門脈圧亢進症とその合併症に関してのコンセンサスを決定するために開催されているBaveno meetingは欧州肝臓学会を中心とした国際会議である.肝硬変とF3程度の高度線維化進展例は明確な区別が困難であることも多いことから,欧米においては慢性肝疾患(CLD)から進行した状態としてadvanced chronic liver disease(ACLD)という表現が用いられており,このACLDが代償性進行性慢性肝疾患(compensated ACLD:cACLD)と臨床的に有意な門脈圧亢進症(CSPH)に分類されている.さらに肝静脈圧較差(HVPG)の測定による門脈圧亢進症の診断がgold standardとされているが1,本邦では門脈圧亢進症の診断のためにHVPG測定を行う施設は少なく,近年では非侵襲的バイオマーカーによる診断が行われるようになってきている.
肝不全に対する根治的治療である肝移植は深刻なドナー不足に直面しており,代替治療の開発が求められている.近年,多能性幹細胞や組織幹細胞を用いた肝臓オルガノイド技術の進展により,失われた器官機能の置換または補填を目指す再生医療への応用が現実味を帯びてきた.本総説では,細胞ソースの多様化,培養条件の体系化に加え,非実質細胞を含む多細胞化や血管化などの技術的進展をみとめている肝臓オルガノイド研究の最新動向を整理する.さらに,ゲノム編集や,イメージング技術,オミクス解析などを駆使することでヒト固有の疾患生物学的理解を深める患者由来オルガノイド研究について紹介する.本章後半では,オルガノイドを基盤とした再生治療戦略の一例として,現在開発が進んでいるバイオ人工肝臓技術について概説する.オルガノイド技術を核とした統合型治療戦略は,肝疾患治療研究の新たなパラダイムを提示する可能性を秘めている.
第24回全国原発性肝癌追跡調査においては,511施設から2016年1月1日から2017年12月31日までの2年間の19,102例の新規症例と42,518例の追跡症例が集計された.基礎統計は,第24回新規登録症例を対象として死因,既往歴,臨床診断,画像診断,治療法別の各因子,病理診断,再発,剖検についてまとめた.第23回調査と比較し,肝細胞癌における臨床診断時の高齢化,女性の増加,非B非C肝癌の増加,腫瘍径の縮小の傾向が,治療においては切除の割合の増加,局所療法におけるラジオ波焼灼療法の増加が認められた.2006年から2017年までの新規登録症例の中で最終予後が生存または死亡となった症例(不明を除く)について肝細胞癌,肝内胆管癌,混合型肝癌の治療法別,背景因子別生存中央値・累積生存率を算出した.肝細胞癌については腫瘍個数,腫瘍径,肝障害度,Child-Pugh分類を組み合わせることにより背景因子を揃えて,治療法別(肝切除,局所療法,肝動脈塞栓療法(TACE)),肝動注化学療法,全身薬物療法(分子標的治療)の累積生存率を算出し,また,1978年から2017年までの新規登録症例を5期に分け,累積生存率を算出した.新規登録症例数は第23回に比べやや減少したが,肝細胞癌,肝内胆管癌,混合型肝癌ともに予後の改善が著しいことが明らかとなった.本追跡調査が原発性肝癌の研究および診療の進歩に役立つことを期待する.
日本の矯正施設におけるC型肝炎ウイルス(HCV)感染者の多くは,覚醒剤の回し打ち歴を有している.本研究では,矯正施設内のHCV感染者の年代によるHCVゲノタイプ比率の変遷を明らかにすることを目的とした.対象は,2008年3月から2025年5月までの間に,宮城刑務所でC型肝炎の抗ウイルス治療を実施した615例.ゲノタイプ1aが8例(1.3%),1bが181例(29.8%),2aが249例(41.0%),2bが167例(27.5%),3aが1例(0.2%),3bが1例(0.2%)であった.5年ごとに区切って解析すると,1950年以前の生まれではゲノタイプ1bが最多,1951~1975年生まれではゲノタイプ2aが最多,1976年以降の生まれではゲノタイプ2bが最多で,徐々にゲノタイプの比率が変化していた.
