一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
(一社)日本家政学会第56回大会
選択された号の論文の261件中101~150を表示しています
  • 大藪 千穂, 杉原 利治
    セッションID: 2-3-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    目的 アメリカで現在も200年来のライフスタイルを守り、持続可能な社会を保持しているアーミッシュが、彼らの主要な情報源である雑誌Family Lifeにおいて、次世代を担う子供たちをどのように教育しているかを明らかにする。方法 子供向けの”Children’s Section”の記事 (1996年_から_2002年まで計359件)を分析対象とした。まず記事を形態 (戯曲・劇・脚本、歴史・伝記・紀行文、韻文・詩、伝説・神話・民話、小説・物語、説明文・論文・教訓・解説)と表記方法(文字のみ、文字と絵)によって分類した。次に記事中の登場人物の年齢と行動(生理的行動、仕事、通学、学業・文化、消費・貯蓄、レジャー・遊び、社会参加)を通して、どのような価値観(感覚的、生命的、心的、精神的感情)を伝えようとしているかを分析した。また、記事がどのような空間(小、中、大規模システム)と時間の流れを扱っているかについても分析した。結果 “Children’s Section”の記事は、身近な空間において、日常的な子供の遊びの場面を物語形式(文字のみ)で多く扱っている。そして、心的感情と生命的感情に関する価値観を主に扱い、登場人物の感情の変化を通して、アーミッシュ社会の維持・防御に貢献するように導かれている。以上の結果から、”Children’s Section”を通して、子供たちは家やコミュニティの大切さ、謙虚さ、協調性を学び、これらによって子供たちの価値観が形成され、アーミッシュ社会が持続可能であることに寄与していることが明らかとなった。
  • 高田 千秋
    セッションID: 2-3-16
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    B<目的>/B 専門書だけでなく、テレビ、雑誌などのマスメディアや日常の会話においても「金銭感覚」という言葉を見聞きする。しかし、それらがどのような内容を指しているのか今まで曖昧に用いられてきた。本研究では対象を学術論文に絞り、「金銭感覚」という用語がどのように用いられているのかを調べ、その言葉の指す内容を整理することを目的とする。 B<方法>/B NACSIS-IRを使用して、題名に「金銭感覚」を含む論文を検索し、研究分野、研究形態、「金銭感覚」の用例、「金銭感覚」の扱い(定義)、「金銭感覚」の指標を分析する。 B<結果および考察>/B 研究分野には、経済学、教育学、家政学、社会学と多岐にわたる。「金銭感覚」に続く語には、高い、低い、軽い、崩れ、損なう、麻痺する、養う、歪む等様々である。ネガティブなものが多く、「金銭感覚」という言葉は良いイメージを持たれていないことが伺える。論文題目には「金銭感覚」という言葉があっても、本文中には一度も出てこないものもあった。調査の形態をとるものが約半数あり、お金に関する生活の実態調査も多い。「金銭感覚」を調査するための指標には、「大金と思う金額」や「小銭だと思う金額」などを問うものや、お金に関わる行動やお金に対する考え方を問うものなどがある。「金銭感覚」の定義を明記してあるものは非常に少なかった。こづかい、親の消費行動、金銭の貸し借りなどの交友関係の他、様々なものが「金銭感覚」に影響を与える要因に挙げられている。このように、「金銭感覚」の指す内容は広範囲にわたり、金額の大小感覚のような直感に近い感覚から、人生観や価値観を反映したものまで、すべてが「金銭感覚」という一語でまとめられていることが明らかになった。
  • - 日本家政学会員への調査を手がかりとして -
    飯田 範子, 倉元 綾子, 鈴木 真由子, 内藤 道子, 野田 文子, 室 雅子, 山口 厚子, 吉井 美奈子
    セッションID: 2-3-17
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】本研究では、大学教育における家政教育カリキュラムの内実と今後の展望を明らかにすることを目的とする。具体的には日本家政学会員に行った調査結果を手がかりとして、「家政教育」についての概念認識を明らかにするとともに、大学・学部における「家政教育系」開講科目・テーマ の現況と家政教育の発展のための今後の方向性を展望する。【方法】郵送法・質問紙自記式調査を平成15年5月下旬_から_6月中旬に日本家政学会会員1000名を対象に実施、有効回収率30%であった。調査内容は_丸1_「家政教育」の概念認識_丸2_大学・学部の一般(教養)・総合・専門教育の「家政教育系」開講科目・テーマの現況_丸3_今後の研究・教育上の連携必要領域・カリキュラム等の三点である。また、現況・展望については併せて、改組前後の大学教育のカリキュラムの実際を事例的に考察する。【結果と考察】「家政学教育」と「家政教育」の概念認識は66.4%が差異を認識、教育の「対象」と「志向性」の認識に違いが見られた。「家政教育系」開講科目・テーマの現況は、専門教育では「食物」・「被服」領域が多く、「原論系」の名称は「生活科学原論系」が「家政学原論系」を上回る傾向であった。一般(教養)・総合等の「家政教育系」の開講状況は1999年の研究と比較した結果、「家政系学部」「教員養成系学部」では「家政学」領域が減少、「環境」「消費経済」「福祉」領域が増加、「一般系(家政系以外の学部)」では「家政学」領域の増加の傾向がみられた。「家政教育」の推進発展にむけて今後は、多領域を架橋する教育上・研究上の連携とカリキュラムの開発の必要性が示唆された。
  • - 免許取得学部・教員年齢層と家政教育の関わり -
    室 雅子, 黒川 衣代, 高部 和子
    セッションID: 2-3-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】学習指導要領の改訂により教科としての家庭科は変化しつつある中、現場の教員は過去に大学で学習した家政教育を元に各自の努力によって変化に対応している。家庭科の免許を持つ教員は家庭科教員として教科の全領域の担当を期待されるが、教員個々の科目履修歴には免許取得学部や年齢層による偏りがあると考えられる。本研究では、免許取得学部別および年齢別にみた科目履修歴の具体的な偏りの現状を明らかにすることにより、今後の教員養成の場である大学での家政教育や教員研修に必要な事柄を検討する。
    【方法】家政教育委員会(現家政教育部会)にて1998年に実施された全国公立中・高家庭科教員285名対象の「家政教育に関する調査」(無記名自記式、郵送法、回収率51%)における各領域の履修程度を得点化して分析。履修程度は主観によるが、履修認識=定着記憶と判断し、解釈を行った。
    【結果】各領域の履修程度と免許取得学部との関連はあったが、それほど強くはなかった。教員養成系は履修の偏りが小さく、家政・生活科学系は偏りが見られた。食物領域は各学部とも履修度が高かったが、住居・家庭経営領域は全体に低く、被服領域は学部・学科差が他より強く出る傾向が見られた。年齢層別では、領域や個別項目において、高齢者の福祉、保育実習、住居領域など近年重要視される内容ほど履修歴に年齢差がみられた。総合力のある教員の育成支援として、教員養成では卒業までの各学部・学科に合った履修の偏りの是正補習、教員研修では経験年数によるレベル差のみではなく年齢層別の履修経歴に配慮した補習が必要であることが明らかとなった。
  • - 測定項目の作成と父親・母親と中学生の意識の関連 -
    日景 弥生
    セッションID: 2-3-19
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    <目的>中学生とその保護者を対象にジェンダーに対する意識(以下、ジェンダー観とする)を把握するために、その測定項目を作成し、中学生とその保護者のジェンダー観を比較し、両者の意識の関連を検討した。<方法>1.測定項目;東京女性財団のジェンダーチェックを参考に5つのカテゴリーごとに4_から_5項目を設定し、計24項目を作成した。2.調査時期と対象;2000年5_から_6月に中学生426名、保護者808名を対象に調査を行い、中学生353名、保護者483名の有効回答が得られた。3.ジェンダー観の比較;中学生とその保護者間のそれぞれのアンケート項目で近似した項目を比較した。さらに、中学生と保護者を男女に分け、それぞれ得点の高い者(以下バイアス群)と低い者(以下フリー群)から順に約20%を抽出し、各群を分析した。<結果および考察>1.ジェンダー観測定項目;中学生は32_から_59点に、保護者は26_から_58点の間に分布した。これらのうち、点数の低い者(フリー群)と高い者(バイアス群)をそれぞれ20%抽出し、リッカートの簡略法により測定項目を決定した。その結果、中学生22項目、保護者23項目が得られ、これらをジェンダー観測定項目とした。2.中学生とその保護者のジェンダー観;アンケートの結果から、保護者の方が中学生より、また、両者とも女性の方がジェンダーフリー傾向にあることがわかった。3.両者のジェンダー観の関連;両親がフリー群の場合は中学生もフリー群が、両親がバイアス群の場合は中学生もバイアス群が多くなった。これより、父親と母親のジェンダー観が似ている場合、その子どもである中学生も両親と同じ傾向となることが示唆された。
  • 岡野 雅子, 山本 真由美, 依田 多恵
    セッションID: 2-3-20
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】 学校教育のあり方が見直されるなか、家庭科教育は家族のあり方や人間関係、子育ての意義などを一層充実するように改訂された。そこで、幼稚園児の母親を対象として調査を行い、親になって改めて学校教育で取り上げる必要があると考える保育教育の内容は何であるか、また母親たちの育児に対する不安や考えについて検討し、それを通して中学校・高等学校における保育教育の果たす役割と有効性についての考察を試みた。【方法】 長野県の幼稚園児の母親979名に質問紙調査票を配布し686名から回収(回収率70%)、うち有効回答数682名を資料とした。調査実施期間は2002年9月-10月。【結果と考察】(1)「家庭科で保育領域の授業を受けた」と回答したのは中学で21%、高校で29%、記憶に残る内容は「生命誕生」「妊娠・出産」「保育体験学習」「発育・発達」が比較的多い。(2)親になって改めて取り上げる必要があると思う内容は「保育体験学習」を過半数が挙げ最多で、「命の尊さ」「家族の大切さ」「救命法・安全教育・看護」「生命誕生」「父母で関わる」等と続く。(3)授業経験の有無別に見ると、必要と思う保育領域の内容として「家族の大切さ」「父母で関わる」「保育の必要性・意義」「生命の誕生」は授業経験有群が無群に比べて多い。(4)何を頼りに育児をしているかは「実母」「育児書・インタ-ネット」がそれぞれ7割を超えている。育児に関する不安は「病気やけが」「しつけ」が多いが、乳幼児との接触体験有群は必要と思う内容として「救命法・安全教育・看護」を挙げる率が高く、不安を解決しようとする姿勢がうかがえる。(5)以上の結果から、保育体験学習により子どもへの興味関心を喚起し、「いのち」の重みを理解して親になるための心構えを身につけることが重要であると、母親たちは考えているといえるだろう。
  • 村上 陽子, 藤本 麻子, 前田 英雄
    セッションID: 2-3-21
