自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)は,臨床像・病理像ともに多様な表現型を示す自己免疫性肝疾患である.病期の評価は治療方針の決定や予後予測において重要だが,自覚症状に乏しく,初診時に肝硬変を呈する例も少なくない.肝生検は,肝障害パターンや活動性の把握に有用であるが,病理像が多彩であるため,薬物性肝障害やウイルス性肝炎などの鑑別には,病理像と臨床所見を統合した評価が必要である.本稿では,AIHの代表的な病理像を概説し,主要な鑑別疾患や現行診断アルゴリズムの課題について検討する.臨床像と病理像を対比的に捉えることにより,AIHの病態理解と診断精度の向上が期待される.
症例は60歳代の女性.X年に右側腹部の腫脹を自覚した.PIVKA-IIは20400 mAU/mLと高値,肝右葉に8 cm大の腫瘤が認められた.生検により肝細胞癌と診断し,肝動脈化学塞栓術と肝右葉切除術を実施した.X+2年からX+3年にかけて肝内再発があり,肝動脈化学塞栓術やラジオ波焼灼術で根治が得られた.その後しばらく再発はなく,PIVKA-IIも基準値内に低下していたが,X+14年に167.0 ng/mL(基準値28.4以下)と上昇し,胸腹部CTで前年には認められなかった両肺多発結節が出現していた.肝内病変は認められなかった.CTガイド下肺腫瘍生検では中分化肝細胞癌の像であり,肺転移と診断した.アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を開始し,6コース実施後にCRが得られた.15コース実施後に有害事象で中止となったが,その1年10カ月後も無治療でCRを維持している.
80代男性,維持透析中.肝細胞がんに対し2度の手術歴あり.肝右葉とS3に再発を認め,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を開始した.投与数日後から発熱持続し投与後18日目に入院.投与後22日目に訴えはないがCPK・トロポニン上昇を認めた.投与後24日目に意識障害,25日目に上下肢けいれんが出現し,免疫関連有害事象による心筋炎・脳炎を疑いステロイドパルスを開始した.投与27日目に房室ブロックを合併しペースメーカー留置,直後に呼吸状態悪化したため挿管管理となった.投与33日目に抜管したが,投与41日目に再度けいれん重積状態となり再挿管,ステロイドパルス再開した.同日,抗amphiphysin抗体陽性が判明.投与44日目,敗血症性ショックとなり永眠.アテゾリズマブ投与が心筋炎だけではなく,傍腫瘍性神経症候群の発症に寄与した症例と考えられた.
A male patient in his sixties underwent rituximab-based chemotherapy for B-cell lymphoma. Given his hepatitis B virus (HBV) surface antigen positivity, he was prescribed prophylactic entecavir therapy during and after chemotherapy. One month following the completion of treatment, serum HBV-DNA became detectable again; however, this early sign of reactivation went unrecognized, ultimately resulting in acute liver failure. The patient died three months after completing chemotherapy. Most reactivated HBV strains do not carry mutations associated with entecavir resistance. Although drug adherence could not be confirmed due to the patient's comatose state, non-adherence to entecavir therapy was strongly suspected to be the cause of HBV reactivation. This case underscores the critical importance of consistent HBV-DNA monitoring and strict adherence to prophylactic therapy to prevent HBV reactivation.