ブドウの腐敗果実から病原菌を分離した結果, 腐敗の多くは B.cinerea 菌に起因することが確認され, また, 当該菌は果柄, 果皮, 果肉など多くの組織に感染していることが明らかとなった。 分離結果ならびに貯蔵中における果実腐敗防止を目的とした薬剤防除は以下のように要約される。
(1)圃場において幼果期果房に着生している腐敗果粒から高頻度で B.cinerea が分離され, その分離率は収穫期の障害果実の場合より高かった。
(2)幼果期および収穫期のブドウ果実から B.cinerea を分離したところ, いずれの場合にも果柄と果皮からの分離率が高く, 幼果期果実では腐敗果粒以外に花弁から分離率が高かった。 収穫期果実では, 種子から分離されることもあった。
(3)低温貯蔵中の果実腐敗は, 収穫65日前にイプロジオン水和剤を1回散布することによって2ケ月貯蔵後の果実腐敗を抑制できることが示された。
(4)さらに, 収樣9日前のイプロジオン水和剤追加散布によって, 貯蔵中の果実腐敗の防止が可能であることがわかった。
以上のことから圃場における灰色かび病防除薬剤散布は, 収穫後のブドウ果実腐敗に対して高い防除効果があると考えられる。特に, 収穫前65日および直前のイプロジオン散布は, 貯蔵中の腐敗防止対策として有効である。
抄録全体を表示