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、生活習慣の不摂生による疾病(生活習慣病)の増加が社会問題となっている。しかし、その一方で妄信的といえる健康ブームが起こっている。こうした中、誤った情報や科学的根拠を持たない風説により、健康を害する健康危害も増加しており、最近ではそれが低年齢化するなど問題が深刻化している。しかし、子どもの興味・関心の高さに対して正しい知識や客観的な判断力が追いついていないというアンバランスが生じており、その危険性を指摘する声も多い。健康ブームの多くは食に関するものであり、学校教育においては家庭科が果たす役割が大きいと期待されるが、現在の家庭科の食領域は調理など基礎的な技能の修得に留まっており、現代的な内容は殆ど取り上げられていないのが現状である。本研究では健康ブームの問題点を明らかにし、家庭科に求められる役割について検討する。【方法】若者の健康に対する意識を知るため、ダイエットとサプリメントに着目し、中学生と大学生にアンケート調査を行った。また、各発達段階における情報受信の相違点を見るために、中学生向け雑誌と大学生向け雑誌の比較を行った。【結果】雑誌比較の結果、対象年齢が低いほど一方的な情報を鵜のみにする危険性が見られ、子ども達は健康ブームの被害者となる危険性を孕んでいることが示唆された。次に、ダイエット・サプリメントに関するアンケート調査から、性別年齢を問わず関心が高いという結果が得られた。思春期は体の土台を作る大切な時期であり、この時期の誤った食行動は生涯に渡って健康に影響を及ぼす恐れがある。以上より、家庭科は健康ブームをはじめとする現代的な課題に取り組み、正しい知識や判断力を育成する必要があると思われる。
  • - 透湿性について -
    佐々木 栄一, 川又 勝子
    セッションID: 2-3-22
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【はじめに】 被服材料の水に対する性質(水処理機能)は重要である。そのうち吸水性と撥水性については、簡単に行える実験教材をこれまでに報告した。 透湿性は被服材料の水蒸気処理機能であり、同じく重要な性質である。通常透湿速度や透湿抵抗を測定するが、短時間で行える実験が少ない。本研究では、簡単な装置を用いて短時間で透湿性を示すことのできる実験方法について検討し、汎用繊維製品や高密度透湿性繊維製品について適用することを試みた。
    【方 法】 透湿性は、透湿度試験〔JIS L 1099 〕などを参考にして、布を通過する水蒸気量を1)蒸発法、2)吸湿法、3)変色法(吸湿剤の吸湿による変色を利用)による実験を行った。1)蒸発法では、常法により水の減少量から、また2)吸湿法では通常使われる塩化カルシウムの他に青色シリカゲルを用い、これらの吸湿量から透湿量を測定した。3)は青色シリカゲルを用いてその変色する時間変化を、1)を改良した方法により測定した。さらにこれらの結果をフラジール型通気度試験機による通気度試験の結果と比較した。
    【結 果】 1)蒸発法、2)吸湿法ともに実験を30分(1時間の授業を想定した時間)で行た。冬季に実験を行ったため湿度を75_から_80%になるように加湿して実験を行ったが、良好な結果は得られた。しかし、夏季に常温常湿で行った時と比較すると、やや不安定な結果となり、加湿の方法や試料の調整方法をさらに検討する必要が示唆された。3) 常温の変色法実験では、シリカゲルの変色時間は汎用繊維布帛間でも、また高密度透湿性布帛との違いも小さく、シリカゲルの使用量や実験温度に注意が必要であった。また、変色の尺度を設定する必要も見られた。また、透湿性と通気量との関係を比較すると、汎用繊維では相関がみられた。
  • - 吸水性繊維・撥水性繊維について -
    小野寺 泰子, 川又 勝子, 佐々木 栄一
    セッションID: 2-3-23
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【はじめに】身近な被服材料には様々な性質があり,我々はその中から必要とされる性質をもつものを選択して使用している。その中でも,吸水性と撥水性については日常生活の中で特に着目すべき性質として授業の中で取り上げられるものと考える。汗をかいたときの下着の役割や雨や雪が降ったときの上着の役割などを考えた様々な被服材料の選択は,より分かりやすい方法で実験を行うことにより理解させられる。そして,それら実験教材は簡単な装置と短時間で行うことが必要である。本研究では,小学校家庭科被服学習に用いることができる吸水性繊維と撥水性繊維についての実験教材を検討した。
    【実験教材・教具の工夫開発】実験教具(器具)は,安価でどこでも入手できる材料を用いる簡単な器具・装置を考案した。透明プラスチック製飲料用コップ,割り箸,輪ゴム,ビーカー,刺繍枠,数種類の布を使用するものである。吸水性の実験方法はバイレック法を参考にした簡易な吸い上げ実験法と水滴滴下法とよる実験を行った。また,撥水性については,布を刺繍枠に被せて輪ゴムで固定し,その上からスポイトで水を数滴ずつ滴下し,布表面での水滴の形状を観察・記録したり,転がる様子などを観察する実験を行った。
    【結 果】この簡単な実験により,吸水性については短時間でポリエステル繊維や木綿などとの吸水性の違いが明確に示された。また,水滴滴下の実験ではポリプロピレンなどが木綿などの天然繊維に比べてかなりの撥水性を示すことや,さらに超極細繊維から作られた布は安定して大きな撥水性をもつことを容易に示すことができた。これらは簡単な実験なので,適切な被服を選択することが目的とされている小学校家庭科の授業の中で扱えるものと考えられる。
  • 山口 江利子, 小松 恵美子, 森田 みゆき
    セッションID: 2-3-24
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    (目的)身近な材料である玉ねぎ外皮から抽出した色素を用いる媒染染めの教材化を検討している.環境汚染の問題となる金属を含む媒染廃液処理工程の教材のために顔料生成の基礎研究が必要である.本研究では,玉ねぎ外皮色素主成分であるクエルセチンと媒染染色によく用いられるアルミニウムを用い,染色や顔料生成に必須である錯体生成について,アルミニウムの濃度の影響を検討した.
    (方法)1.0x10-4Mクエルセチンと1.0x10-3M塩化アルミニウムのメタノール溶液を用いた.錯体を形成させるため,1.0x10-4Mクエルセチン溶液1.5mlに5.0x10-5_から_1.0x10-3Mアルミニウム1.5mlを加え,20℃で180分間反応を行った.クエルセチン-アルミニウム錯体溶液の吸収スペクトルの経時変化は日立製分光光度計U-2010を用いて測定した.
    (結果および考察)5.0x10-5Mクエルセチンに対して2.5x10-5_から_5x10-4Mアルミニウム濃度範囲での錯体形成反応では,アルミニウム溶液混合後,クエルセチンの極大吸収波長が長波長側にシフトしはじめた.反応時間90分で極大吸収波長は370nmから450nm付近へと徐々に長波長側にシフトした.クエルセチン/アルミニウムのモル比と極大吸収波長の吸光度の関係から,クエルセチン-アルミニウムの錯体の錯体組成はクエルセチン:アルミニウム=1:3であることがわかった.
  • 村井 陽子, 水野 浄子, 樋口 寿, 岡崎 久美, 平井 和子
    セッションID: 2-3-25
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】小学生を対象に学校給食に使用する豆の種類と働きについて栄養指導し、豆類への認識に対する教育効果を検討した。【方法】平成15年4月から16年3月に大阪市内の小学生1_から_6年生(451名)を対象に給食の豆類献立時にプリント「もっと知ろう豆」を配布し、嗜好調査を行った。あわせて実物の展示、資料の掲示、クイズ等を実施し、更に指導前後における豆類の知識、嗜好、摂取頻度についてアンケート調査を行った。【結果】指導前、大豆、小豆、黒豆、えんどうの認知度は90%以上で、高学年で高い傾向がみられた。金時豆、とら豆、白花豆、でぼ豆の認知度は指導前46%以下であったが、指導後77%以上へと増加した。指導前後で「豆類が好き」が各々26%と23%、「嫌い」が各々15%と19%であったが、高学年で「好き」が少なく「嫌い」が多い傾向がみられた。豆使用献立の嗜好調査でも同様な傾向がみられた。家庭での豆の摂取頻度は「殆ど毎日摂取」が指導前後各々5%、「殆ど摂取しない」が各々30%であった。大豆への知識について3色食品群による分類を指導前後で比べると、赤と答えた割合が51%から88%へ増加し、黄色が36%から4%へと減少した。大豆の「働き」に対する理解は21%から77%へ、「畑の肉」としての知識は33%から91%へと増加した。給食の豆使用献立の残食率は前年度と比べてほぼ半減した。これらの結果は、栄養教育によって豆類への知識は増え、給食の豆使用献立の喫食率も増加したが、自宅での摂取頻度は少なく、今後は家庭での提供頻度を増加させるために保護者への栄養教育の必要性を示唆している。
  • 李 温九, 鎌田 早紀子, 章 貞玉, 片岡 あゆみ, 尾崎 彩子, 冨田 圭子, 大谷 貴美子
    セッションID: 2-3-26
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】飽食の時代にあって、食に関する様々な問題は子供たちの間でも大きな課題の一つとなっており、特に、学童期は学校給食を通して食の自立と社会化を図り、生涯にわたる望ましい食習慣を身に付ける上で大切な時期である。学童期の食に関する指導がより効果的に行われるためには、子供たちの嗜好と共に彼らが食をどのように捉え、それが子供たちの日常生活とどのように関わっているのかといった実態を把握しておくことが重要である。そこで、本研究は日本と韓国の小学生を対象に子供たちが描いた絵を通して、子供たち自身の食嗜好と食の捉え方を明らかにすることを目的とした。【方法】日本(京都府)と韓国(ソウル市)の小学生1-6年生を対象に2002年7月から11月にかけて調査を行った。画用紙を配布し、子供たちに誕生日に食べたい料理を好きなだけ絵に描いてもらった。画用紙の配布、回収は各小学校に委任した。統計処理はExcel統計を用いた。また、6年生の絵を対象にSD法を用い、絵のイメージ調査を行った。【結果及び考察】誕生日に食べたい物の絵を通して、日韓の小学生の食嗜好を調べたところ、両国とも伝統食が姿を消していることが示唆された。日本では赤飯を描いた児童が全校で一人であり、韓国では誕生日に食べるとされている「わかめスープ」を描いた児童は1割にも満たなかった。また、両国ともファストフードの出現頻度が高く、食の外部化、欧米化が現れていることが示唆されたが、韓国でより顕著であった。日本の子供たちは個人の食べたいものだけを描いている傾向があったが、韓国の子供たちは一緒に食事をする人の食器など食空間が感じられる絵が多く、両国で食事観の違いが見られた。本研究を通して、食教育には食べ物だけでなく、一緒に食べる人を含め、総合的に食空間を捉えることができるような指導のあり方が必要であることが示唆された。
  • 佐藤 真弓, 神部 順子
    セッションID: 2-3-27
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、食に対するシステマティックな教育、すなわち食育の重要性に関する議論が盛んである。健康で自立した食を営める人間を育てるために小児期からの食育は重要であり、保育士はその実践者として一翼を担う。食育は保育士養成教育の小児栄養科目において特に取り上げられるべきであろう。本研究では保育士養成教育で使用されている小児栄養の教科書中に食育がどのように捉えられ表現されているかについて分析を行い、今後どのように展開すべきか可能性を探ることを目的とした。【方法】2000年厚生省保育所保育指針および2002年の保育士養成課程に関するカリキュラム編成改正を反映しているであろうと思われる、2002年以降発行の小児栄養教科書の中で入手可能な10冊について比較検討を行った。食育について触れられていると考えられる部分の表現、章立ての有無、ページ配分など教科書の構成、また食育の概念、意義、目的、方法、対象など内容に関する調査を行った。【結果】食育という表現で章立てされている教科書は10冊中になく、食育と同等もしくは類似した表現として食教育で2冊、栄養教育で2冊、他に食習慣指導、栄養・食生活指導といった表現で章立てがなされていた。各ライフステージの章で各論的に食育に触れているものが4冊だった。食育関連部分ページ数の全ページ数に対する比率は0%から23.4%のものまで見られ、5%未満のものが6冊もあった。食育の内容に関しては各教科書で特色が見られ類似点はあるものの、食育の概念規定の明確な統一性は見られなかった。食育の重要性をより認識させるためには教科書自体の構成に改善の余地があることもわかった。