【目的】人間ドック受診者における肝線維化スクリーニングとして,FIB-4,FIB-3,COREの判別能を比較した.【方法】2022年4月~2024年3月の重複のない受診者591例を対象とした.SWEによる肝硬度≧7.0 kPaを有意な線維化と定義し,各指標のAUROCを算出した.【結果】肝硬度≧7.0 kPaは53例(9.0%)に認めた.AUROCはCORE:0.690,FIB-4:0.637,FIB-3:0.618であり,有意差はないもののCOREが最も高値であった.多変量解析ではCOREが肝硬度≧7.0 kPaの独立した関連因子であった.飲酒歴なし層ではCOREはFIB-3を有意に上回った.【結論】人間ドック集団における各指標の判別能は中等度だが,血小板測定を要さないCOREは,広範な住民健診における一次スクリーニングツールとして優れた実用性を有する.
C型肝炎ウイルス(HCV)陽性例に対するDAA治療促進は喫緊の課題である.2023年4月の検査結果説明漏れ防止策の強化を契機に,医療安全管理室,データセンター,中央検査室が連携し,DWH/BIツールを活用しながらHCV抗体価も考慮し治療対象例を迅速かつ効率的に拾い上げる仕組みを構築した.さらに肝臓専門医を中心に,非専門診療科医や地域連携医とも協同して,対象例に対し直接的に個別勧奨した.Retrospective拾い上げ群(21年12月~23年3月)で15例(HCVRNA陽性例の45.5%),DWH/BIツールを活用したProspective拾い上げ群(23年4月~24年12月)では33例(同67.3%)に治療導入され,その結果治療例は22年6例から,23年18例,24年24例に増加した.治療対象例の迅速で効率的な拾い上げと直接的な治療勧奨は,医療機関内でのDAA治療促進に極めて有用である.
症例は60歳代女性.C型肝硬変SVR後の肝細胞癌に対し,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を含む計8ラインの薬物療法を施行.直近のirAE(immune-related adverse events)膵炎に対するステロイドパルス療法後,アテゾリズマブ+ベバシズマブ再導入後に嘔気・食思不振が出現.上部消化管内視鏡で胃に単発潰瘍,十二指腸に多発潰瘍を認め,胃酸分泌抑制薬を開始.胃潰瘍は改善したが,十二指腸潰瘍は遷延.irAEと感染症の鑑別を目的に生検を施行.免疫染色でサイトメガロウイルス(CMV)陽性細胞を認め,CMV再活性化による十二指腸潰瘍と診断.ガンシクロビル投与により症状および潰瘍は改善.免疫チェックポイント阻害薬治療の長期化・多ライン化が進む肝細胞癌診療では,難治性上部消化管潰瘍に対し,irAEのみならずステロイド治療歴を背景としたCMV再活性化を鑑別に含める必要がある.
症例は70歳代男性.B型肝炎キャリアとして経過観察中,肝S6とS8に緩徐に増大する多血性腫瘤を指摘された.造影CTおよびEOB-MRIでは動脈相で軽度濃染を示すがwashoutは明瞭でなく,PET-CTでも軽度集積にとどまった.腹部超音波および造影超音波検査ではBモードおよびKupffer相で腫瘤は描出されなかったが,動脈相で濃染と腫瘍内血管走行を確認できたため,同相を描出しながら腫瘍生検を施行した.病理組織ではCD20,CD79a陽性,CD10陰性,lymphoepithelial lesionを伴い肝原発MALTリンパ腫と診断した.さらにCD68陽性マクロファージの豊富な浸潤を認め,Kupffer相で欠損像を呈さなかった要因と考えられた.本症例は腫瘍内マクロファージが画像所見に影響する可能性と,動脈相を利用したリアルタイム造影超音波ガイド下生検の有用性を示す貴重な症例である.
