角形腫瘍細胞がコード状,索状を示して増殖しており,免疫染色でCD31(+),CD34(+),ERG(+)と血管内皮マーカーが陽性を示したことから肝類上皮血管内皮腫と診断した.本例では切除不能であることから5-FUによる肝動注療法を約10カ月施行したところ病勢制御が得られた.さらに治療終了後3年頃から腫瘍は縮小傾向を示し,長期間にわたり病勢制御を成し得た.
症例1:70歳代女性.食後の腹部鈍痛で受診した.自己免疫性膵炎(AIP),IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC),IgG4関連自己免疫性肝炎(IgG4-AIH)をほぼ同時に診断した.症例2:70歳代男性.体重減少精査中にAIPとIgG4-SCが診断され,その後IgG4-AIHと診断した.症例3:70歳代女性.検診で肝酵素上昇を指摘され,精査にてIgG4-AIHと診断した.IgG4関連疾患の合併はない.全例プレドニゾロン(PSL)が著効し,症例2はPSL漸減に伴い再燃を繰り返し,症例3はPSL中止可能であった.4年から10年の経過観察で,肝疾患の予後は良好である.長期にわたり経過を観察しえたIgG4-AIHを経験したので報告する.