  • 田崎 裕美, 増田 啓子, 神部 順子
    セッションID: 2-3-28
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    _I_.緒言・目的 介護福祉士養成教育において、家政系科目である家政学概論、家政学実習は要介護・要支援状態にある高齢者・障害者に対して、科学的論拠に基づく生活支援を行ううえで、重要な意義を持つ科目である。しかし、先行研究や養成教育に関する実態調査では、家政系科目の教育効果が本来の意義を充分に果たしているとは言い難い状況にあることが、明らかとなっている。そこで、本報では家政系科目の内容が学生にとって、介護現場での実践力につながるものとなるために、食生活領域の内容について具体的な検討を行うことで、養成教育における家政系科目の向上を目指すことを目的とする。_II_.方法 1.先行研究や既刊のテキスト調査等により、家政系科目の食生活領域の課題について明らかにする。2.学生の施設実習・居宅実習での生活支援に関する実態と課題をアンケート調査から明らかにする。この結果を食生活領域に関する厚生労働省の細則やテキストと照合し、授業内容の目次・内容構成について具体的な検討を行う。_III_.結果 1.介護現場では、高齢者や障害者の身体特性や生活環境の個別性に応じて、自立支援や自己選択につながる助言や生活支援が必要とされている。既刊テキストの食生活領域の内容は家政学の学問体系のなかで展開されているものが多く、何のための知識・技術なのか介護現場での実践に結びつく記述が少なかった。 2.介護福祉士養成教育課程の学生の生活支援に関する資質には大きな格差がみられる。学習内容を学生の生活事象と結びつけるワークシートを設けることで、学習内容の理解を深めるよう配慮した。さらに、施設や在宅での食生活支援の実態や課題に対応した科学的な論拠に基づく知識や実習内容を教材化することで実践力の育成を図れるよう配慮した。
  • 増田 啓子, 田崎 裕美, 神部 順子
    セッションID: 2-3-29
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    1.緒言・目的 介護福祉士養成教育において、家政系科目である家政学概論、家政学実習は要介護・要支援状態にある高齢者・障害者に対して、科学的論拠に基づく生活支援を行ううえで、重要な意義を持つ科目である。しかし、その教育効果は本来の意義を充分に果たしているとは言い難い状況にあることが、これまでの研究によって明らかとなってきている。本報では家政系科目の内容が学生にとって、介護現場での実践力によりつながるものとなるために、食生活領域の授業内容について具体的な検討を行うことで、養成教育における家政系科目の向上を目指すことを目的とする。2.方法 _丸1_介護特別養護老人ホームやデイサービスセンター等のレクリエーション(おやつ作り等)の実態を調査する。_丸2_これらの実態を厚生労働省の細則や既刊テキストの食生活領域の内容と照合することで食生活領域の課題を明らかにし、授業内容について具体的に検討する。3.結果 _丸1_特別養護老人ホームやデイサービスセンター等の介護施設の現場では、一日の食生活が栄養士によって管理され、高齢者や障害者の身体特性の個別性に応じた食事サービスが提供されていた。レクリエーションでの調理は利用者の生活に潤いを与える重要な活動として、位置づけられていた。_丸2_既刊テキスト等の食生活領域の内容は介護施設における食生活の実態に沿った記述が少なかった。授業内容の検討では介護の理念である利用者の自立支援や自己選択につながる食生活支援を踏まえた教材を作成した。
  • 岸本 満, 岩西 恩, 山本 彩, 大谷 美都里, 樫尾 一
    セッションID: 2-3-30
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 問題解決型演習はメンバーの力を総合し、演習を通じ学んでいく学習方法である。自ら提起した事柄の問題点は何か、それを解決するには何をどう働きかければ良いかをグループで討論し,調査、計画、実行し発表する。能動的な学習形態の1つといえる。本演習授業における問題解決の対象は大量調理をおこなう「フードサービス実習」の衛生管理システムである。受講生(2年生)は1年次にこの実習を体験し、本演習と並行して実習を実施する。したがって、実習室を“自分の現場”として、衛生管理の評価と改善を行うことになる。演者らは家政系および栄養士養成課程教育において実務、実践的能力の開発は重要であると考える。本研究の目的は問題解決型演習による学習効果の測定と評価を行い、能力開発のための教育手法を検討、評価することである。方法 受講生はフードサービス実習における衛生管理は現状で十分かを自問し問題を提起した。次にその問題に取り組む理由・根拠を明確にするため現状診断を行い、診断結果に基づき改善提案を行い、改善計画を策定し、改善のための活動や教育指導計画を立案した。各段階でレポートを提出させ各チーム毎に成果を発表させた。最後に授業アンケートを実施し学習効果の自己評価等から本演習授業の評価を行った。結果 受講生は衛生管理に強く興味関心を持った(50%)。授業には意欲を持って取り組み(67%)、栄養士として衛生管理は重要な業務であると認識した(100%)。そして、本演習授業を通じ知識が増え(66%)、将来役立つ経験をした(48%)。概ね自己評価もチームメンバーに対する評価も高く、達成感を感じさせることができた。問題解決型演習は受講生の意欲、積極性を引き出し学習対象への興味、関心、知識を高めた。
  • - 高等学校における「総合的な学習の時間」と関連して -
    河内 久美子, 田畑 圭介, 可部野 和子, 粟津原 理恵
    セッションID: 2-3-31
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 本学は家政系の生活文化学科に、食物分野の食物栄養専攻、被服分野のファッションデザインコース、住居分野のスペースデザインコースを設置している。近年、入学者の傾向として指向性や習熟度の差が広がり、さらに平成15年度より高等学校に導入された文部科学省新学習指導要領による学習歴の変化が新たな影響を与えると予想される。そこで、改訂の主軸にあげられる「総合的な学習の時間」に着目し、高等学校における授業の現状を把握し、今後の短期大学の教育方法改善の手掛かりを探ることにした。【方法】 石川県下の国公立並びに私立高等学校(定時制・通信制を含む)全62校に郵送した平成15年度現在の「総合的な学習の時間」実施状況についての留置式質問票の回答(分野別複数回答を含め有効回収数票:32校38票)を基礎資料とし、先行実施校の資料研究並びに担当者への聞取りを行った。集計結果よりもむしろ学習効果についての自由記入の内容に着目し、問題点を改善しプラス面をさらに延ばす方向を探った。【結果】 高等学校における「総合的な学習の時間」は途についたばかりであり、傾向を的確に把握することは難しいが、「生徒が自分達で課題に取組む姿勢がみられるようになった」「自分の言葉でまとめたり、書いたり、大勢の前で発表することが上達した。」などの評価があがっている。反面、学校によっては高等学校でも生徒の興味や問題解決能力、学力の個人差が広がり、指導の難しさが指摘された。また新指導要領については家庭科の時間数減少も別項目として浮かびあがった。これらを踏まえた教育方法工夫の視点として、1)テーマ設定への準備・助言 2)目標の設定 3)評価方法が考えられる。
  • - 習熟度による被服構成学実習の試み -
    可部野 和子, 河内 久美子, 田畑 圭介, 粟津原 理恵
    セッションID: 2-3-32
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 近年、入学者の傾向として指向性や経験・技術の差が大きくなっている。本学入学者の高等学校における家庭科、特に被服の学習歴を調査した結果では、被服構成に関わる授業経験はかなり限られており、家政系出身者であっても選択科目の履修状況は一律ではない。従って、本学1年次の「被服構成学実習I・II」においては、技術の差が大きく、授業の進め方や評価の基準が非常に難しい。一方で、石川県下の国公立並びに私立高等学校に実施した質問紙調査や聞き取りの結果では、生徒達の「選択したテーマについての自主学習態度、発表能力の向上」がうかがえた。そこでこれらの経験を活かせるような要素を組み込んだ実習プログラムを検討し、個々の能力をより効果的に高める授業形態を見出すことを目的とする。【方法】 少人数できめ細かい指導が可能となった平成13年度から本学で取り組んでいる被服構成学実習の事例結果を分析する。1年次前期「被服構成学実習I」で基礎的な技術を習得させ、「被服構成学実習II」では製作課題をブラウスのデザイン及び製作としながらも、あらかじめ条件を提示し、取り組む学生に自主的な選択の余地を与えている。【結果】 クラス内には専門科目を履修した家政科出身者もおり、家庭内での経験差も加わって、習熟度の差は否定できない。そのため、進度にばらつきがあり、製作過程も違うため、ほぼマンツーマンで指導した。縫製知識・技術を伴わない目標の設定もあるが、時間と意欲によって補っている。しかしながら、全員が同一の製作をしていないため自分が理解していないと進めず、説明を真剣に受けるようになった。好みに合った作品に取り組ませることが意欲につながっているようだ。
  • - 家庭科衣生活から総合的な学習の時間への発展 -
    小松 恵美子, 山口 江利子, 森田 みゆき
    セッションID: 2-3-33
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:家庭科での衣生活に関わる学習を科学的な視点で発展させた,総合的な学習の時間の教材を検討している。前報SUP1)/SUPでは,「洗濯」と「染色」は物理化学的には同じであるという視点から,植物染めと土顔料染めに発展させる教材を提案した。本研究では,小学校家庭科「衣服のはたらきと素材・洗たく」での学習成果を,小学校の総合的な学習の時間で更に多方面へ発展させることを目的として,実践教材の検討を行った。BR方法:まず,小学校家庭科の「衣服のはたらきと素材・洗たく」で学習させるべき内容から,鍵概念となる科学的な事象の抽出を行った。次に,鍵概念に関連する学問の分野を選定,または独自に指定することを試みた。この鍵概念と関連分野を手がかりとして,総合的な学習の時間での教材の展開方法を考察した。BR結果:小学校家庭科では,衣服の「1はたらき」と「2素材の特徴」を学び,「3目的に合った衣服」を選ぶ重要性を学習する。また衣服を着用して「4汚れ」た場合,「5洗濯」することで再び「6きれい」な衣服にする必要性も学び,その技術も習得しなければならない。以上の1から6の相互に深い関わりを持つ事象が,鍵概念として抽出された。「総合的な学習の時間」へ発展させるために,これらの鍵概念に関連する分野として「汚れと繊維」「染料と顔料」「染色と繊維」「洗濯の歴史」「染色の歴史」の5つを定めた。6つの鍵概念と5つの分野はそれぞれ重なり合う部分が大きいため,多様な方向での教材発展が可能であることが考察された。BR1)平成16年度日本家庭科教育学会第47回大会研究発表会発表予定。
  • - 死の不安に関する多次元的尺度をもちいて -
    得丸 定子
    セッションID: 2-3-34
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】家庭科等において、生と死を中心課題とした「いのち教育」を展開するに当たって、死の様々な様相に関連して生じる不快な感情が強く伴うことは当然である。それらの不安を分析し、「いのち教育」の展開時の配慮要因を探ることを目的とした。
    【方法】2003年10月から11月、ホエルターの「死の不安に関する多次元的尺度(MFODS)」を基に、高木等の宗教観尺度の一部を加えて質問紙を構成し、新潟県他2大学の学部学生(計623人)に自記式質問紙法で調査した。