患者は40歳代女性.2年前から減量を目的にインターネットで入手した健康食品を摂取していた.全身倦怠感を主訴に前医を受診し,血液検査で肝機能障害を指摘され当院紹介受診となった.当院受診時の血液・生化学検査では,著明な肝酵素上昇とともに肝不全,急性腎不全,DICの所見を認めた.急性ウイルス性肝炎や自己免疫性肝疾患を示唆する所見は認めなかった.本症例では,AST優位の著明な肝酵素上昇およびLDH高値を認め,短期間で改善した臨床経過から,循環不全に伴う虚血性肝障害の関与が示唆された.また,心筋逸脱酵素の上昇も認めており,心原性要素を含む循環不全の可能性が考えられた.一方で,薬物リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test;DLST)において,スピルリナ&クロレラをはじめ複数の健康食品で高値を示し,DDW-J2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリングで10点であったことから,薬物性肝障害の関与も一因と考えられた.ステロイドパルス療法により肝不全,急性腎不全,DICの改善を認め,第28病日に退院となった.薬物性肝障害の診断の際には,長期間摂取歴のある健康食品にも注意を要すると考えられた.本症例のように,急性肝不全においては,単一の原因に限定せず,臨床経過および検査所見を総合的に評価することが重要であると考えられた.本症例ではIL-6がALTに先行して速やかに低下した.IL-6は炎症性サイトカインとして急性期反応に関与することが知られており,急性肝不全においても予後との関連が報告されている.本症例の経過から,IL-6は肝細胞障害マーカーに先行して変動する可能性があり,病態の早期評価や治療反応性の指標として有用である可能性が示唆された.
症例は80歳代,女性.非B非C非アルコール性の慢性肝疾患を背景とする切除不能肝細胞癌に対し,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法(ATZ+BEV)を導入.治療前の上部消化管内視鏡検査では,明らかな潰瘍性病変を認めなかった.ATZ+BEV 2コース投与後14日目に心窩部痛が出現し,CTで腹腔内遊離ガスおよび十二指腸球部周囲の液体貯留を認め,十二指腸球部穿孔と診断した.緊急手術で十二指腸球部前壁に約2 mm大の穿孔を認め,縫合閉鎖および腹腔内ドレナージを施行し救命し得た.穿孔部の病理組織学的検討は行われず,臨床経過からは免疫関連胃腸障害や腫瘍直接浸潤を積極的に示唆する所見に乏しく,発症の一因として,ベバシズマブ関連の粘膜修復遅延や微小循環障害が関与した可能性が考えられた.ATZ+BEV療法中には,治療前の内視鏡で明らかな潰瘍性病変を認めない場合でも消化管穿孔を来し得る.
Wilson disease is an autosomal recessive disorder of copper metabolism. Measurement of serum ceruloplasmin is important for the clinical management of Wilson disease. We report a patient with an unexpected serum ceruloplasmin value. A 41-year-old male had been treated for Wilson disease from childhood and was in a stable condition. His ceruloplasmin concentration had usually been approximately 2 mg/dL. On a medical examination day, his ceruloplasmin concentration was 32 mg/dL. His serum triglyceride concentration was 537 mg/dL. Serum ceruloplasmin was measured using nephelometry. Ultracentrifugation of the serum reduced the concentration of ceruloplasmin to 7 mg/dL. Chylous serum may affect the measured concentration of ceruloplasmin. Therefore, care should be taken when interpreting ceruloplasmin levels in the presence of elevated serum triglycerides.
Timely identification of patients with hepatitis C virus (HCV) antibody positivity is crucial for evaluation and referral. By repurposing a robotic process automation (RPA) tool already deployed for other hospital tasks, we reconstructed our workflow to integrate automated list generation into the existing multidisciplinary framework. Before implementation, laboratory technologists extracted records of HCV antibody-positive patients weekly from the data warehouse and manually entered them into a list. Following implementation, RPA automatically executed the data extraction function and generated the list daily. During the study period, 356 positive results were obtained from 15,506 HCV antibody tests. Manual transcription was eliminated, and a 1-month parallel comparison confirmed RPA–manual extraction concordance. Repurposing existing RPA resources may provide a low-burden approach to enhance hepatitis care workflows in community hospitals.