静岡県下の茶園では, チャ輪斑病菌の主要感染時期の一つである摘採, 整枝直後の防除時期にベンズイミダゾール系殺菌剤の使用を制限しているにも関わらず, 耐性菌の密度が年々増加している原因を明らかにする目的で, 同薬剤感受性菌株, 中等度耐性菌株, 高度耐性菌株のチャに対する病原性の差について検討した.
やぶきた成木茶園を供試し, 感受性菌株群, 中等度耐性菌株群, 高度耐性菌株群を単独あるいは種々の比率で混合して接種した区を設け, 発病程度を調査した結果, 発病葉数, 枯死茎率, 病斑の大きさとも, 各菌株群の間に差は認あられなかった. また, これらの各区より発病葉を採集し, 各病斑より菌を再分離し, ベノミル剤に対する感受性の程度別に分類した. その結果, 感受性菌株群, 中等度耐性菌株群, 高度耐性菌株群を単独接種した区では, いずれの区においても極めて高い比率で接種した菌株群と同じ感受性の菌株が分離されたが, 感受性菌株群, 中等度耐性菌株群, 高度耐性菌株群を混合接種した区では, 感受性菌株の分離率に比較し, 中等度耐性菌株と高度耐性菌株の分離率は同等かやや高かった. また, 供試茶園より採集した発病葉の大部分の病斑からは1病斑内に感受性菌株, 中等度耐性菌株, 高度耐性菌株のいずれか1種類しか分離されず, 1病斑内に, 感受性の異なる複数の菌株が分離された病斑数は少なかった.
これらのことから, ベンズイミダゾール系殺菌剤耐性菌の検出された圃場率が年々増加している原因は, 茶園における耐性菌の適応度が感受性菌の適応度と同等かやや高いこと, および炭そ菌などの病害防除のために新芽の生育期に散布される同薬剤の淘汰圧に起因していると考えられた.
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