    【結果】ホエルターの行った結果(米国学部学生375人、1979年)では、死の不安に対して8因子(因子負荷量±0.33以上)が検出されたが、本調査(因子負荷量±0.4以上、国内3大学別結果は同質)では8因子中3因子がα係数0.6に達しなかった。故に顕著に標準偏差がはずれている項目を除外後、6因子(α係数0.6以上)と他の項目との検討を行った。
    結果として、宗教心が低いほど「死体に対して抱く不安」が高く「死後に生じる肉体の変化に対する不安」が軽減されていた。女子学生は「死んでいく過程」「肉体が傷つけられること」「身近な人の死」「死後に生じる肉体の変化」「人生を未完なままで終えること」に対する不安が男子学生よりも高かった。身近な人の死に立ちあった経験のある人は「死後に生じる肉体の変化に対する不安」が低かった。信仰する宗教を持っている方が「死んで行く過程」「死後に生じる肉体の変化」に対する不安が高かった。詳細な結果考察は発表時に行うが、本調査結果内において、「いのち教育」を展開時に、教育対象者に対する具体的配慮点がいくつか示された。
  • 澤田 亘生
    セッションID: 2-3-35
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 将来予測される地震にも備えて市民の防災に関する意識や知識を向上させ、今後生徒から親へ、親から地域へ広がる防災教育を構築するための示唆を得るために、現在の家庭科教科書の住居領域における防災教育の内容を明らかにすることを目的とする。
    方法 高等学校「家庭総合」教科書8冊で取り上げられている防災教育に関する内容を、災害の特徴、対策、法律、被害の記述に分類し、防災教育の取り扱いの程度を考察した。
    結果 高等学校教科書には防災対策の記述が多くみられる。「耐震」を取り扱っている半数が挿絵を用いて説明し、「防火」も半数が取り扱っており、その内2冊は詳しい。「避難経路・方法」は過半数以上の教科書が取り上げている。「消火器・火災報知器・避難階段」を掲載している教科書はあるものの詳しい記述は見られない。「非常時持ち出し品」は3冊の教科書が取り扱っている。「地域での助け合い」は被災時には重要な役割を持つにもかかわらず掲載しているのはわずか1冊であり、また、その重要性が理解できるような詳しい内容には至っていない。「行動訓練をする」は1冊のみの取り扱いにとどまっている。他に暴風・豪雨・豪雪・津波などについて触れているものもある。「建築基準法」は2冊が防災に関わる法律として説明し、阪神・淡路大震災の被害は半数の教科書が取り上げ、災害の特徴は約半数の教科書が記述している。家庭や地域での防災のあり方は生活を学習対象とする家庭科が担うべきだと考えられるが、現在の高等学校家庭科教科書の住居領域には防災への意識および地域社会との関わりに関する内容はほとんどみられなかった。今後は家庭科において防災の意識向上と地域社会との連携を深める防災教育の内容を検討したい。
  • - コラージュを方法として -
    齋藤 美保子
    セッションID: 2-3-36
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的 これまでの高等学校家庭科住領域は、学習時間の確保にも困難さがあり、その内容は部屋の間取りやインテリアデザインなど個人の住環境の整備が中心に進められ、地域や社会を視座した生活環境を改善していく授業は少ない。そこで、住宅人権宣言にのっとり、誰もが案して暮らせ、働き、学び、育ち、人々との交流ができる「良好な環境とは何か」を考え、環境・福祉の住マップづくりとして、授業構成を考えた。この授業の目的は、生徒や誰でもが住みたいという住要求がどのようなものなのかを知り、それを表現すること、その要求を実現するためにどのようなことをすればよいのかを考え、社会を作るつくり手としての課題を探ることである。本発表はコラージュを使った方法を用い、この方法が環境・福祉住まちづくりマップ(以下住マップとする)にとって、有効であることを目的とする。2.対象となる生徒の実態、実施期間と方法 対象となる生徒は都内公立A高校2年生3クラス47名、B高校3年生2クラス43名である。対象の生徒は、いわゆる困難高校といわれ、暴言や携帯メール交信、漫画雑誌やプリクラ貼りなどの「内職」、化粧などを行い、授業には集中できない。殆どが就職する高校である。実施期間は2004年の2月から6時間で行った。方法:生徒を数人のグループに分け、各班で模造紙半分の大きさのマップを作成した。コラージュを使った表現方法としたのは、以下の理由からである。_丸1_グループ同士の交流ができる。_丸2_写真や旅行パンフレットの中から切り取り・貼るというコラージュの方法が、易しく、生徒の実態に愛、効果が期待できる。3.結果 生徒の作成した住マップは、A高校は合計14枚、B高校は12枚を得られた。模造紙1枚分を要求し、マップを作成した班が2つあった。また、グループ同士の交流が図られ、楽しみながら時がたつのも忘れ、作成できた。
  • 水谷 令子, 富田 寿代
    セッションID: 2-3-37
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] シルクロード西端のトルコは文明の発祥地であり、現代まで4000年以上に渡る歴史と文化を有している。本年は、トルコの黒海沿岸、中央アナトリアおよびイスタンブールの生活用水調査の結果を報告する。
    [方法] この地域では水道水をそのまま飲用および調理に使っているので、ホテル・民家の水道水を採取し、pH、電気伝導度等はマルチ水質モニタリングシステム(ホリバ)、アルカリ度はMR混合試薬、硬度はEDTA法で求めた。
    [結果及び考察] 黒海沿岸地域は温暖でトルコで最も雨が多く、農業が盛んである。採取試料はいずれもNa、Cl含有量、電気伝導度ともに低く、ほとんどは総硬度100mg/l以下の軟水であった。パイプで導水された湧水は、硬度、電気伝導度が低く、細菌学的にも問題はなかった。 中部アナトリア地方は乾燥ステップ気候で、年間を通して降水量は少ない。採取試料 のpH値は6.8-8.2で、総硬度は90-1100mg/lであった。硬度とともに電気伝導度、Na、Cl含有量も高い値を示しており、これは、石灰岩質の土壌の影響によるものと思われる。イスタンブール近郊は地中海気候区に属しているが降雨量は少なく、季節により寒暖の差が大きい。採取試料はいずれも総硬度が200mg/l以下の中硬水で、Na、Clの値も幾分高くなっている。また、トルコの水道水は塩素消毒がなされていることがわかった。そのため、細菌学的には問題はないが、一部のホテルやレストランの水道水から細菌類が検出されており、これは配管パイプや貯水槽での汚染によると考えられる。イスタンブールの一部のホテルでは独自にイオン交換による軟水化処理をおこなっていると推測される結果が得られた。
  • 大浦 律子
    セッションID: 2-3-38
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:家庭洗濯によって排出される排水は、下水道がまだ完全に整備されていない現状では、河川水への負荷を与えている。環境負荷を低減するための洗浄剤のビルダーとして、酸素系漂白剤の有効利用を試みた。洗浄補助剤としての漂白剤の利用は、近年の除菌習慣の高まりと共に実用されつつあるが、色素汚れの除去にはまだ不十分である。本研究は市販漂白剤入りの洗剤とモデル洗剤との比較を行いながら、漂白剤を配合することによる界面活性剤の減量化を図った。また、酸素系漂白剤の河川水中での分解について検討した。方法:漂白剤入り市販洗剤及びモデル洗剤を用いて洗浄実験を行い、洗浄性を比較した。洗浄実験には湿式汚染布および紅茶汚染布を用いた。洗浄性は洗浄効率の算出、洗浄後の汚染布の分光反射率曲線、蛍光強度の測定により評価した。また酸素系漂白剤の河川水中での分解速度を滴定法により測定し、河川水中への影響について調べた。結果:界面活性剤を10_から_20_%_減量し、この減量分の酸素系漂白剤を配合すると、湿式汚染布の洗浄効率は低下せず、色素汚れの除去率は上昇する。漂白剤配合の市販洗剤では色素除去には特に効果はなく、洗浄による白さは蛍光増白剤に依存していることが確認された。酸素系漂白剤の環境負荷について、河川水中での分解速度はpH、温度ともに高いほど速く、特に過炭酸ナトリウムについては夏季ではかなり速く分解する。界面活性剤の濃度が濃くなるとCOD値も高くなるため、界面活性剤の減量化が望まれ、このための対策の一つとして漂白剤の有効利用が望まれる。
  • 篠原 陽子, 杉原 黎子, 山下 伸典
    セッションID: 2-3-39
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】環境教育の一環として,排水中からの非イオン界面活性剤の除去方法を
    検討するために,前報1)に引き続き,非イオン界面活性剤の定量法(CP法)
    の開発を検討した.次いで,各種合成樹脂シートによる非イオン界面活性剤の除
    去効果を調べた.
    【方法】自作の加熱式簡易濁度計2)を用いて,加熱に伴う非イオン界面活性剤
    溶液の濁度の変化を測定し,得られた温度_-_濁度曲線をもとに検量線を作成し
    1).定量法の妥当性は,UV比色法又は酵素免疫定量法(日本エンバイロケミカル
    ズ(株)のELISA法,以下ELISA法)との相関性から検証した.試料には,日本サーフ
    ァクタント工(株)のNP-10(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル,EO:10,以下NP)と
    BL-9EX(ポリオキシエチレンラウリルエーテル,EO:9,以下BL)を用いた.
    【結果】(1)20_から_50ppmの試料溶液に対して,硫酸ナトリウムを添加して曇点の測
    定を可能とし,得られた温度_-_濁度曲線をもとに,検量線を作成することができた.
    (2)CP法で得られたNP溶液の濃度は,UV法で測定した値とよい一致を示した.
    (3)BL濃度の測定におけるCP法の妥当性は,ELISA法による測定値と対照・検
    討中である.(4)各種合成樹脂シートを用いて,水中からのNPの除去効果を検討
    した結果,除去率はシートの表面積が増すにつれて直線的に高くなり,PETによ
    る除去率が最も高かった. [文献]1)篠原ら;第35回洗浄シンポジウム,p.95-99(2003),
    2)篠原ら;科学教育研,27,171-178(2003)
  • 松本 好太, 橋本 修
    セッションID: 2-3-40
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    我が国におけるエネルギー需要は常に増加傾向にある中で,地球温暖化の問題は年々重要度を増してきている.これに対し,エネルギー対策の中心となる省エネルギー法には,エネルギー管理制度の強化とともに,エネルギー消費機器に対する効率基準(トップランナー規制)が導入されている.家電製品などの機器が順次トップランナー規制に追加される一方で,電子レンジはエネルギー多消費機器でありながら,妥当なエネルギー消費効率の測定法が確立されていないといった理由から,省エネ法の対象外となっている.そこで本研究では,電磁界解析手法の一つである時間領域差分法(FDTD法)を用いて,電子レンジ庫内に置かれた負荷の質量や容器形状,誘電率に対する加熱効率の変化を解析し,測定時に使用する負荷の条件について検討した.解析では,FDTD法を用いて電子レンジを詳細に表現した解析モデルを構築し,庫内には食品を想定した負荷を配置する.負荷については,水を含む5種類を想定し,その質量は1000g,500g,200g,100gの4種類とした.このモデルを用いて,励振部である導波管内の入射波と反射波から算出される反射係数を用いて加熱効率を計算した結果,加熱効率は質量には依存するものの,誘電率に対しては大きな変化がみられないことを確認した.さらに,負荷の質量はそのままに,容器の形状を変化させた場合についても同様に加熱効率を計算した結果,容器の形状は効率に大きく依存することを確認し,負荷の質量が小さい程その依存性は大きいことが分かった.以上の検討結果より,トップランナー方式に適した電子レンジのエネルギー消費効率測定時における,負荷に関する基礎的な資料を提供することができた.
