肝臓
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66 巻, 5 号
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特別寄稿
  • 建石 良介
    2025 年 66 巻 5 号 p. 176-180
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    肝臓は代謝の中心臓器であり,従来肝臓研究とは肝臓の代謝機能に関する研究であった.近年,非B非C型肝癌・肝硬変の増加を契機として,肝臓研究者の代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)に対する注目度が上昇している.一方,糖尿病患者の死因の中で肝癌・肝硬変の占める割合が高いことが明らかになり,糖尿病診療における合併症としての肝疾患の重要性が増している.以上を背景として,肝臓を舞台とした代謝研究が発展することを企図し,日本肝臓学会・日本糖尿病学会合同の研究会として「肝臓と糖尿病・代謝研究会」が設立されるに至った.これまでに10回の研究会が開催され,毎回両学会から多数の参加者があり,肝臓病・糖尿病研究者の交流の場としてその地位を確立するに至っている.減量効果のある糖尿病薬のMASLDに対する有効性が明らかになるに至り,今後はこの研究会の重要性がより増していくことが期待される.

原著
  • 渡邉 京子, 川口 麻紀子, 大髙 宏文, 児玉 由美子, 佐藤 祥, 村田 礼人, 佐藤 俊輔, 玄田 拓哉
    2025 年 66 巻 5 号 p. 181-187
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    現在のウイルス性慢性肝炎対策では肝炎ウイルス検査陽性者の肝臓専門医受診促進が重要なステップのひとつとなっている.当院では2020年4月以降,肝炎医療コーディネーターを中心とした多職種院内連携による院内ウイルス検査陽性者の拾い上げと一元管理を行い,陽性者に対して患者背景を考慮した個別化受診勧奨を開始した.2024年4月までの約4年間でHBs抗原もしくはHCV抗体陽性者はそれぞれ845例と1749例が拾い上げられた.電子診療録情報から肝臓専門医受診状況,患者背景,合併疾患を確認した結果,陽性者の80%以上は院内肝臓専門医への受診勧奨が不要もしくは無効と判断され,残りの20%未満の陽性者に対して個別に受診勧奨が行われた.このような多職種連携による陽性者一元管理と個別化受診勧奨開始以降,院内紹介を介して抗ウイルス療法を受けたC型慢性肝炎患者の割合やHBs抗原陽性初診患者の数が増加した.

症例報告
  • 堀 洲晟, 大﨑 暁彦, 花野 薫, 森下 健, 福島 直弥, 大脇 崇史, 安住 里映, 河久 順志, 佐藤 宗広, 田覚 健一, 和栗 ...
    2025 年 66 巻 5 号 p. 188-197
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    症例1は71歳女性.進行食道癌の術後補助療法,ニボルマブが開始され,1コース13日目で急性肝不全となった.免疫チェックポイント阻害薬(immune check point inhibitor:ICI)による肝障害が疑われ,肝生検後に高用量プレドニゾロン投与が開始されたが,治療効果が乏しく肝不全死した.症例2は79歳女性.進行食道癌の術後補助療法,ニボルマブが開始され,2コース1日目に急性肝不全となった.ICIによる肝障害が疑われ,第一病日に肝生検が行われ,同日ステロイドパルス療法が開始された.奏功し肝不全を離脱できたが,重症感染症による多臓器不全で他界した.2症例とも肝生検ではCD8優位のリンパ球浸潤,広範囲な肝細胞壊死を認めた.ICIによる肝障害で肝不全に至る症例は稀である.残存肝細胞の保護には迅速かつ強力な免疫抑制療法が必要と推察され,ステロイドパルス療法は選択肢になり得ると考える.

  • 佐藤 祥, 喜古 博之, 永合 浩己, 山口 征大, 厳 理華, 寺井 雄一朗, 北 祐次, 池田 裕至, 村田 礼人, 佐藤 俊輔, 嶋田 ...
    2025 年 66 巻 5 号 p. 198-204
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    症例は70歳台女性.2018年から肺高血圧症を伴った混合性結合組織病と診断され当院膠原病内科に通院していた.2023年6月初旬より意識障害と高アンモニア血症が出現し当科を紹介された.腹部CTで脾腫と巨大な門脈大循環短絡路を認めたが,肝臓の組織学的検査で肝硬変は認めず,肝静脈圧較差に臨床的に有意な上昇は認めなかった.検査結果を総合して混合性結合組織病に合併した特発性門脈圧亢進症により形成された門脈大循環短絡路が原因のシャント型肝性脳症と診断した.意識障害は薬物抵抗性であり,治療として短絡路温存門脈大循環分流術を行った.術後血中アンモニア値は低下し意識障害は改善,門脈圧亢進症状増悪も認めなかった.本症例は混合性結合組織病にシャント型肝性脳症を発症した稀な症例と考えられ,治療として短絡路温存門脈大循環分流術が有効であった.

短報
  • 永井 一毅, 岡 正直, 今井 鉄平, 松丸 克彦, 金森 晃, 武田 浩, 岩澤 孝昌, 寺岡 宏倫, 多羅尾 和郎, 坪井 秀夫, 粉川 ...
    2025 年 66 巻 5 号 p. 205-208
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/16
    ジャーナル フリー

    On June 15, 2023, the Japanese Society of Hepatology announced that the ALT value reflecting the liver function "over 30" will be used as an index for visiting medical institutions. Thus, the Liver and Gastrointestinal Diseases Countermeasure Committee of the Kanagawa Medical Association conducted a self-administered questionnaire survey on the awareness of primary care physicians and industrial physicians regarding "ALT over 30: Nara Declaration" with the aim of raising awareness of "ALT over 30. " Depending on the initial response to liver dysfunction cases, it was suggested that care should be taken to reduce the burden on specialized medical institutions from "excessive referrals. " Furthermore, since it has not been sufficiently recognized in the medical profession, further awareness-raising activities are needed through academic societies to which primary care physicians and industrial physicians belong.

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