ホウレンソウ萎ちょう病菌の菌叢伸展に及ぼす 5-フルオロインドール (5-FI), 4-フルオロインドール (4-FI) および5-ブロモインドール (5-BI) の3種のインドール類縁化合物の抑制効果を検討した。 その結果, 菌叢伸展はこれら化合物によって顕著に抑制され, 最小阻止濃度はそれぞれ15, 20および50μg/mlであった。 このうち, 5-FIと4-FIによる抑制作用はトリプトファンもしくはその代謝中間産物であるアントラニル酸の添加によって解除されたが, 5-BIによる抑制はトリプトファン, アントラニル酸, セリンのいずれを添加しても解除されなかった。 このことから,前者はトリプトファン代謝に含まれるアントラニル酸シンターゼ, 後者はトリプトファン代謝とは別の代謝系を阻害する可能性が示された。 次に, ホウレンソウ萎ちょう病菌とは分化型の異なるトマト萎ちょう病菌,イチゴ萎黄病菌, メロンつる割病菌についても上記のインドール類縁化合物に対する感受性を検討したところ, 3種の化合物ともこれらの病原菌に抑制効果を示したか, 5-FIと4-FIについては分化型間で感受性の差異が認められた。 特に,25μg/mlの4-FIを加えたッアペック培地では,4分化型菌の菌叢伸展に明確な差異が認められ,菌叢直径に基づいてそれぞれの分化型を識別することが可能であった。 本研究では, このような検出法を遺伝子標識モニタリング法に適用し,インドール類縁化合物の利用により土壌からの
Fusarium属菌の分化型を選択分離できる可能性を明らかにした。
抄録全体を表示