  • 橋本 令子, 加藤 雪枝
    セッションID: 2-3-41
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現代はIT化、デジタル化時代といわれるが、人は時間に追われストレスに埋もれている。その緩和策として快い音を耳にしたり、美しいものを見ることにより安らぎ感や安心感を得ようとする。そこで今回は、生理評価と心理評価の測定を、環境音に映像を加えることで聴覚と視覚の刺激が複合され、相乗効果が期待できると考え研究を行った。【方法】音刺激はのどかな、わくわく、騒々しいといった観点から、川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、列車音、海辺の波音、花火の音、街の騒音の6種とし、映像刺激は音の効果を反映するものとした。被験者は13名である。生理評価は、椅子に腰掛けた閉眼状態で音のみ呈示した場合と、開眼状態でスクリーンに提示された映像をみた場合の脳波(α波含有率、1/fゆらぎ)と心電(心拍変動)を測定した。その後、心理評価として10形容詞対を用いてSD法を行い、呈示方法の違いによる生理と心理評価の関連を追究した。【結果】音と映像による心理評価は「快適性」と「活動性」の因子が抽出された。映像の種類によってα波含有率に差が生じ、花火、列車音は映像呈示することによりα波が喚起され快適感が得られ相乗効果が認められた。川のせせらぎ、小鳥の鳴き声、海辺の波音は音のみ呈示、映像呈示ともに快適感が得られた。しかし街の騒音は、映像呈示により不快感が増しα波が抑制された。1/fゆらぎは、映像呈示後の出現人数が最も増加し、視覚から得られた情報が終了後も反映された形態を示した。心拍変動については映像呈示中にリラックス感を得た。生理と心理評価との対応において、α波含有率は「快適性」「活動性」の因子と関係が明らかとなり、心拍変動は「快適性」の因子と関係が認められた。
  • 江口 司紗, 篠原 陽子, 福井 典代
    セッションID: 2-3-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 水質汚濁の発生源として生活排水が大きな割合を占めていることから,家庭から排出されるシャンプーやリンスなどの比較的高濃度の洗剤の除去をめざして,これらのモデル排水をつくり,活性炭を用いてそれらの除去に関する基礎実験を行った。さらに,学校現場で教具として活用できる簡易浄化装置を製作し,教材の作成を試みた。
    方法 界面活性剤濃度の決定には簡易導電率計を用いた。試料は,市販洗濯用合成洗剤,市販洗濯用石けん,シャンプーのほかに,これらに含まれているAOS,DTAC(n-ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド),塩化ベンザルコニウム,SDS,ラウリン酸ナトリウムを用いた。各種界面活性剤水溶液は蒸留水と水道水(カルシウム濃度50ppm)により調製した。また,活性炭は扱いやすい濾過用の粒状成型炭であり,105℃,3時間乾燥させたものを使用した。界面活性剤液量(ml):活性炭量(g)=10:1の割合にして攪拌操作による回分式吸着を除去操作とした。所定温度(20_-_50℃)で所定時間(20_-_300分)操作したのち,濾過液の導電率を測定して除去率(%)を求めた。
    結果 (1)各種界面活性剤を蒸留水に溶解した場合の除去率は,塩化ベンザルコニウムが80%以上,DTACが約70%となり,陽イオン界面活性剤の除去効果が最も高かった。(2)石けん以外の陰イオン界面活性剤は操作開始後から短時間での除去率が大きかった。(3)各市販洗剤の所定時間内での最大吸着率は約30%程度であった。(4)水道水に溶解した場合は,AOS,DTACの除去率が高いのに対して,市販洗剤は低かった。(5)1Lの PETボトル容器を用いて簡易浄化装置を製作し,各種界面活性剤の除去を試みた結果,除去率はDTAC53%,AOS及びシャンプー37%,洗濯用石けん23%となった。
  • 古澤 里美
    セッションID: 2-3-43
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 中学校家庭科は、生徒が家庭生活を総合的にとらえ、生活を主体的に営む力を習得することができる教科であり、本当の意味で生きる力を育むことのできる教科だといえる。また、地球環境問題は、日常生活と密接に関わっており、環境の保全や改善には、私たち一人ひとりが環境に負荷の少ない行動をとることが必要である。これらのことから、家庭科の授業に環境教育の視点を入れることによって、生徒は環境負荷の少ない生活を主体的に営む力を習得できると考えられる。そこで、栃木県内の中学校家庭科における環境教育の現状と課題を、アンケート調査から分析することを目的とした。方法 調査時期は2003年2月。調査対象は、栃木県内の中学校家庭科教諭106名。調査方法は、調査票を郵送により配布・回収。回収率、有効回答率は、ともに30.1%。結果 家庭科における環境教育を「実践している」と回答したのは90.6%であった。実践する際の視点としては、「生徒自身が環境に配慮した行動とは何かを考え、実践できるようにする」と5割の人が回答している。また、「実践例や進め方をまとめた資料の活用」や「家庭科教員同士で研究会を開き、教材開発や研究等を行う」などの環境が整えば、さらに実践がしやすくなるという意見がみられた。実践がしにくい理由としては、「授業時数の少なさ」が最も多く挙げられていた。なかには、「複数教科を担当しているために教材開発等をする時間がなく実践しにくい」という回答もあった。今回の学習指導要領の改訂による技術・家庭科の授業時数の削減が、環境教育の実践をますます困難にしている現状と課題が明らかとなった。
  • 長棹 香織
    セッションID: 2-3-44
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 グリーンコンシューマーとは、経済社会を環境に配慮した方向に変えていこうとする消費者のことである。そのグリーンコンシューマーを広めていくためには、意識はあるが環境のことを考えて行動できる消費者に変えていくことが重要であると考え、そのためにどのような教育内容、方法が必要なのかについて明らかにすることを目的とした。方法 意識調査―2004年1月_から_5月に栃木県内で開催されている環境関連講座の消費者を対象に実施。1回のアンケート115名(有効回答率、100%)、2回のアンケート15名(1回目100%、2回目86%)、3回のアンケート47名(1回目100%、2回目96%、3回目72%)を分析。 実態調査―関東圏内で開催されている環境関連講座の調査と分析。結果 意識調査の結果、消費者が講座の目的を理解して受講しているかどうかによって結果に偏りが出た。グリーンコンシューマーを広めるためには、消費者に講座の目的を明確に理解してもらうことが重要であり、講座の主催者側も消費者が講座を受講する際に、積極的に意図を理解するよう働きかける必要がある。また、3回に渡って行なった意識調査では消費者を意識から具体的な行動に移ったかどうかの結果がうまく出なかった。そのため、その確認の方法や調査の機会、人数の確保などの課題を改善することが必要である。 環境関連講座を調べた結果、リサイクルを目的とした講座は多くみられるがグリーンコンシューマーを視点とした講座が開催される数は少なく、グリーンコンシューマーの視点も希薄であった。今後は消費者、事業者、行政の連携による環境関連講座の機会を増やすとともに、グリーンコンシューマーの視点を明確にした講座の充実が必要である。
  • 井元 りえ, 小澤 紀美子
    セッションID: 2-3-45
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】環境問題は地球規模化し、その議論の焦点は「持続可能性」にある。そこで本研究は、日本家政学会における「環境」研究への取り組みの歴史を振り返り、今後の課題を明らかにすることを目的としている。【方法】「環境と開発に関する世界委員会」が開かれた1987年以降の日本家政学会誌における環境関連の論文等の内容、及び日本家政学会年次大会における環境関連の発表等の内容を分析・考察する。【結果及び考察】1.日本家政学会誌では、環境関連の論文は8編、資料は1編掲載されている。学会としての特集記事は、1992年に「生活環境と家政学の課題シリーズ」、また1997年には「環境と家庭科教育」が掲載されている。学会は1991年に「環境問題特別委員会」を設け、様々な分野の研究者による調査研究活動を行い、(社)日本家政学会編『ライフスタイルと環境』朝倉書店(1997)にまとめている。2.日本家政学会年次大会の環境関連の発表件数は202件である。1992年の地球サミット以降に発表件数が増えている。発表分野として「環境」が登場するのは、1993年と1996年であるが、その後1997_から_1999年の3年間はポスターセッションの中に含めることとされ、2000年からは再び「環境」分野が復活した。「循環型社会」分野は2001年のみに登場した。発表内容は、身近な環境問題から地球環境問題へと広がっている。3.学会発表件数は多いが、学会誌における環境関連の論文数は少ない。学会として特別委員会を設けて環境問題に関する調査研究に取り組んだことは評価できるが、国際的に重要な概念である「持続可能性」の視点がほとんどなく、また領域間の関連性もみられない。
  • 久保田 のぞみ, 佐藤 信, 河合 知子
    セッションID: 3-1-1
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】学校給食に米飯が導入されてから約30年が経過し、全国的には米飯給食の実施率は99%を超え、米飯は週平均2.6回供されている(2000年現在)。その導入、継続にあたっては、パン業者との調整、炊飯設備の確保、調理員の対応など様々な条件に規制される。本調査の目的は、米飯給食の導入、継続にあたっての諸条件を探ることにある。〈BR〉【方法】2003年2月、北海道内212市町村の教育委員会を対象に、「米飯給食の現状と今後の方向に関する調査」票(A4版4枚)を郵送、回収した。調査項目は、現在の給食費及び米飯実施回数、炊飯方法、米の購入先、米飯給食の開始時期、今後の米飯給食回数についての考えなどである。回収した中から、米飯給食を実施している158か所を抽出した。〈BR〉【結果】158か所の週当たりの平均米飯回数は2.99回であった。農業の特徴別に見てみると、稲作地域3.11回、準稲作地域3.06回、非稲作地域2.84回と、稲作が盛んな地域ほど米飯回数は多い傾向にある。また稲作地域では、生産者から直接米を購入している割合が約3割であり、準稲作地域12.1%、非稲作地域5.4%に比べて高い。炊飯方法別では、自校炊飯で3.06回、委託炊飯では2.94回と、自校炊飯の方がやや米飯回数が多い。今後の米飯回数については、現在の米飯回数にかかわらず「今のままでよい」と回答した所が多く9割を超える。その理由は「今のままで献立内容が充実しているから」「今の米飯回数で児童生徒が満足しているから」である。しかし米飯回数3回未満の所では、それぞれ46.6%、30.0%と低くなる。「米飯給食はパン給食より材料費が高くなるから」の回答率が高く、また炊飯施設の限界や人件費など経費の問題もあげられた。
  • - Malls-HPLCによる分子量分布について -
    丸山 悦子, 佐藤 真実
    セッションID: 3-1-2
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    目的 米飯の食味評価法の1つとして、溶出固形物を用いることの有用性について報告してきた。溶出固形物は米飯のおねばとなり、食味に物理化学的な影響を与えるが、今回は光散乱と高速クロマトグラフィーを用いた溶出固形物の分子量分布について測定し、食味との関連について報告する。
    方法 70℃と100℃の溶出固形物は竹生らの変法にしたがった。おねばの溶出固形物は電子ジャーで炊飯後、米飯に脱イオン水を加え攪拌、炊飯液を採取し凍結乾燥した。いずれの溶出固形物についても、タンパク質の除去を行い、0.45μmフィルターを通し、溶出糖とした。多角度光散乱検出器と示差屈折検出器を組み合わせた高速クロマトグラフィーによって分子量分布と濃度などを測定した。味評価としては味度メータによる味度値、官能検査の結果を示した。
    結果 味評価では魚沼産コシヒカリが高く、むつほまれが低い結果となった。味評価と各ピークにおける分子量と濃度との相関を求めると、100℃の分子量が各ピークで負の高い相関を示し、味評価が高い米飯ほど、分子量がやや低いといえる。また枝きり酵素を添加した溶出糖の分子量分布からは70℃とおねばの分子量分布が類似し、100℃にくらべ、高分子側が高い濃度を示した。とくに良食味米の溶出多糖は100℃の低分子側の分子量が低く、アミロースを多く含むことが示唆された。分子量分布の結果から、品種間の差は炊飯温度が異なる過程においても分子量分布による差が生じており、とくにアミロペクチンの分子量とアミロースの濃度が食味に影響を与えていることがわかる。
  • 横溝 佐衣子, 山本 信子, 福田 満
    セッションID: 3-1-3
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    [目的]レトルト米や、新しい加工米が多種類開発されている。家事時間の軽減志向により、炊飯器も高温短時間で食味向上が期待されるIH式電気炊飯器や、玄米が炊ける多機能型も開発され、米の利用法や食べ方は多様化してきた。特に最近では、操作の簡便性と環境汚染の面から無洗米が普及し始めている。無洗米はBG米(糠で糠を除去する湿式処理米)が一般的であるが、さらに改良が進み、浸漬時間不要で炊き増え効果があるといわれる乾式無洗米が商品化された。そこで本実験ではこの無洗米に注目し、従来の無洗米(BG米)との食味の違いなどを検討することを目的とした。[方法]試料は「新無洗米(乾式処理)」と「従来のBG米(湿式処理)」の2種に、対照として2試料の無洗米に加工する前の「精白米」を用いた。炊飯操作は、メーカーのマニュアルに従った。即ち、精白米とBG米の加水量は、米重量の1.5倍で浸漬時間30分、新無洗米は1.6倍で浸漬時間は0分とした。官能検査は5段階評価の採点法、さらに吸水率、粒の大きさ、還元糖量、α化度、電子顕微鏡など食味にかかわる調理学的測定を行った。[結果]官能検査の総合評価では平均点の高い方から、精白米、新無洗米、BG米であった。香りについては2種の無洗米(BG米と新無洗米)が、精白米よりも評価点が高かった。しかし、色の評価は、どちらも精白米に比べて黄色いと評価された。無洗米同志の比較では還元糖量、α化度などには測定値に大きな違いはみられなかったが、粒の大きさでは新無洗米がやや膨らみが大きくなり、若干炊き増え効果がみられた。
  • 松本 祥子, 東海林 礼子, 大野 智子
    セッションID: 3-1-4
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】2000年に古代米の形質を持つ‘おくのむらさき’粳米を独立行政法人農業技術研究機構東北農業研究センターで有色米品種として育成されたことから私達は‘おくのむらさき’の食味特性を生かした炊飯条件を明らかにする目的で研究を行なった。また、若者の郷土料理離れ阻止も考慮して、秋田の郷土料理「だまこ鍋」のだまこもちにも利用を試み、食味特性を検討したので合わせて報告する。
    【方法】2002年度産‘おくのむらさき’は東北農業研究センターから提供して貰い、対照として‘あきたこまち’を用いた。炊飯条件の浸漬吸水率、浸水・加熱による米粒の形状測定、加水量による飯の炊きあがり倍率、蒸発率を調べた。供試米の理化学的性状として水分含有量、粗灰分含有量、pH、無機成分含有量、色差を測定した。炊飯後の米飯、だまこもちの食味に影響を及ぼす硬さ、粘りと官能評価も行った。おいしさの指標である遊離糖含量も測定した。
    【結果】粳米‘おくのむらさき’の炊飯条件と食味の結果では(1)‘おくのむらさき’の無機成分Mgの含有量が高かった。(2)米飯とだまこもちの物性は加水比が小さいほど硬く、だまこもちは加水比と搗き回数が増すにつれて粘りが増す傾向を示した。(3)3分搗きが味、食感と総合評価、粘りにおいてそれぞれ1%、5%、0.1%の有意差でおいしいと評価され、だまこもちは搗き回数60回が味、粘り、総合評価において5%の有意差で美味しいと評価された。(4)米の美味しさの指標である遊離糖含有量はグルコース、フルクトース、シュクロースにおいて対照より高く、この結果も理由の1つと考えられた。
  • 足立 里美, 阿久澤 さゆり, 玉木 有子, 松森 慎悟, 中村 雅英, 澤山 茂
    セッションID: 3-1-5
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】 わらび澱粉はわらびの地下茎から抽出され「わらび粉」として流通しており、わらび餅などに珍重されている。しかし、生産量が少なく高価なため、さつまいも澱粉が代替品として使用されている。演者らは、数種類の澱粉の理化学的性質およびレオロジー的性質について報告してきたが、わらび澱粉に関する報告はあまり見られない。そこで本研究では、わらび澱粉の糊化特性と糊液のレオロジー的性質を検討した結果を報告する。【方法】 わらび澱粉は、広八堂(鹿児島県)で製造された粗澱粉を、常法に従って精製して試料澱粉として用いた。対照としてさつまいも澱粉およびくず澱粉を用いた。アミロペクチンの鎖長分布はHPAEC-PAD法 (Dionex社製DX-500) で測定し、DSCにより糊化特性を測定した。また、SEC-MALLS (昭和電工社製:Wyatt Tecnology社製) により重量平均分子量および慣性半径を測定した。糊液の動的粘弾性測定はRheoStress1 (Haake社製) を用いた。【結果】 DSCによる糊化終了温度は、わらび澱粉が70.8℃と最も低く、次いでくず澱粉78.5℃、さつまいも澱粉83.8℃であり、アミロペクチンのDP6-12の短鎖長の割合が多いほど糊化ピーク温度が低い傾向であった。また、糊液を遠心分離後、上澄み中に溶解した糖量を比較すると、わらび>さつまいも>くずの順で糖量が多く、さらに溶液中の重量平均分子量および慣性半径を測定したところ、わらび澱粉糊液は著しく大きかった。動的粘弾性からみたゲル化濃度はわらび澱粉が最も低く、貯蔵弾性率の濃度依存性より3種のゲル構造の違いが示唆された。
  • 森高 初惠, 内藤 成弘, 島田 淳子, 高尾 哲也
    セッションID: 3-1-6
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    {目的}寒天、κ-カラギーナン、ジェランガムはゲル化する多糖類である。κ-カラギーナンは2分子に1個の割合で硫酸基を含み、ジェランガムは4分子に1個の割合でカルボキシル基を含んでいる。これら極性の異なる多糖類に塩化ナトリウムを添加したゲルの塩味強度について検討した。{方法}塩化ナトリウムを添加した寒天ゲル、κ-カラギーナンゲル、ジェランガムゲルの塩味強度を官能評価により試験し、破断特性値をクリープメータ(山電製)により測定した。また、離漿率も併せて測定した。{結果}κ-カラギーナンゲルおよびジェランガムゲルの破断応力は塩化ナトリウムの添加により増加した。寒天ゲルの破断応力については、塩化ナトリウム添加の影響は明確には認められなかった。3種の多糖類ゲルの官能評価結果を比較すると、同一の塩化ナトリウム濃度では、寒天ゲルが他の2種類の多糖類ゲルに比較して塩味強度が高いと評価された。また、寒天ゲル、ジェランガムゲルでは両多糖類の濃度変化による官能評価値の差は有意に認められなかった。しかし、κ-カラギーナンゲルでは、カラギーナンの濃度変化により官能評価値に有意差が認められた。離漿率は寒天では寒天濃度の増加に伴い低下したが、塩化ナトリウム濃度の変化による影響は認められなかった。κ-カラギーナンゲルでは、塩化ナトリウム濃度、κ-カラギーナンの濃度の差による離漿率の差は認められなかった。ジェランガムでは、1.5%塩化ナトリウム濃度ではジェランガム濃度の増加に伴い離漿率は低下したが、他の塩化ナトリウム濃度では一概にそのような傾向は認められなかった。
  • 貝沼 やす子, 余西 礼江
    セッションID: 3-1-7
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:豆腐製造の際に産出するおからは良質のタンパク質やビタミン、ミネラル類が多く、食物繊維を豊富に含んでいる。このおからを有効に活用したいと考え、主食として利用できる食パンに乾燥おからを添加することを試みた。おからの添加は食パンの膨化を抑制するが、この点を改善する方法として今回はおからを焙煎して添加し、その効果を検討した。方法:粉末状の乾燥おからを使用し、小麦粉重量の一定割合(5、10%)をおからに置換して調整し、その他の材料は同一として食パンを作製した。おからの焙煎は140℃_から_180℃の温度に対して5分_から_25分の時間を組み合わせて行った。食パンは冷凍保存後解凍して実験試料とし、膨化率、比容積、断面の写真、クリープメーター(山電製)によるテクスチャーならびに破断強度を測定し、官能検査による食味評価を行った。また、パン生地の性状を比較するため、破断強度測定における歪み率を600%に設定し、生地の延びの良さを比較した。おからについては吸水率の測定を行った。結果:乾燥粉末おからをそのまま10%添加すると膨化状態がかなり悪くなり、官能評価も著しく劣った。おからを焙煎して添加すると、内相色は濃くなり、おからのにおいが強くなったが、膨化率は高くなり、ふんわり感、やわらかさ、ざらつきなどの性状は改善した。食パンの膨化状態等の性状から総合的に判断して、150℃・20分加熱がおからの最適焙煎条件であった。おから粉末の高い吸水性がパン生地の性状に影響して膨化を抑制していたが、焙煎によりおからの吸水率が低下した結果、パン生地はやわらかく延びのよい状態に改善されていた。
  • 山田 節子, 三森 一司, 出雲 悦子, 岩間 由香
    セッションID: 3-1-8
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    目的 大豆(<1>Glycine max Merrill<1>)は,中国より伝来して以来、我国では豆腐や納豆、味噌、醤油などの加工食品に利用されている。しかし、昨今の日本食離れとともに大豆を料理する機会が減ってきている。スローフードの材料として世界的に注目を集めている大豆をパンに添加することにより、大豆消費量の拡大を図る目的で研究を行った。本研究では小麦粉と大豆粉末の配合割合、大豆粉末の焙煎の有無の違いによる物性測定、活性酸素消去能、嗜好性を調べ健康パンとしての機能を持ちつつ、おいしく食べられるかを検討した。方法 生大豆粉は生大豆(リュウホウ、秋田県産)を粉砕した後に500μmのふるいを通過したものを用いた。生大豆を粉砕後にフライパンで加熱し焙煎大豆粉を調製した。製パンは自動ホームベーカリー(ST_-_BT2 ナショナル)を用いて行った。大豆粉の配合割合は、小麦粉重量の10%および20%とし、焼成後2時間室温で放冷の後に、比容積、硬さ、色特性を測定した。官能評価は女子学生21名をパネルとして、外観、色、香り、味、食感、総合評価について行った。活性酸素消去能は、焼成したパンをオーブンで50℃2時間乾燥後、粉砕し、XYZ系活性酸素消去発光法で測定した。結果 大豆粉配合割合の増加に伴い体積は減少し、硬さは増加した。配合割合が同じ場合には生大豆粉および焙煎大豆粉の差はほとんど認められなかった。官能評価では総合的に見て、配合割合が低いものが好まれ、焙煎大豆粉よりも生大豆粉の方が好まれる傾向にあった。活性酸素消去能は、配合割合が高くなるに伴いやや増加し、脱脂米糠を混ぜると3倍以上の値となった。大豆粉配合割合は20%を限度とし、10%のものが嗜好的に好まれ健康パンとしての機能が上がると言う結果が得られた。
  • 高橋 沙織, 勝股 理恵, 伊藤 久美, 大山 桃子, 大迫 美由紀, 毛利 さやか, 村上 満利子, 佐藤 みずき, 目黒 寛子, 久保倉 ...
    セッションID: 3-1-9
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在わが国の糸引納豆(以下納豆と略する)は主に3社のスターターで製造されており、それらの納豆の品質には大きな差が見られない。製品の差別化を図るため我々は中国の豆豉を収集して豆豉菌を分離し、その菌を用いて糸引納豆の製造を試みた。
    【方法】豆豉は中国雲南省昆明市付近で収集した。豆豉菌はNBP平板に30℃で生育したコロニーから純粋分離した。菌の同定は、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology 第2巻に準拠して行った。納豆は村松らの方法を参考にして製造し、その分析と官能検査は納豆試験法に準拠して行った。また、揮発性成分の分析はキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)で行った。
    【結果】収集した試料39点から82株を分離した。同定の結果、いずれの株もBacillus subtilisに属する株であった。分離菌で製造した納豆の官能検査をして、糸引納豆の製造に適した株を12株選択した。これらの菌株の最適生育温度はわが国の納豆菌のそれが41℃前後であるのに対し、豆豉菌では35℃から45℃まで分布していた。最適生育温度で製造した納豆の1つを分析するとホルモール窒素、相対粘度の値は市販納豆よりも低く、揮発性成分については納豆特有といわれる10個の成分のうち7個が検出された。硬さについては、箸でかき混ぜると豆が崩れる程軟らかいものが製造できた。官能検査の結果からも、有意に糸引きが弱く、低臭で軟らかい納豆であると評価された。以上の結果、わが国の納豆とは異なる軟らかい納豆を開発することができた。
  • 宮本 有香, 西村 公雄
    セッションID: 3-1-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】演者らは,ビタミンC(アスコルビン酸(AsA))によるかまぼこ品質改良効果が,AsAより発生したスーパーオキシドアニオンラジカル(O2-)の作用でタンパク質上に生成したチィールラジカル(S・)がラジカル酸化を起こし分子間にSS結合を形成するためと提唱している。が,未だタンパク質上にO2-によりS・発生の確認は出来ていない。そこで、今回,牛血清アルブミン(BSA)をモデルタンパク質として用い、電子スピン共鳴(ESR)法によりS・の発生を検討した。【方法及び結果】10mMジチオスレイトールを含む0.75mM BSA溶液(0.2Mリン酸緩衝液, pH7.0)を一晩4℃下で攪拌し、BSAを還元した。この溶液を透析後、スピントラップ剤である5,5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシドを75mMとなるように添加し、0.2μMリボフラビン存在下で光照射しO2-を発生させたところ、ESR測定により4本線からなるシグナルを認めた。しかし、200units/mlとなるようにスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)を添加しO2-を消去すると、このシグナルは有意に小さくなった。一方、SODの代わりに同濃度のカタラーゼを添加しても、シグナルに顕著な変化は認められなかった。さらに、未還元BSAを用いて、同様の検討を行ったところ還元したBSAを用いて得られたシグナルは認められなかった。以上のことは、得られたBSAラジカルが、ヒドロキシラジカルではなくO2-により発生していること及びこのBSAラジカルがS・に由来していることを強く示唆している。
  • 安部 あいか, 鵜飼 光子
    セッションID: 3-1-11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    1. IntroductionVarious sterilization technologies have been developed in last two decades in order to maintain the quality of foods. Irradiation by gamma-ray has been recognized internationally as a frequently used food technology. Heat-treatment of foods causes not only sterilization but also the decomposition of food ingredients and the degradation of their enzymatic activities. The heat-treatment promotes radical decay reaction by re-combination. Electron spin resonance (ESR) spectroscopy has been applied as a method of detecting the irradiated foods all over the world. In fact, it has been established as a standard detection method (European Committee for Standardization) in Europe union (EU) 1). ESR is a non-destructive standard method that enables a quick measurement for radicals. ESR method utilizes comparatively long-living radicals in bone and cellulose induced by gamma-ray irradiation. However, preservation conditions may affect ESR measurement of radicals 2).
    In the present study, we analyzed the radical behavior of the irradiated black pepper, a typical spice under the heat-treatment process by ESR. The comparison between the heated and the unheated pepper enables to reveal the radical change.
    2. Experiment
    The pepper specimen in the present study was commercially available black pepper in Japan, bottled in glass (18 g) and stored at room temperature. Irradiation was carried out at Japan Atomic Energy Research Institute (Takasaki research institute) at the room temperature (ca, 300K). We selected the dose level, i.e., 10kGy, 20kGy, 30kGy and 50kGy as compared to the FAO / IAEA / WHO standard. Fifteen specimens of the black pepper were prepared with the amount of 300mg as weighed in the aluminum pan. They were heated for various intervals from 1 to 15 minutes in an electric oven which was preheated for 15 min and remained at 180˚C. The specimen was sealed in the ESR sample tube (Eiko) with the amount of 300 mg. ESR measurements were carried out using the two ESR spectrometers (JEOL, JES-FE1XG and JES-FA200). All the ESR spectra were recorded at the X-band (9.3 GHz).
    3. Results and discussionThe peak intensity of the side peaks was fairly constant during the heat-treatment for 0 - 2 minutes. They decayed exponentially after the heat-treatment beyond 2 min. We estimated the parameters by the application of the non-linear least squares method. The estimation resulted in 1.8 min for the time constant for the thermal decay process.
    Conclusions1) The peak intensity of the side-peaks as appeared upon irradiation was a quite different from that of organic free radicals by heating. These signals decreased exponentially by heating-treatment. The ESR signal of the pepper heated for more than 10 minutes was essentially the same as that before the irradiation.
    2) In order to evaluate the radical decay during heating, we defined a time-dependent master equation. Using the solution, we could evaluate the decay time constant through the nonlinear least squares fitting method.
    References
    1. EN1787 (1996) 2. Ukai, M., Shimoyama, Y., RADIOISOTOPES, 51, 501-504(2002)
  • 鵜飼 光子, 安部 あいか
    セッションID: 3-1-12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    1. Introduction
    Gamma-ray irradiation is now internationally recognized as an effective sterilization method. It has also been noted that sterilization through gamma-radiation is effective, and its safety has been proved for approved irradiation levels, such as 10 kGy (Joint FAO/IAEA/WHO 1981). However there is public apprehension that the production of radicals by ionization and the generation of unknown substances in foods may be harmful to the human body. The ionization by irradiation induces radicals in foods. Electron spin resonance (ESR) spectroscopy has long been applied to detect the radiation-induced radicals in foods. In previous studies (Ukai 2002; 2003), we have reported that heat-treatment of irradiated foods causes the evolution of free radicals. In this study, we analyzed the time-dependent phenomena of the radical evolution. We established a physical theory as based on the first-order differential equation, which is a conventional way for the time dependent phenomena. Attempts have been made to characterize the order and the multiplicity of reaction scheme and time constants of the radical evolution.
    2.Experiment
    The sample was black pepper commercially available in Japan. Irradiation was carried out at the Japan Atomic Energy Research Institute (Takasaki Research Institute). We selected the dose level to be 50 kGy. Fifteen sample lots of the black pepper were prepared 300 mg by weighting in aluminum pans. They were heated for various intervals in an electric oven remained at 180ºC. Each sample (300 mg) was sealed in the EPR sample tube (Supracil; Eiko). ESR measurements were carried out using an ESR spectrometer (JEOL; model JES-FE1XG). All the ESR spectra were recorded at the X-band (9.3 GHz).
    3. Results and discussion
    We observed that the ESR spectrum of the irradiated black pepper was composed of 4 components signals. The first one is a sharp signal at g = 2.0, which is due to the organic free radical. We estimated g-value = 2.002 and the line width 8 gauss of the signal. The second one consists of a sextet pattern centered at g = 2.0, which originates from the hyperfine lines of Mn2+. The third one is a signal of g = 4.0, which is identified as Fe3+. These three spectral components were always observable in the ESR spectra of pepper irrespective of before and after irradiation. The fourth signal is typical for the spectrum of irradiated pepper. The peak- to-peak intensity of the organic free radical increased by heating for 5 to 15 min as compared with that before heating. The intensity value from the samples as heated beyond 10 min leveled off at the certain value. We applied the nonlinear least squares fitting method onto the radical evolution. The evolution data for the irradiated black pepper were successfully fitted by a single exponential function. In the case of the irradiated black pepper, the best-fit curve yielded 4.2 min for the evolution process during heating for 0 - 15 min. Employment of the nonlinear least squares method needed for the memory size by ten times that makes possible the highly reliable numerical calculation.
    References
    Joint FAO/IAEA/WHO. 1981 Expert Committee on Wholesomeness of Irradiated Food. WHO, Geneva. No659
    Ukai M. et al. 2002. Radioisotopes 51: 501_-_504.
    Ukai M. et al. 2003. Appl Magn Reson 24: 1_-_11.
  • 蒋 立勤, 山口 智子, 高村 仁知, 的場 輝佳
    セッションID: 3-1-13
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】オリーブは抗酸化性をはじめ、種々の機能性を有することが知られている。しかし生果実は非常に渋いため、食用とするには渋抜きや塩漬けなどの加工が必要である。本研究では、オリーブ果実及び葉のラジカル捕捉活性成分について、品種、熟度による違いを調べるとともに、加工過程における成分の変化を検討した。【方法】試料として、小豆島産のオリーブ4品種(Manzanillo, Lucca, Nevadillo Blanco, Mission)の果実及び葉を用いた。なお、果実は未熟果(緑)、 完熟果(黒)の2種類を用いた。それぞれの試料についてラジカル捕捉活性、アスコルビン酸、総ポリフェノール量およびトコフェロール量を測定した。果実については脂肪酸組成も分析した。さらにオリーブ果実の渋抜き、塩漬け加工におけるラジカル捕捉活性および活性成分の変化も同様に解析した。【結果】ラジカル捕捉活性および総ポリフェノール量は、果実より葉の方が、果実では未熟果の方が高かった。渋抜きおよび塩漬けによりアスコルビン酸とポリフェノールは消失した。しかしトコフェロール含量と脂肪酸組成は加工によってほとんど変化しなかった。
  • 前田 智子, 片尾 未央, 増澤 康男, 岸田 恵津
    セッションID: 3-1-14
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    [目的] 食品中には、ビタミンC(VC)、ビタミンE(VE)などの抗酸化ビタミンをはじめ、フラボノイド、カロテノイド等種々の抗酸化成分が存在する。食品における抗酸化ビタミンの役割として、油脂の酸化や食品の酸化的な変色を防御できることは広く認められている。しかし調理時など多成分が共存した場合の食品の変性過程における抗酸化ビタミン自身の変化や、水系での加熱調理時における油脂の過酸化等に対する抗酸化ビタミンの効果については、不明な点も残されている。そこで、本研究では実際の調理を想定したモデル系を用いて、加熱中におけるこれらのビタミンの安定性に及ぼす油脂の影響について検討した。[方法] 油脂は大豆油および菜種油を使用した。実際の調理書に準じてアスコルビン酸水溶液(Asc,100μg/ml)の全重量に対してこれらの油脂を5, 10%添加し、加熱処理(100℃, 10, 30, 60分間)を行った。加熱処理後の混合物から水溶性、脂溶性成分を採取し実験試料とした。VCとVEの安定性は、各々HPLCにより測定したAscとトコフェロールの残存率により検討した。 [結果] 加熱ならびに水溶性成分の添加は、いずれの油脂の脂肪酸組成にも影響を及ぼさなかった。大豆油を添加し、Asc水溶液を10分、30分間加熱すると、無添加よりもAscの残存率は有意に低下した。しかし60分間の加熱後は無添加よりも若干その残存率が高くなった。従って、大豆油は長時間加熱によりAscを安定な状態に保持する可能性があると考えられた。一方、菜種油の添加は加熱時間にかかわらずAscの残存率を低下させたが、試料間に有意差は認められなかった。従って、加熱中のAscの安定性は、大豆油より菜種油中で高いと考えられた。またVEの安定性については、油脂中に水溶性成分が存在すると加熱中のトコフェロールの分解は抑制された。特に水添加よりもAsc水溶液の添加によりトコフェロールの残存率が高くなる傾向がみられた。
  • 戸田 美穂, 佐川 瞳, 富樫 詠美子, 本間 健
    セッションID: 3-1-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    【目的】生活習慣病の予防には栄養・食生活の改善が大きく作用すると言われている。国民栄養調査結果では近年の脂質摂取量の増加が顕著にみられ、適正な使用量とされる脂質エネルギー比25%を超している。アメリカ糖尿病協会ではFat Free Cookingとしてスプレー式食用オイルを糖尿病の患者に対して推奨している。そこで、本研究では、日本での普及があまり見受けられないスプレー式食用オイルを用い、その調理方法の検討、試料の官能検査を行い、スプレー式食用オイルの使用が健康的な調理方法、かつおいしさという側面からも評価される調理方法であることを検討することを目的とした。【方法】油(日清キャノーラ油)で揚げたポテトチップスと、スプレー式食用オイル(ユーエスシー社PAM)を用い電子レンジで作ったポテトチップスについての官能検査を行った。見た目、歯ざわり、油の感じ方、総合的なおいしさについて2点嗜好試験法を採用し有意差検定を行った。パネルは官能検査に関する実習を終えた日本女子大学食物学科の学生(20_から_21才)52名とした。【結果】歯ざわり、油の加減、総合的なおいしさについてはスプレー式食用オイルを用いたポテトチップスのほうが、油で揚げたポテトチップスより好まれた。色については、油で揚げたポテトチップスのほうが好まれた。スプレー式食用オイルが脂質摂取量を削減する一つの手段として、かつおいしさという側面からも評価される調理方法であることが分かった。しかし、今後スプレー式食用オイルを用いた調理方法では、温度管理や調理器具の検討が必要であることが示唆された。
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    セッションID: 3-1-16
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    目的 一般に廃鶏の肉はブロイラーの肉よりも硬いといわれている。硬い肉を軟化させる調理法を探るために、この硬さの違いを食品組織化学的に調べた。方法 材料は廃鶏とブロイラーのムネ肉およびモモ肉を用いた。材料は5mmの厚さに切り10%ホルマリン液で固定後パラフィンに包埋して3μmに薄切した。切片は筋線維と膠原線維を染め分けるピクリン酸およびシリウスレッド混合液で染色した。筋線維は一標本につき50本の径を測定した。結果 筋線維はピクリン酸に染まり、筋線維を束ねる結合組織の膜の膠原線維はシリウスレッドに強染した。筋線維間の筋内膜はムネ肉およびモモ肉とも廃鶏のほうが厚かった。大小の筋束(筋線維の束)を取り巻く筋周膜は、モモ肉では廃鶏の方がブロイラーよりも厚い傾向にあった。ムネ肉では筋周膜の厚さにはブロイラーと廃鶏の差はみられなかった。筋肉表面の筋上膜は廃鶏の方がムネ肉、モモ肉ともに厚かった。ムネ肉の筋線維の径はブロイラーと廃鶏では有意差はなかったが、モモ肉では廃鶏の筋線維がブロイラーの筋線維よりも太かった(p<0.01)。廃鶏の肉の硬さは、主に筋内膜、筋周膜および筋上膜の膠原線維の量の増加によるものと考える。筋内膜と筋周膜および筋上膜を構成する膠原線維を軟化させることによりコラーゲンが豊富でおいしい食材となり得ると考えた。
  • 長野 隆男
    セッションID: 3-1-17
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    目的)卵黄が加熱により凝固する現象は,調理の上で興味深い現象の一つである。卵黄の凝固は,そのタンパク質成分の構造変化と,それに伴うタンパク質の凝集によるものと言われているが,卵黄は複数のタンパク質と脂質を含む複雑な系のためその詳細は不明な点が多い。そこで,加熱による卵黄タンパク質の構造変化をフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)により調べた。さらに, FTIRの測定結果と卵黄加熱ゲルの力学物性値の関係について考察した。方法)新鮮卵からの卵黄を試料とした。FTIRの測定はATR(全反射吸収測定)法により,高温槽で88℃まで温度調節して,各温度における赤外の吸収変化を測定した。卵黄ゲルの力学物性測定は,応力緩和測定をおこなった。加熱温度と時間が異なる卵黄の加熱ゲルを作製し,緩和弾性率を求め,マックスウエル模型を2個並列に結合した4要素模型により解析をおこない,弾性率E1とE2,緩和時間τ1とτ2を求めた(τ1>τ2)。結果)FTIRの測定結果から卵黄の加熱温度を上げていくと,68℃以上の加熱で,β構造に帰属される1628cm-1の吸収の減少と分子間の凝集に帰属される1620cm-1の吸収の増加が観察されるようになることがわかった。すなわち,68℃以上の加熱で卵黄タンパク質の変性とそれにともなう分子間の凝集がおこることがFTIR測定により観察された。次に, FTIRの測定結果と卵黄ゲルの応力緩和測定結果との対応を調べた。その結果,FTIR測定で得られた分子間の凝集を示すバンドの変化と応力緩和測定から得られた弾性率E1の間に非常に良い相関がみられた(相関係数r=0.93,有意水準p<0.0001)。
  • 寺本 あい, 佐々木 敦子, 渕上 倫子
    セッションID: 3-1-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
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    目的 金糸瓜(ソウメンカボチャ)の果肉は茹でるとそうめん状に剥離する。そうめん状の果肉を接着しているペクチン質の性質を調べる目的で、金糸瓜の柔組織を各種キレート剤に浸漬し、ペクチン、Ca、Mgの溶出と剥離しやすさとの関係について検討した。
    方法 金糸瓜を2cm厚さの輪切りとし、皮部と内瓢を除いた果肉の部分を試料とした。果肉100g を1Lの35℃の0.01N塩酸溶液(pH2.0)、0.035Mシュウ酸・シュウ酸アンモニウム溶液(pH4.0)、2%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液(pH4.0)に24時間浸漬、または沸騰水中で15、30分煮熟したときの剥離の程度を観察し、クライオ-走査電子顕微鏡(日立S-4500)で組織構造の観察を行った。レオメーター(不動工業)で破断強度の測定を行った。また、浸漬・煮熟後の各組織からアルコール不溶物(AIS)を作製し、ペクチン質をエステル化度の違いにより分別抽出し、定量した。
    結果 金糸瓜をpH2.0の希塩酸溶液に浸しただけで果肉が剥離した。シュウ酸アンモニウム溶液に浸したものはわずかに剥離し、ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液に浸すと試料周辺のみが軟化し、剥離は起きなかった。希塩酸溶液に浸したときのCaの溶出量が最も多く、そのため剥離が起こったものと思われる。すなわち、Caによって不溶性になっている高メトキシルペクチンが、希塩酸溶液に浸したとき溶出し、接着力を失ってそうめん状に剥離したものと思われる。煮熟により剥離するのは、高エステル価度のペクチンがβ脱離により分解して煮汁中に溶出するためと思われる。
  • 永塚 規衣, 秋山 庸子, 江間 喜美子, 武田 真一, 西嶋 茂宏, 長尾 慶子
    セッションID: 3-1-19
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/04/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、活性酸素による生体への障害作用が明らかとなり、健康志向から活性酸素消去物質の検索に関心が持たれている。煮こごりは魚肉を長時間加熱し、旨味成分やコラーゲンを溶出することに特徴がある調理であるが、本研究ではその際の加熱時間、添加調味料、香味野菜等の調製条件が活性酸素量の発生に影響を及ぼすと推察されたので、以下のような条件で活性酸素量の動向を追跡することにした。
    【方法】材料は魚のかれい、牛すね肉、豚すね肉、鶏手羽先を用いた。それぞれ、約1cm角切り50gに6割の水(30ml)を加えて600Wの電熱器で加熱、沸騰後火力を300Wに調節して、10分から120分の定時間加熱を行った。加熱終了後、各試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した。その後10倍及び100倍に希釈した各試料200μlに1%過酸化水素溶液100μlと300μMルミノール溶液200μlを添加したのち、SIRIUSシングルチューブルミノメーターにより活性酸素量を測定した。さらに鶏肉を試料として取り上げ、調味料(酢、塩、ワイン等)及び香味野菜(セロリ、パセリ、生姜、にんにく等)を煮汁の10%添加して調製し、上記と同様に測定した。
    【結果】煮こごり材料の中で活性酸素量が最も著しかった食材は牛すね肉であった。また、活性酸素量は加熱時間の経過と共に減少し、加熱処理による影響が見られた。活性酸素消去能を有すると考えられる香味野菜や添加調味料については特にセロリ、パセリや酢、醤油などの添加によって活性酸素量の減少がみられたため、これらには抗酸化能があると考えられた。従って、煮こごり調理におけるそれらの添加効果が期待される。
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